オカルト研究部式錬金術 3
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「錬金術と呼ぶのもおこがましいような出来事だけど、ある一つの事実によって収束するわ。馬鹿馬鹿しいけど、見逃してしまったらまずい要素によって」
「へー? その要素ってのはなんだい? もしかして、俺が天才錬金術師だっていうこととか?」
「妄想も大概にしなさい。金切――……そういえば名前のほうを知らないわ。とにかく、金切なんとかの性別よ。どっち?」
ノウコの問いに、練場は相好を崩した。
「女の子だねぇ。黒髪ショートカットの、なんともかわいらしい女子だったぜ!」
当然の結果を聞いたノウコは鼻で笑う。
話の中に嘘が含まれていないのならば、いの一番に考える可能性なのだから。
「単純な話ね。アイスクリーム屋では女性割引でもやっていた。そうしたら本来は千円オーバーの商品でも、余剰分が生まれる。あとは予算の問題。足りたんでしょ? お前は、金切がいくら支払ったのかは言及していない。つまりそれは、言わないことそのものが錬金術だったということ。もっとも、使い道のない魔術だけど」
練場は自分のコーヒーを一口すすり、満足そうにソーサーに戻す。
「その通り! 金切くん……金切ちゃんな! 帰りに話してたんだよ! 一部分だけ伏せてたら不思議な話になってくるな、って! だからノウコちゃんの暇つぶしに提供してみたんだけど、瞬殺されちまったよ! 参ったね!」
「お前の浅知恵なんてそんなものよ。ない頭を搾って出てきたのがこの程度だというのはがっかりだけど」
「暇つぶしにはなったろ?」
「ならないわ。お茶請けにもならない。なれたとしても精々が燃えるゴミ」
「んじゃあ、ゴミ箱にポイしちまうか!」
「お前が入りなさい。焼却炉に。ゴミを生産するぐらいなら」
きしきしきしきし。
きし、きし。
黒の色素が抜けたノウコは物言わぬ人形へと戻る。
閉じられた両目は、誰かのために祈っているようでもあり、深い思考の海に沈んでいるようでもある。
眺める練場は思い出す。
ノウコを造った二人の天才を。
一人はまだ健在で、いまだに現役を続行している。活躍も耳に入ってくるほどに。
もう一人は、生きているのか死んでいるのかもわからない。
簡単に死ぬとは思えないのだが、何年も情報が出てきていないのだから、徹底的に隠れているか、もしくは隠されているかなのだろう。
二人の製作者は、ノウコをなんのために造ったのかを知らない。
聞く前に、自分は彼女を連れて出奔してしまったのだから。
「……マ、今はそれでいいんじゃね? どうせ見つかったら俺がぶっ飛ばされるだけだし」
自嘲気味の笑みを浮かべながら、練場は片づけに入った。




