2001年7月13日(金)
今日は天ヶ瀬くんたちが私の家に来た。
彼が何気なく、私のベッドの上に腰かけるだけで、心臓がバクバク高鳴った。
若菜たちがいてくれてよかった。……もしもふたりきりだったら、私は緊張のあまり卒倒していたかもしれない。
そもそも男子を部屋に入れるなんて、初めてのことだもの。それだけでも冷や汗ダラダラよ。……ああ、長谷川くんもいるんだけど……彼については、申し訳ないけど眼中になかった。私は天ヶ瀬くんのことだけで頭がいっぱい。情けないくらい、私、女の子してたわね。
ところで、次の日曜日、みんなで海に行くことが決まった。
海水浴、ということは当然、水着になるのよね……。
天ヶ瀬くんに私の水着姿、見られるのかしら……。
そう思うと、また頭がポンヤリしてきた。
だめね。北条凛さんのこと、笑えない。
そう、卒業文集の北条凛さん。
彼女の作文、今日の夕方、みんなが家から帰ったあとに、近所のコンビニでコピーしておいたの。すごいインパクトだったからね。……このひと、その後どういう人生を歩んだのかしら?
まともじゃないでしょう、これ。
(筆者注・以下、北条凛の作文のコピーが日記に貼りつけられている)
『将来の夢』 北条凛
私の夢はただひとつ。
あいつを今後も苦しめていくこと。
ああ思えば世界のどこより純粋で、宇宙のだれよりも綺麗な私。
そんな私が誰よりも愛したあのひと。好きで好きでたまらない。
あのひとと愛を語り合うことができたのなら、もうそれだけで死んでもいい。
ああ、だけど、あのひとはもう私の前にはいないの。
あいつが消してしまったんだもの。愚かなひと。私の大事なひとを消してしまったあいつ。
悲しくて悲しくて、あああああ!
いまでもこの胸が張り裂けそうなほど!
私は知っている。あいつが消した愛するあのひと。
誰も知らなくても私は知っている。顔は見えども知っている。絶対に許さない。闇の底で蠢いていた血獄の証。あいつのために、天空へといざなってあげた。あいつはそれを知ったとき、きっと悶え苦しむことだろう。誰かが見ている、必ず見ている、そう思いこみ未来永劫苦しむがいい!
ふるえるがいい。
おののくがいい。
あいつの心はきっと消えていく。
それを考えるのがとても楽しい。
あいつは一生そうして生きるべき。私の愛を壊したのだから。
私の夢は、私の夢は、ずっとずっとこの場所にいて、あいつを壊して生き続けること。
それが私の純愛を奪った報いだと知れ。あいつは一生許さない。来世になっても生まれ変わっても許さない。世間が許しても私が許さぬ、永遠に私は許さない。
指だけが、貴様の罪を知っている。




