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指風鈴連続殺人事件 ~恋するカナリアと血獄の日記帳~  作者: 須崎正太郎
天ヶ瀬佑樹《あまがせゆうき》の日記
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2001年7月13日(金)

「夏ですな~」


 学校に行く途中、若菜は突如そんなことを言った。


「どうした、そんなことを急に」


「んー、なんかいろいろあるなあって」


「いろいろ? なんだよ、いろいろって」


「実はね、佑ちゃん。昨日わたし、男の人に声かけられたんだあ」


 は? 男!? どういうことだ。

 聞き捨てならない言葉だぞ、それ。


「な、なんて!?」


「いや……なんか急に、こんにちはーって……」


「ど、どういうこったよ。詳しく聞かせろ。変な男じゃないだろうな。チャラいやつだったら、ただじゃおかねえぞ」


「い、いや。そんなにすごい話じゃないんだけど……。ただ道を歩いていたら声をかけられて~。わたし、怖かったからすぐに逃げたけど。……だから夏だなって言ったの。わたしに声をかけるなんてもの好きだよね~」


 若菜はアハハって笑ったけど、あまり笑いごとじゃない。

 昨日長谷川と話したけど、若菜はけっこう可愛い。男から声をかけられることも、そりゃあるだろうけど……。

 だけど、まさかナンパされるなんて思わなかった。ライバルは同じ学校の男だって思ってた。それがまあ……。


 いよいよノンビリしていられない。

 さっさと決着をつけないと。

 幸い、俺たちは同じグループで、いっしょにいることが多い。

 若菜とふたりきりになるのも難しくないんだから、頑張らないといけないな。




 ……っと。

 そういえば、俺らはどうして同じグループになったのか。


 まず若菜とキキラとみなも。女子3人が同じグループになったんだ。

 4月に、体育の授業で、若菜が軽い貧血起こしたとき、近くにいたキキラとみなもが二人で、若菜を保健室に連れていってやったんだ。男子と女子は違う授業をしていたから、俺はその話をあとで聞いたんだけど。


 で、そこで女子3人がつるむようになった。

 俺と若菜はもともと幼なじみで、仲が良かったから、その女子グループに俺が入るようになった。

 その直後、やっぱり体育の授業のときにたまたま、長谷川が俺のキャッチボールの相手になった。そこから俺と長谷川は話すようになったんだ。

 やつはエロい。兄貴のお下がりだというエロ漫画をたくさん持っている、と豪語した。そこで俺は長谷川を心友認定したね。親友じゃなくて心の友ね。これ大事よ? まあこいつはバカだけど。





 そんなつながりで俺らはグループになった。

 今日も、放課後、みなもの家までみんなで遊びにいったのだ。

 といっても、みなもの家に行くのは初めてだったんだけど……。


 広い庭に、正門のほかに勝手口まである一戸建て。

 赤レンガで築かれた家屋はいかにも金持ちって感じの家だった。

 みなもの親父さんは議員だけど会社の社長とかもやっているらしい。すごい家だな。


 みなもの部屋に集まっていると、お母さんが紅茶とお菓子を持ってきてくれた。名前は忘れたけど外国のクッキーだった。すげえ。てかこの家、全部がなんか映画みたいだ。シャンデリアとかあるし。とてもポテチを食いながらマリカーとかしそうにない家だ。


 みなもの部屋からは海が見えた。

 砂浜にはサーファーとか海水浴客っぽい連中がいる。その景色を見て、キキラが言った。


「いいなー、めっちゃ楽しそう。ねえ、ウチらも海に行かん?」


 その提案に、俺らはのった。断る理由はない。


「いいねえ。俺はいいぜ。で、いつ行くよ?」


「夏休みにする~~?」


「ちょっと遠くね? 夏休みなったらクラゲも出るぜ?」


「今度の日曜日、でいいんじゃないかしら? 天気予報だと晴れのようだし」


 みなもが携帯電話で、天気予報を確認しながら言った。

 俺らの仲間内で携帯を持っているのはみなもだけだ。いかにも持ってそうなキキラも、まだ家電いえでんで、しかもおばあちゃんの世代から使っている黒電話だって嘆いていた。うちはコードレスだ。勝った。嘘。こんなんで勝ちたくない。携帯が俺も欲しい。メールとかやってみてえ。


 それはともかく、今度の日曜日、つまり明後日。

 みんなで海に行くことが決まった。やったぜ。

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