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転生番長と、可憐なる姫(おんな)騎士  作者: 庭野 ワニ(23)
異世界到着!この世で最強のチート能力は真心だ!
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スターダスト・セオリー




 ――聖国スウィート・ピィ。


 聖女セイコンがこの国を治める女王にあたる。人を癒す魔法を持つセイコンは、世襲によりこの国を継ぎ、立派な家柄の婿養子を取り、間に三人の子を作った。子はすべて女であった。

 一応、王家は武芸や剣術を学ぶ事にはなっていたので、慣習の為に彼女たちに必修科目の武芸を教える事にはしていた。

 ……が、セイコンや王は、平和な時代がやってきた自国を、争いよりは“文化”によって発展させていこうと考えていた。いわゆる、“クール・スウィート・ピィ”である。


 何であれ、スウィート・ピィは、この頃には温厚で真面目な国民性に恵まれ、自由に歌と踊りのできる平和な国で、文化面では胸を張るべき先進的な国になっていたのだった。

 実際にその頃のこの国がどれくらい平和だったのかというと、王家の三姉妹は、「一応、国を守る者として騎士道も学んでもらうけど、どうせ平和なんだからそんなの自分でゆっくり学べばいいよ」と放任されるほどであった。


 ……結果、王と聖女による超ゆとり教育によって、十七歳の長女アリエス、十四歳の次女セラフ、八歳の三女エリサは誰一人としてまともに戦えないまま、彼女らと非戦闘員の国民を残し、国だけ滅んだ。

 この中では唯一、長女アリエスだけは、一ヶ月に一度か二度程度、思い出したように筋トレや武芸をしていたものの、結局生れ持っての性格ゆえか、あまり続いていない有様だったので、もう滅んだ今となっては後の祭りである。


 国が滅んだ後も、世継ぎの姫であった彼女は、残った民のシンボルとして扱われ、武力の面でも無駄に信頼され、果ては残党を取りまとめるリーダーまでやらされる状態になっていた。

 王は、現役の頃、体面を気にしすぎて、何度か「長女は立派に騎士道を学んですくすく育っています」などと民に言ってしまっていたのである。アリエスもその信頼を裏切れず、ズルズルと言いそびれてきたのだ。

 なんとか、かれこれ一ヶ月は敵に見つからず、戦いもせずに済んでいたが、何しろアリエスはそんな渦中でもどう修行すればいいのか、よくわからないまま「今日は週末でキリが悪いので明日から頑張ろう」と言って、ただ時間ばかり過ぎた。



 ――そして、その結果、ぽんこつの姫騎士が、その手に剣を持って、ここにいた。


「どうしよう……」


 隠れ住んでいた集落がアクィナ軍に見つかり、目の前に詰め寄るように攻めてきた瞬間、アリエスはその短い金髪の頭を抱えたくなっていた。

 生れてこの方、妹とのお遊び以外で戦った事などない。しかも、本気を出したうえで、すべからく負けている。彼女に勝った妹二人もまた、人並より弱かった。自分とどんぐりな妹たちを危険に晒すわけにもいかず、長女としてアリエスは剣を取った。はっきり言って、勝つ要素はどこにもなかった。


「……」


 いま、この集落の軍門の先頭に立つ彼女の背には、戦いを知らない百人の民、それから妹二名がいる。

 目の前には、故国を侵攻したモンスターたちが三十匹に、人型の剣士が十人。頭数では勝っていても、戦士の数では完敗だ。

 たとい、この中の最弱を見つけたとしても、一対一ですら勝てないに違いないが、それでも立ち向かわなければいけない苦境で、彼女はひたすら悩んでいた。


「――姫騎士アリエスよ。いま、“どうしよう”って言ったな……何が“どうしよう”なのだ……」


 ふと、(地球で言うところの)ティラノサウルスが獣人化したような風体の、そこそこに強そうなモンスターがそう云った。

 対するアリエスは、敵に独り言を聞かれ、恥ずかしいながらも隙がないと感じている。何しろ、こちらの一挙一動すべてを観察するだけの余裕が敵にはあるという事だ。小声で言ったつもりの言葉でさえ、きっちり聞かれていた。

