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指風鈴連続殺人事件 ~恋するカナリアと血獄の日記帳~  作者: 須崎正太郎
袴田みなも《はかまだみなも》の日記
75/131

2001年7月17日(火) 前半

 昼休み。

 安愚楽くんが、地下への穴を見つけたというので、みんなで行ってみた。

 それは学校の東側。雑木林の中にあった、工事現場みたいな穴。


 この穴の奥に、もしかして地下の病院跡地が!?

 私の胸は高鳴った。行ってみたいわ。興味しんしん。


「どうだい、みんな。この穴の奥を、ちょっと冒険してみないかい?」


 安愚楽くんが、そう言った。

 若菜、キキラ、それに長谷川くんは嫌そうだったけど、私と天ヶ瀬くんは賛同した。


「楽しそう。私、こういうのやってみたかったの!」


「だよね。俺も冒険って嫌いじゃねえし。行ってみようぜ!」


 天ヶ瀬くんと意見が一致した。嬉しい。

 このとき、私は顔が赤くなっていたかもしれない。……はしたないことね、もう。




 その後、昼休みいっぱいを使って、みんなでビーチバレーをした。

 3対3でチーム分け。最初は、私と天ヶ瀬くんとキキラ対若菜と長谷川くんと安愚楽くんで分かれた。


「天ヶ瀬、おめえ、ハーレムじゃんかよ!」


「はっはっはー、悪ぃな、長谷川!」


「ほんと、両手に花ね、天ヶ瀬くん」


「キレイどころふたりで、嬉しかろ? 天ヶ瀬っ!」


「佑ちゃん、よかったねえ」


「ははは。……さあ御堂さん、長谷川くん。僕らも負けないようにいこう!」


 私を含むみんなのセリフを、ひとつひとつ、はっきりと覚えている。

 それからチーム編成を何度も変えて、休み時間が終わるまでバレーをして、最後はバレー部顧問の松下先生に「勝手にボールを使っているのは誰だぁ」って叱られて。……でも私はとても楽しかったわ。きっとみんなも楽しかったと思う。


 改めて、考えるのだけど――

 こんなに素晴らしい友達を持てたことを、私は誇りにしている。


 私は、中学のころまで、あまり友達がいなかった。

 別にいじめられていたとか、そういうわけじゃない。それなりに話す子もいた。

 だけど心を許し合える本当の仲間は、いなかった。理由は――私自身の性格もあるかもしれないけれど、ひとつは父親のこと。


 地元でも有力な企業、袴田工務店の経営者で、県会議員まで務めている父、袴田幸助はかまだこうすけ

 父が有名で、選挙のたびに顔まで出るから、それが昔のクラスメイトからすると『袴田みなもは違う世界の人間』と映ったらしい。


 それが悲しかった。

 父がどうであれ私は私。

 普通に付き合ってくれたら、それでいいのに。そう思っていた。


 その普通の付き合いをしてくれているのが、いまの仲間たちだ。

 天ヶ瀬くん、若菜、キキラ、長谷川くん。みんな素敵な友達。……安愚楽くんも、これまでは私たちのグループじゃなかったけれど、今日、いっしょにバレーをしたことで、友達になれたと思う。


 ……バレーからの帰り道。

 天ヶ瀬くんは言った。


「そういえば明日の冒険さ、あの穴の中がどうなってるか分からねえじゃん。だからさ、集合場所を決めとこうぜ。もし穴の中で、俺たち仲間同士が離れ離れになっちまったら、あの砂浜にまた集合しよう」


 その言葉に、みんながうなずいた。

 一致団結、という気がして、嬉しかった。




 私は天ヶ瀬くんが好き。

 だけど、若菜のことも、みんなのことも大好き。

 10年経っても、20年経っても、おばあちゃんになっても、みんなで集まって、笑い合える仲間でいたいな。


 きっと私たちなら、この6人なら、それができると思う。

 例えこの先、どんな未来が待ち受けていたとしても……。




 さて。

 楽しい話はここまで。

 ここからは少し怖い出来事。


 放課後。

 私は若菜とふたりで、予定通り、図書館に向かったのだけど――

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