表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生番長と、可憐なる姫(おんな)騎士  作者: 庭野 ワニ(23)
もう一度魔法を!魔女アクィナ遂に現る
19/26

にぎやかな熱帯魚




 ウォダギリ城に帰り、ゴンゾウの死地で、俺は全ての事情を妹二人に説明した。残りの民全員に話すよりは、まずは家族と対話する事にしたのだ。

 俺が死んだ千葉県の事、ガムとの戦いで取りついた事、ゴンゾウやコオラなど色んな敵と戦ってきたのは紛れもなく俺である事、しかし俺の中のアリエスは間違いなく成長していて、セラフにぶつかっていけた事……。

 肚に抱えていたものを全て話して、俺は内心すっきりしていた。

 それから、俺はもう一度、この身体をアリエスに返す。前髪が下りる。セラフが訊く。


「――あっ、いま、姉様に変わった?」


「ええ。あなたたちには、苦労を掛けました」


 わかりやすく髪形で意識の入れ替えがわかるのは、このシステムの良い所だ。万が一、セラフに取りついていた場合、俺はこのポニーテール頭を毎回解くだろう。おかっぱのエリサの場合なら……ちょっと厳しいな。しかし、こうやってわかりやすく髪形を変えられれば、相手も気づいてくれる物だった。

 アリエスが言う。


「――セラフ、エリサ。二人に訊いておきたい事が一つだけあります」


「何?」


「……ゴンゾウさんは、私を許すでしょうか。尊敬だけを浴びながら、こうして最後まで言葉を交わさず、向き合う事のなかった私を……」


 その言葉を聞いて、セラフは、エリサと顔を見合わせた後、自身の口調を、“私”のものから“公”のものへと改めた。


「――では、あくまで、これは私の口から言います。……きっと、姉様と兄様の事を、ゴンゾウは許すでしょう。彼は、許す事の尊さを知っている。あなたの正体に気づいていたかはわかりませんが……優しい彼ならば、きっと、それを知ったとしても、旅立った先で、姉様たちを笑って許すでしょう」


 アリエスは、彼女の口からそれを聞いて頷いた。

 それぞれ姫として、先ほどの告白を聞き届けた民たちの声を聞き、ゴンゾウという一人の民を見ていたからだろう。

 死者の言葉ってのは、勝手に作っちゃいけないもんだが、時に感じられる事がある。自分の中で都合の良い解釈をするってんじゃなく、確かに感じるって時がある。今は、俺にとってもそうだった。

 ゴンゾウが死んだエントランスの隅では、血の跡がとっくに拭き取られているが、俺はどこで死んだのか確かに覚えている。そこを見ていると、ふとゴンゾウが笑った気がした。

 エリサが言った。


「あてえからも、兄上に一つ」


「――伊神番長は聞いています、エリサ」


「ええ。さっき、民の様子を見てきました。……みんな、兄上を自分たちの上に立つべき、信頼できる仲間として迎え入れている……それは間違いありません。そして、あてえは、民に、こう伝えてくれとも言われました……“いらない仲間は、この国に一人もいない”と――」


 それは、俺の言葉へのアンサーだった。

 すべてが終わったらここに、俺の存在はいらないと――そう言い切った俺への言葉だ。魂に熱いものがこみ上げる。俺は、もう、ここの民なのだと。

 いつか確かにここを去るかもしれないが、俺の積み上げてきたものはここに残る。そんな喜びがあった。

 別れは惜しいが、あのまま別れてしまうよりは確かに、この国に“伊神敏也”がいた事は残るのだと――そんな想いが胸からこみあげてきた。


 ――ばたんっ!!