 挙句、こいつらはそれを掘り下げようとしてくるのだ。掘り下げられたくない話題に食いついてくる性格らしい。色々な意味で厄介だ。

 アリエスは黙っていたが、ティラノの隣の鎧の騎士が、渋い声で言った。


「……この国の姫騎士アリエスは、武芸の達人だ。その力は、たぐいまれなる才覚と努力によって、めちゃくちゃ強いものと聞いている。彼女がひとたび剣を振るえば、山は割れ、風は途切れ、勘に優れた者はガタガタと震えだし、周囲一帯の動物たちは危機を察して死に物狂いで逃走、場合によってはその時点でショック死し、目の前で相対した(あいて)については、生きて帰れたとしても、それから先の事を決して語らないか、既に廃人になっている。……などと、この娘の父が、散り際に告げていた。そんな彼女が、きっと我々アクィナ軍を潰すとも言いながらな……」


(お父様……最後まで、そんな無意味な大ボラを……)


 今際(いまわ)の際まで調子の良い事を言う父の姿が、アリエスの脳裏にありありと浮かんだが、恨み節を言ったところで彼は氷の中だ。


「……ふむ。つまりどういう事だ?」


「今の情報から推察するに、この姫騎士は己の力が暴走し、誤ってこの集落を破壊してしまったらどうしようと言っているのだろう。ここが彼女らの折角見つけた新しい国だからな。自軍さえ潰しかねない恐ろしいパワーを使うか悩んでいるのだ」


(いいえ、違うわ……まるで勝てそうにないうえに、あのお父様の大ボラが原因で、これから先、私まで民に叩かれそうだからこそ、“どうしよう”なのよ……)


「な、なんて恐ろしい娘だ……そんなパワーを秘めているなんて。正直、話を聞くだけでも恐怖のあまり両膝が震えて歯がガタガタ言っている……!! この俺の唯一の弱点の前歯すらも、震えを止める気配がまるでない……野生の勘がこいつはやべえと告げているんだ……!!」


(露骨に弱点を言われても、私は絶対勝てないわ……そして、あなたの野生の勘は、ぽんこつよ……ちゃんと言ってあげた方が良いかしら……)


 一応言っておくが、このアリエスも根っこにおいては、父とは正反対に、気立ての良く優しい正直な子だ。

 今この瞬間、敵が誤解している内容を訂正してあげた方がいいだろうかと思っているほどである。あまり嘘をつくのは好ましい事ではないと思っていたし、もし敵が今の言葉を信頼して恐怖し、精神的負担を覚えているのなら、少々可哀想だと思ったのだ。

 しかし、アリエスは、こういう事を思っていても、同時に絶対に正直に言わない性格でもある。あくまで、「言おうかな」と思うだけなのである。嘘を嘘で塗り固める癖は父親似ながら、嘘をつく罪悪感だけは確かに背負って生きると言う、なんとも当人にとって生きづらい性格なのだった。

 ――ちなみに、敵は精神的負担を覚えているというアリエスの目算と違って、眼前の敵は血気盛んだった。


「……しかし、ならばこそ、俺たちにとっては、挑み甲斐があるというものよ!」


「応ッ!!」


 地球でいうところの恐竜や爬虫類のような生物が獣人化したような連中は、恐怖と歓喜に同時に打ち震えている。今の獣人も、歯ぎしりをしながら邪悪な笑みを作っていた。

 剣士たちも、示し合わせたかのように、一斉に己の胸をトントン叩いた。彼らは儀礼的なポーズで意気込んだのだ。


「構えッ!」


 そして、次の瞬間には、誰しも彼しもが、一斉に構えた。


(ああ、もう駄目よ……! このままじゃあ、死ぬか、お父様お母様に言えない展開になるわ……! 私がこれまで何か悪い事をしていたら謝るので、今すぐにでも誰か助けてください……!!)


