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指風鈴連続殺人事件 ~恋するカナリアと血獄の日記帳~  作者: 須崎正太郎
天ヶ瀬佑樹《あまがせゆうき》の日記
14/131

2001年7月26日(木) 前半

 クーラーをガンガンに効かせながら、日記を書こう。

 外の太陽の日差しが見ていられない。明るいところに出たくない、いまはただ家の中で若菜のことを考えたい。




 当日、つまり7月18日のことを整理する。




 放課後、午後4時半くらいに、俺たち6人は穴の前に集合した。

 メンバーは言うまでもなく、俺(天ヶ瀬)、若菜、みなも、キキラ、長谷川、安愚楽の6人だ。

 俺たちはテンション高めで穴の中に入っていった。いや、キキラはやっぱりなんとなく、つまらなそうというか怖そうにしていたけれど……。でも、キキラと同様に穴に入るのを嫌がっていた長谷川は、なぜだかその日は妙にハイになっていて、やる気まんまんで冒険をしようと言っていた。


 そして俺が先頭に立ち、懐中電灯を持って、穴の中に入っていく。

 穴の中は、ひんやりとしていて、たぶん人間が掘ったものなんだろう。地面とか壁は固まっていて、歩きやすかった。


 だがここでの冒険はアッサリと終わった。

 5メートルか10メートルか、はっきりとは覚えていないが、少しだけ進むと、もう目の前には壁があった。

 つまり行き止まりになったのだ。しかしその壁は、コンクリートかなにかで作られた、人工的なものだった。やはりこの穴は人の手が加えられたものだった、と俺は思った。


「この奥には、やはり病院の地下室があるのかな。それが埋め立てられてこうなった……」


 安愚楽がそう言いながら、コンクリートをコンコンと叩いた。

 コンクリートは思ったよりも新しかった。地下ってこともあるのかもしれないが、何十年も経っているような印象はなかった。


「この奥に行きたいな。思い切り叩いたら、壊れないかな?」


 安愚楽はそんな無茶を言ったが、この壁を人力で破壊するのはちょっと無茶だろう。

 コンクリートや、この先は気になるけれど、ここから前には進めそうにない。

 残念だけど俺たちの冒険はここで終わりだ。そう思って振り返ると、


「……あれ?」


 そこには、若菜がいなかった。

 6人の中で一番後ろにいた若菜が、気が付いたら行方不明になっている。

 いつ若菜が離脱したのか、誰も知らないし気が付いていなかった。……穴の中は一本道で、それもさほど深くない。もちろん抜け道なんかもなさそうだった。ここで消えてしまうことは考えられない。


「もう外に出たんじゃね?」


「私たちに、なにも言わずに?」


「気分が悪くなったとか、かな?」


「外に出たら、そのへんにいるだろ。……オレらも戻ろうぜ。」


 キキラ、みなも、安愚楽、長谷川がそれぞれが言った。

 もう穴の中の冒険もできそうにないし、若菜を探そう。

 そう思って俺たちは穴の外に出たが、そこに若菜はいなかった。


 おかしい。

 みんなが少し、困惑の顔色を見せ始めた。

 みなもの言う通り、俺たちになにも言わずに離脱するなんて。若菜はそういうことをする子じゃないのに。


 砂浜のほうまで行ってみたが、やはりそこにも若菜はいない。どういうことだ? なにか嫌な予感がした俺たちは、それから学校の周辺はもちろん、校舎の中まで捜索を開始した。こういうとき、携帯電話を持っていたら便利なのに。だけど若菜は持っていなかったんだ。そしてどこを探しても、若菜はいなかった。


 やがて、


「みんなーっ!」


 と、キキラの声が響いた。

 その声音がしたほうへ、俺たち5人は結集する。


「み、見て。ここ、開いてる」


 そう、学校西側にある、もうひとつの地下への入り口……。

 あの階段の下にある分厚いドアが、なぜかその日に限って、開いていたのだ。

 俺たちはお互いに顔を見合わせた。――どうする? 行く? 先生を呼んだほうが……。いや、でも……。

 5人全員が冷や汗をかきながら、たぶんなんとなく予感していた。この先にはきっと、ろくでもないことが待ち受けている。


 それでも、俺たちは――こうしてあとになって考えたら、先生に相談でもするべきだったんだろうけど、とにかくそのときは頭が回らなかった。俺たち5人は揃って地下へと入っていった。

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