 ……が、そんな言葉を交わし合っていたら、突如、ウォタギリ城のドアが思い切り開けられた。見知らぬ男がそこから入って来て、俺たちは思わず警戒する。

 誰だこいつは、一体何をしに来たんだ。


「――久しぶりだな! 姫騎士、アリエスよっ!!」


 それは、一応、赤い防具みたいなのを胴につけている短髪で体格の良い男だった。

 それなりに若いが、年を食っていてもせいぜい二十代前半ほどに見える。こんな奴、うちにはいないし……そもそも、防具が嫌に派手な赤色だ。こんな物つけてたらすぐわかる。

 しかし、どうも、どっかで見た事あるような……。


「だ、誰ですか!? あなたは!?」


「我が顔を見忘れたか、アリエス! このアクィナ軍の団長、ガムの顔をっ!!」


 ――あっ、そうだ! その名前!

 こいつの存在を覚えている。俺がこの国に最初に来た時の敵だ。コオラに引き続いて、こいつが攻めて来たものと思い、俺は慌ててアリエスの身体を借りる。

 そして、前髪をかき上げてオールバックにすると、すぐにガムに言う。


「――てめえっ! あの最初の奴……! 二回くらいしか台詞がねえ奴だなっ!」


「ああ。こう見えても私は、きみに一撃でやられた男だっ!!」


「髪切ったか!?」


「ああ……つい昨日なっ!!」


 髪は切ったらしい……。髪を切ると印象が変わりすぎて、同じ人物だと認識できないタイプの奴だ。とにかく、俺は、セラフとエリサを自分の後ろにやって、拳を構える。強く警戒して、このガムという男に訊いた。


「で、何しに来やがった? リベンジか? 誰にも指一本触れさせねえぞ」


「――待て。私は別に復讐に来たわけでもなんでもない。負けは負け、私は弱かっただけだ……」


 ……って言うと、もしかすると、こいつは潔いタイプの敵か? 言葉通りなら、こいつはコオラとは正反対って感じだ。

 だが、そうだとすると、来る理由は特に思い浮かばない。


「……じゃあ何の用だよ? ひとくくりにレッテル貼るのはあんまり好きじゃねえが、今のここの民はアクィナの手先ってだけでも、あんまり歓迎はしてくれねえぜ。勿論、俺もだ」


 拳を握って、こいつを睨む。……が、ガムは平然としていた。


「構わん。だが、これだけは言っておこう。私も奴のような騎士は歓迎などせん、と。――しかし、今のきみたちには、何より情報が必要だろうと思ってな。……私は、ちょうど、奴の居場所や、アクィナ軍の狙いを全て知っている」


 なんだろう。どうやら、本当に戦意はないらしい。ちょっと怪しく見えるかもしれないが、俺には目を見ればそいつがよくわかる。なぜなら番長だからだ。

 しかし、こいつは自軍を裏切って、俺たちに情報って奴を届けに来てくれたと言う。内通ってやつだ。なるほど、悪い事だって気づいているなら、それも良い選択かもしれない。……掌を返すのは悪い事じゃない。良い意味で掌を返す事は、悪い方向に頑固なよりはずっと良いからだ。

 とりあえず、無害にしても、俺は三姉妹に代わって前に出て、こいつと一対一で話す事にした。こいつも応じるように口を開いた。


「……アリエス。ともかく、私の生い立ちから話そう」


「いや、それは別にいい……興味ないから……」


「興味がなくても、少しだけ話させてくれ。こういうのが後で、大事な話に繋がる。……いや、やっぱり話は掴みが肝心というからな。とりあえず、まず大事な情報を一つ教えよう。……私と、コオラと、そしてキャンディという小さな少女――アクィナ軍直属の部下は、その三人だ」


「……っ!」


 ガムがくれたのは、結構いきなりの大情報だ。

 アクィナの配下は三人で、俺はもう、そのうち二人ともう会っているらしい。そして、残りの一人はキャンディという“小さな少女”。

 このあんまり手ごたえもなかったガムに、頭でっかちのコオラと、直属の配下にしてはあまりにも弱すぎるのが気になってしまうが、まあ俺は別に強い奴と戦いたいわけではない。――しかし、なんか引っかかる。この違和感……フィクションなら何かの伏線と考えてよさそうだ。