 彼女はそう願った。祈るしかできなかった。


 ――その時、偶然か、空に一筋の流星が光った。戦いが始まる直前ではあったが、人々はそれを見ていた。

 まだ、昼の空に、一筋流れたそれを見た者たちは、ふと、一斉に――そして反射的に、心の中に自軍の勝利を願っただろう。この世界の文化でも、敵味方問わず、流れ星に何かお願い事をするのである。


 はてさて、ここで問題である。

 仮に流れ星に願いを込めて願いが本当に叶うと仮定とした場合、スウィート・ピィの民とアクィナ軍全員が同時に勝利を願ったなら、星はどちらの願いを聞き入れるか。

 戦力としては、百の有象無象と、四十の兵士で後者が有利。

 しかし、願いの数は圧倒的に六十上回る前者が有利だ。仮に流れ星が民主主義を採用していて、投票制で軍配を上げるのだとすれば、戦力差を問わず、スウィート・ピィが勝つ事になる。


「――――ああん?」


 ――星が流れ終えた時、見れば、アリエスはひどく目つきの悪い様子で、モンスターや剣士を睨んでいた。なにやら様子がおかしいぞ、と気づく者は少々いたが、これから戦闘が始まるぞという瞬間だったので、言い出しづらい空気があった。

 彼女の前に出ようという戦士は、いま、いなかった。

 アリエスは、金髪のショートヘアをかき上げる。“彼”は、生前、オールバックの髪形をしていたので、髪が顔にかかるのを嫌ったのだろう。


「……ああ。なるほど、ここが、“スウィート・ピィ”って国か」


 アリエスは、まるで今ここに来たように周囲を見回すのだった。

 彼女が振り返ると、その背後には、非力ながらも斧やら、トンカチやら、冷凍肉やら、砂を詰めた靴下やらを持って、戦いに出ようという普通の民がいた。彼らも、様子の変わったアリエスに当惑している。

 アリエスは、空気で察する。どちらかというと、獣の顔をしている方が敵なのだと。少なくとも、強いのはそちらだろうと。


「貴様……姫騎士アリエス、だよな?」


「ああ……。俺は、千葉県立御弥(おや)高校二年B組……二年ながらに番を張っている伊神(いがみ)敏也(としや)。又の名を――姫騎士アリエス!! ちなみに中学は、西中(にしちゅう)だ」


 アリエスは、毅然と言った。

 そう、今のアリエスは、スウィート・ピィの民ではない。そう――千葉県で死んだ番長の魂が、いま、アリエスの身体を借りて転生しているのである。

 いま、アクィナ軍に追われたこのタイミングで、彼がアリエスの身体に乗り移ったのだ。


(チバケン……? 私は、一体何を言っているの……?)


 勝手に体を借りられたアリエスは、意識の中でそう言う。

 すると、敏也が同じ意識の中で答えた。


(初めましてだな、姫君アリエスさん……俺は今名乗った通り、伊神敏也と言う男だ。千葉県という国で、番長……すなわち、我が国の三権分立の一つ“漢気(おとこぎ)”において、リーダーにあたる役職を務めさせて頂いている)


 敏也は、空気を読んで、彼女にもわかりやすい説明をした。


(漢気……)


(突然の事ですまねえが、ややあって千葉県某所で死んだ俺は、あんたの身体を借り、しばらく暴れる事になった。信じてほしいが、性根の曲がった奴以外には、手荒な真似はしねえ。ただ、たまにこうして主導権を使わせてもらうだけだ)


(はぁ)


