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指風鈴連続殺人事件 ~恋するカナリアと血獄の日記帳~  作者: 須崎正太郎
天ヶ瀬佑樹《あまがせゆうき》の日記
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2001年7月11日(水)

 3時間目、国語の授業中、メモ用紙が回ってきた。手紙だ。

 国語の工藤ちゃんは可愛いけどノンビリした女の先生だから、みんなけっこう私語とか手紙回しとかしたりするのだ。

 で、なんの手紙だと思って開けてみたら長谷川のバカからだった。用件はというと、


『女子更衣室がのぞけるところがあるらしい。昼休み行ってみようぜ(御堂たちにはむろんナイショで!)』


 やっぱりこいつはバカだと思った。

 こんな手紙、もし回している途中で女子とか先生に見つかったらどうするんだよ。

 工藤ちゃんがいくら優しくてもこれが見つかったら叱られること間違いなしだぞ。


 でも手紙は見つからずに済んだ。

 で、俺は……昼休み。いっしょにお弁当を食べようと誘ってきた若菜たちに「今日は学食」と断って、長谷川といっしょにそのポイントへ出向いたわけだ。


 仕方ないやん。

 女子更衣室やぞ。

 仕方ないやんけ!!


 で、そのポイントに行ってみた。

 学校の南西部にある、プレハブ倉庫の屋根に登れば、校舎の1階がのぞけるって話らしい。


 プレハブはいま、女子バスケ部と女子バレー部が共用で部室として使っている建物なんだが、さてその屋上に実際に上ってみた。

 なるほど、確かに校舎の1階がのぞける。女子更衣室の中が、わずかに見える。


「だけどよ、これ、逆に向こうからも見えねえか?」


「……だな」


 倉庫の上に登っているんだから、当然だ。

 女子更衣室側からはもちろん、そもそも近くを歩いている生徒からも姿は丸見えだ。こんなリスクのあるのぞきはごめんだ。実行したら速攻で捕まる。

 俺たちはため息をついて、屋根の上から降りた。


「時間の無駄だったな」


「まだ諦めるのは早いぜ、天ヶ瀬。作戦を考えるんだ」


 セリフだけ見たらカッコいいが、やろうとしていることはただののぞきである。


「身をひそめる方法を見つけようぜ。迷彩服を着てのぞくとか」


「プレハブの上で迷彩服とか、かえって目立つだろ、アホか」


「おっ、なら、ここはどうだ。ほら、このプレハブの横の茂みの中がちょっとへこんでるぞ。ここから死角になるからちょっと見ただけじゃ外からは見つからん」


「猫くらいしか入れないだろ、そんなチャチなへこみ。第一そこに入っても外はのぞけねえよ」


「ダメ出しばかりしてないで、少しはオメーも案を出せよ!」


「なにを出せってんだよ。のぞきのアイデア出しとかむなしすぎるぜ」


 そう言ったときだった。

 倉庫の裏手に、地下に続いていく階段みたいなのが見えた。

 なんだ、これ。近づいて見てみると、やっぱり下に降りる階段だった。まるでRPGのダンジョンの入り口だ。


「長谷川、これ、なんだと思う?」


「知らねえよ。そこも物置じゃねえの?」


 長谷川は興味なさげだった。

 でも俺は気になる。こんな地下室への入り口があるなんて。

 冒険してみねえかって長谷川に言ったけど「ガキかよ」って鼻で笑われただけだった。ノリの悪いやつ。冒険心を忘れちゃいけないぜ、まったく。


 さて若菜に「俺らは学食」って言った手前、しばらく教室に戻ることもできず。戻ったところで弁当を取り出すわけにもいかない。

 かといって金も持っていなかったため、俺と長谷川はウォータークーラーで水だけ飲んで空腹をごまかした。

 あとになって思えば、弁当を食ってからのぞきに行けばよかった。なんであんなに急いでいたんだろう。昼休みだから、のぞけたところで女子は更衣室の中にいないのに……。


 性欲に支配されていた。

 俺らってほんとバカ。アホ。スケベ。エロ大魔王。

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