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指風鈴連続殺人事件 ~恋するカナリアと血獄の日記帳~  作者: 須崎正太郎
袴田みなも《はかまだみなも》の日記
71/131

2001年7月13日(金)

 今日は天ヶ瀬くんたちが私の家に来た。

 彼が何気なく、私のベッドの上に腰かけるだけで、心臓がバクバク高鳴った。

 若菜たちがいてくれてよかった。……もしもふたりきりだったら、私は緊張のあまり卒倒していたかもしれない。

 そもそも男子を部屋に入れるなんて、初めてのことだもの。それだけでも冷や汗ダラダラよ。……ああ、長谷川くんもいるんだけど……彼については、申し訳ないけど眼中になかった。私は天ヶ瀬くんのことだけで頭がいっぱい。情けないくらい、私、女の子してたわね。


 ところで、次の日曜日、みんなで海に行くことが決まった。

 海水浴、ということは当然、水着になるのよね……。

 天ヶ瀬くんに私の水着姿、見られるのかしら……。


 そう思うと、また頭がポンヤリしてきた。

 だめね。北条凛さんのこと、笑えない。


 そう、卒業文集の北条凛さん。

 彼女の作文、今日の夕方、みんなが家から帰ったあとに、近所のコンビニでコピーしておいたの。すごいインパクトだったからね。……このひと、その後どういう人生を歩んだのかしら?


 まともじゃないでしょう、これ。




(筆者注・以下、北条凛の作文のコピーが日記に貼りつけられている)




『将来の夢』  北条凛




 私の夢はただひとつ。

 あいつを今後も苦しめていくこと。


 ああ思えば世界のどこより純粋で、宇宙のだれよりも綺麗な私。

 そんな私が誰よりも愛したあのひと。好きで好きでたまらない。

 あのひとと愛を語り合うことができたのなら、もうそれだけで死んでもいい。


 ああ、だけど、あのひとはもう私の前にはいないの。

 あいつが消してしまったんだもの。愚かなひと。私の大事なひとを消してしまったあいつ。


 悲しくて悲しくて、あああああ!

 いまでもこの胸が張り裂けそうなほど!

 私は知っている。あいつが消した愛するあのひと。


 誰も知らなくても私は知っている。顔は見えども知っている。絶対に許さない。闇の底で蠢いていた血獄の証。あいつのために、天空へといざなってあげた。あいつはそれを知ったとき、きっと悶え苦しむことだろう。誰かが見ている、必ず見ている、そう思いこみ未来永劫苦しむがいい!


 ふるえるがいい。

 おののくがいい。

 あいつの心はきっと消えていく。

 それを考えるのがとても楽しい。


 あいつは一生そうして生きるべき。私の愛を壊したのだから。

 私の夢は、私の夢は、ずっとずっとこの場所にいて、あいつを壊して生き続けること。

 それが私の純愛を奪った報いだと知れ。あいつは一生許さない。来世になっても生まれ変わっても許さない。世間が許しても私が許さぬ、永遠に私は許さない。




 指だけが、貴様の罪を知っている。

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