 なんだか、アリエスは自分が信じられないといった心境だった。

 当たり前である。自分が自分の別人格と話しているような状態なのだから。自分の中にこんな異常心理が眠っていたなどと思わなかっただろう。

 そんな最中、リーダー的存在の真っ赤な鎧の騎士が、興味深そうに前に出た。若い男の声をしていた。


「ほう……どうやら戦闘時だけ、性格が変わったように気迫が湧いたようだな。これが、姫君が本気モードか……!」


「……べらべらと喋っているてめえ。一応、てめえに訊いておこう。てめえは、誰だ? そして、どこ中だ?」


 言って、アリエスは手をパキポキと鳴らしていた。

 彼の住む千葉県民周辺の不良文化において、出身中学校の名を訊く事は、もはや染みついた癖のようなものである。この辺りについては、民俗学者兼漫画家・西森博之氏による実録漫画『今日から俺は!』などが詳しいだろう。かの国では、いまだ不良、番長、暴走族が古き良き無形文化遺産のまま保全されているのも勿論の事、出身中学をアイデンティティの一つとしている独自の習性も存在する。これは事実である。

 しかし、残念ながら、この異世界の住人たちは素晴らしき千葉の文化を知らないし、西森博之の実録漫画を読む事さえできない――。

 騎士は応じる。


「――我が名は、ガム。取り立てて特徴のない名前だが、意外と気に入っている。どこ中と言われても困る」


「そうかい……だが、長い名前より覚えやすい。どこ中か訊いちまったのは、普段の癖だ。そこんところは、あんたは気にしなくていいぜ。――――しかし、ガム、てめえには一つ言っておきてえ事がある」


 と、アリエスこと敏也は、そのサーベルを地面に放り捨て、一呼吸置いた。

 武器を捨てる、という行為に周囲すべてが息を飲んだ。


「女を取り囲って喧嘩しようなんざ、どんな了見してやがる! この人たちみんな困ってるじゃねえか!!!!」


 そして、この瞬間、アリエスの拳が、ガムの顎に思い切り叩き込まれていた。飛び上がって、膝から伸びあがるように、アッパーを叩き込んだのだ。

 ガムの身に着けていた鎧兜が、その瞬間外れて、中から長い黒髪の男の顔が現れた。まだ若く、あまりに出世の早いエリート兵士だったと見える。彼らのような人間は、基本的に傭兵だったり、アクィナに屈服させられたりした経緯の持ち主だが、ガムは前者だった。戦闘経験のあるガムが遅れを取る事など滅多になかった。

 周囲が、ひどくざわめいた。


「こ、これが……姫騎士の拳か……」


 と、ガムは数歩退く。しかし、いよいよ兜を外された顔面は、そのまま無言でストレートパンチの餌食になる。ガムは、その一撃で昏倒する。周囲全員が固まった。

 もはや、そこから先の争いは、そうして口を挟む暇などなかった。


「げべねらっ!」


 前歯が弱点だったティラノ系獣人モンスターの、まさにその弱点に叩き込まれる掌底。――そして、獣人の昏倒。もはや、本気になった番長は語らない。


「つ、強そうだぜ! およそ考え得る限りの卑怯な手段を使って殺っちまおうぜ! オイ!」


 次いで、恐れるモンスターたちが続々、その震えが武者震いと信じて前に出る。

 が、意味はなかった。トリケラ顔がツノを掴まれ、顔に膝蹴りを叩き込まれた。ブラキオ顔は、二体纏めて裏拳に喘ぐ。剣士は、剣を振るったが、避けられ――そして背後に回ったアリエスの空手チョップを見舞われ、意識を途絶する。

 四十人の団は、彼を相手にはあまりに弱すぎた。全滅までに十分とかからなかった。気づけば、三十人近くが伸びていて、残る十人が戦意を喪失してへなへなになっている。

 アリエスは――敏也は、言った。


「――おい、てめえら。死にたくなければ、二度と俺たちの縄張りに近づくな。……仲間は持って帰って治療してやんな」


 へなへなの残り十人は、コクコクと頷いた。

 今の団もそこそこの精鋭が揃っていたはずが、敏也にとっては大した相手でもなかったのだろう。何せ、既に北関東に蔓延(はびこ)る、恐喝常習の忍者暴走族・SHINOBI-16シノビ・シックスティーンとの抗争では、二十対一の劣勢を切り抜け、全員を病院送りにした番長である。

 それにしても、こいつはガムというには味のないガムだった、と敏也は思う。


(い、今のは、私が戦っていたの……?)


