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「宇宙」「タライ」「嫌な世界」

作者: うさぽんた

2xxx年、各国による宇宙進出をかけた開発に次ぐ開発により、人類のおよそ三分の二が空に浮かぶコロニーや人工的に作られた星へと住処を移した。

遠い昔にヒーロー的職業だったらしい、宇宙飛行士が言ったという「地球は青かった。」の言葉。

確かに写真で見たかつての地球は確かに青く、その言葉と共に今の世に伝わっている。

しかし、空に浮かぶ地球へ目を向けると体表に並べていた青は小さく点々と数を減らし続け、彼風に言い換えるなら「地球は乾いた黄土色だ。」といったところだろうか。

宇宙への移住に反対し、今でも地球に住む人々の気持ちはこっちで生まれ育った僕にはわからない。

「おじいちゃんが小さい頃はいろんな漫画やアニメが宇宙を題材にしてて、憧れたもんでなぁ。そんな宇宙に住めて、そして可愛いお前とも出会えた。なんて幸せ者なんだろうなぁわしは...」

たまに会いに行くと赤らんだ頬を緩ませつつそう言う祖父の姿に、尚更彼らの気持ちがわからなくなる。

テレビのニュースでは頻繁に地球に残った人々が迎えに来た船を攻撃している映像が流れ、それに対してスタジオのタレントが苦言を呈し、頭の良さそうな人がなにか難しい言葉を交え、批判的な話をして締めくくる。

世の中では地球に残った人々は悪、といった風潮が蔓延している。

前に地球に残った人々の暮らしぶりを撮ったドキュメンタリー仕立ての映像を、学校で見たことがある。

昼間はとても人が外に出られるような気温ではないから、洞窟のような居住区にじっと籠もる。

日が沈むと昼間の暑さが嘘のように、極寒の地へと姿を変える。

人々は補修して継ぎ接ぎだらけの防寒着に身を包み、各々タライやバケツを持って残った水源を目指して歩く。

食事はわずかに残った植物や過酷な環境に適応した生物等を取り合うように、噂では死んだ人の肉も食べているらしい。

感想文には『何故もう限界に近いような、過酷な環境なのに意地を張って住み続けるのかわからない。』等と正直に書いた。

その日、帰ってきた父に「地球にいる人達がもしこっちに越してきたら、大丈夫なのかな。人を食べるんでしょ?」と聞いたら

「住んでるところが違うだけで、父さんやお前と同じ人間なんだから大丈夫さ。…人を食べるなんて酷い事を言うんじゃない。いいな?」と寂しそうな顔をしながら叱られた。

後で知ったことだが、父の母。つまり僕の父方の祖母は地球に残っているらしく、今では生死も不明らしい。

それを僕に教えてくれた日の夜更け、一人暗いリビングで酒を飲みながら

「母さん… クソッ、嫌な世界だ…」と呟く父の背中を僕は見てしまった。



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