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指風鈴連続殺人事件 ~恋するカナリアと血獄の日記帳~  作者: 須崎正太郎
袴田みなも《はかまだみなも》の日記
109/131

2001年8月25日(土)

 夜、安愚楽くんから電話。

 天ヶ瀬くんと電話をして、明日の午後1時にコンビニで集まることが決定したらしい。


「天ヶ瀬くん、面白いことを言っていたよ。袴田さんが、自分のことを避けてるみたいだって言ってた」


「え? 私が天ヶ瀬くんを避けてる? どうして?」


「夏休みの間、君の携帯電話に、何度か電話をかけたらしいよ。だけど電話に出なくて、折り返しも来ない、家に出向いても誰もいないし、って愚痴ってた」


「そ、そんなの! だって私、雨で携帯電話、壊れていたんだもの! 誰が彼を避けるのよ、そんなわけないでしょ!?」


「そうだよ、その通りだ。だけど……ふふ、すべてはすれ違いだったようだね」


「…………」


 私は呆然とした。

 天ヶ瀬くんを避けるなんて、そんなことするわけないじゃない。

 うまく連絡が取れなかったり、すれ違ったりしただけなのに。


「だから、すべては天ヶ瀬くんの勘違いだって言っておいたよ」


「あ、ありがとう! それは……素晴らしいフォローだわ!」


「…………分かりやすいね、袴田さんは」


「え」


 安愚楽くんの、ちょっと沈んだ声に、私はドキッとした。


「いろいろと、分かりやすいよ。…………いいね……」


「……安愚楽くん?」


 彼がなにか、小声でささやいたのだが、私には聞こえなかった。

 なにかいま言ったの、と言おうとして、しかし安愚楽くんは、


「それじゃ、明日の午後1時に天ヶ瀬くんの家の近くのコンビニで。よろしくね」


 そう言って、電話を切ってしまった。


 …………彼、最後になにを言ったのかしら?


 まあいいわ。




 ……天ヶ瀬くん。

 私があなたを避けるなんて、そんなこと、絶対にしないわよ。

 私、いまでもあなたを……愛しているもの。大好き、だもの……。


 でも。

 そういえば、私、最近、彼のことを考えること、少なくなっていたわ。

 事件のことばっかりで。……高1の夏が、こんな風に過ぎていくなんて思いもしなかった。


 だけど、後悔はしていない。若菜と長谷川くんを殺した犯人をつかまえるためなら、私は全力を尽くす。

 私にとって若菜たちは、大事な仲間だった。その無念を晴らすためならば――恋も青春も、後回しで構わない。




 私は戦うわ。最後まで。

 力を貸して、若菜、長谷川くん。

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