 本当のアリエスの方が、意識の中で、まだ信じられないとばかりに己自身に問いかけた。


(いや、俺だよ。悪いな、姫さん。本当に詳しい事情は後で落ち着いてから話す事になるんだが、俺はしばらく、あんたの身体に乗り移って戦わせてもらわねえとなんねえんだ)


 ……アリエスは感じ始める。

 これは、本当に、何か別のモノが自分の中にいるんじゃないかと。


(本当に私に取りついているの?)


(ああ、挨拶もなくお邪魔してすまねえな)


(そ、そんな……助かったわ! このタイミングで来てくれて! あなたをはじめとする森羅万象や、流星の民主主義に、心より感謝しています……! 伊神番長が悪いゴーストでなければ大助かりです! あ、今のは、幽霊という意味のゴーストと、代役という意味のゴーストの二つの意味が掛け合わさっていて、なかなか上手いと思います! とにかく、ありがとうございます!)


(……あ、ああ。そう言ってくれると助かる。俺はこれからもあんたの身体を、いざって時に借りさせてもらうぜ。――さあ、返すぜ)


 言って、敏也はアリエスに意識を返した。

 ――アリエスは自分の身体に戻る。

 アリエスは、きょとんとして、自分の両手両足を動かした。先ほどまでと違い、それはとてもよく動いた。

 目の前では、妹たちが駆け寄ってきていた。歓声が聞こえている。


「――す、すごいよ姉様(ねえさま)! 本当はこんなに強かったなんて! あたしたちと戦う時に弱かったのは演技だったのね!」


「さすが、あてえの姉君なのです! エリサは信じていたのです!」


 姉妹のくせに姉と異なる茶色の髪で、ポニーテールにしている次女・セラフ。

 紺色の髪でおかっぱ髪の小さな三女・エリサ。

 敏也も、意識と肉体の主導権こそないが、アリエスと共同で使っているその目に、二人を見た。いやはや、二人ともなかなかお目にかかれないほどの美人の外国人――エリサだけアジア系に近い――である。彼女たちからは微かに、花のような香りがした。

 次いで、次々と歓喜の言葉を上げる民がいたが、所詮有象無象のモブなので、別段、この連中について説明しておく事はない。


(この子たちはあんたの妹さんか……この上の長女という事は、あんたもさぞかし美人なんだろうな)


(……ええ、伊神番長。……ここで『いえ、そんな事はないです、私はブスですよ』と謙遜(けんそん)してしまうのは、私を美しいと評する人や本当のブスに失礼なので、ここは自信を持って、いま言っておきます。私は、美人です)


(なるほど……自分に誇りを持つのは良い事だ。容姿っていうのは、親から受けた大事な宝の一つだからな)


(それに……いま、私には、あなたの姿は見えないけれど、その低くカッコいいお声は聞こえます。見えない物を勝手に補完する精神のやむを得ない作用によって、あなたの容姿に対するハードルが、今天井まで上がっています……、あなたもさぞ美男な方なのでしょうね)


 助けてもらった挙句、勝手に人を美男と空想してしまうようなイケメン至上の性格は、この姫君の欠点ともいえた。

 天井まで上がったハードルは飛べないという事を、彼女はまだ気づいていない。

 姿が見えないというだけで、勝手に要求は上がる。この男、伊神敏也が仮に、『青の時代』に出演していた頃の堂本剛や、『白線流し』に出演していた頃の長瀬智也のようなタイプの美男子だとしても、彼女は盲目的にそれより上を想定してしまっているのだろう。

 性格の良い姫であったが、短慮で手前勝手な側面が二、三あるのも紛れもない欠点であった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆


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