 ガムは続けた。


「……そして、私とコオラは既に一度、きみに敗北し、そのたった一度の敗北を理由に、配下の座を奪われた。つまり、アクィナ様の配下は、残りはキャンディだけだ」


「っつったって、いくらなんでも、直属の配下がそんなに少ねえっておかしくねえか?」


「どういうわけなのかは知らん。――が、私たち三人には、“ある共通点”がある。我々は、物心ついた時には孤児(みなしご)となっていて、それぞれ何かにとりつかれるかのように強さを求め、過酷な毎日を生きてきた途上、アクィナ様に拾われたという事だ。――私は、傭兵としてひたすら強さを求め生き続け、コオラは学力を極めるという形で……キャンディはただただ幼く孤独な日々を自分の力で黙々と生き続けるというように……それぞれ、“強さ”をあらゆる形で解釈してそれを自分の軸に生き続けてきた。……そして、私たちは、それぞれこの指輪を、幼い頃より持っていた」


 ……ガムは、防具の中から、ネックレスのようにして首にかけていた指輪を見せた。

 俺の真後ろでそれを見ていたセラフとエリサがぎょっとしている。


「これ、王家の証よ!? ……だとすると!」


「やはり、そうか……私は――王家の人間……アクィナ様の実子だったらしい」


「じゃあ、あんたは、あてえらのイトコって事ですか……」


 セラフ、ガム、エリサがとりあえず何だか納得しているようだ。

 俺も、以前、アリエスから指輪の話は何となく聞いている。しかし、それが王家の証っていう奴だったのは驚きだ。アリエスのみならず、この二人も持っているのだろうか。


(――ガムさんやコオラさんは、アクィナおばさまの隠し子だったようですね……驚きです。……それも私より年上のようで……一体、いつの間に仕込まれたのか……)


 アリエスも、唖然としていた。

 ガム、コオラ、そしてまだ見ぬキャンディ。彼女たち三人は、みんな、親戚と戦わされ続けているのだ。そのくせ、その事実を全く誰も知らない。コオラも、明らかに親戚同士だなんて知らない様子だった。ガムは、まだ続けた。


「――指輪を目印に我々はアクィナ様に拾われた。私たちは何かに惹かれるようにして、配下となる道を選んだ。……そして、アクィナ様の狙いは、私たち三兄弟を、セイコンの三姉妹とぶつける事だった」


「一体、なんでそんな事を……」


「それはわからない。私は、子である事さえ、母に伝えられていなかったからな……。だが、とにかく、我々はセイコンの三姉妹と戦い、勝つ事だけをひたすら命じられてきた」


 アクィナの目的は、自分の子と、姉の子とをぶつけ続ける事だったというのだろうか。

 それに何の意味があるのかはさっぱりわからない。とにかく、家族ってのを大事にしないのがアクィナとかいう女らしい。ガムにしても、コオラにしても、キャンディって奴にしても、全員、親の手から放り出されて、「勝手に生きろ」とばかりに生きて来た。

 そいつが悲惨な生き方だってのはわかる。

 そして、今は自分の姉夫婦を氷漬けにして、その娘三人をわざわざ狙っている。なんて迷惑な女だ。

 ――で、ガムはそんな中、また唐突に自分の生い立ちを踏まえて放そうとし始めた。


「私は傭兵として生きながらも騎士道を学び、高潔な心を求めていた」


 よっぽど自分語りがしたいらしい。まあいいや。それは後で聞く。


「その割には、みんなでよってたかって攻めて来たな?」


「私もまさか、あの時は非戦闘員がここまで少ない国とは思わなかったのだ……許せ。何より、私は、騎士として育てられたアリエス姫と、一対一で決闘するつもりだった」


 ……そうだったのか。それは少し、こっちも短慮が過ぎちまったかもしれねえ。

 考えてみれば、俺も想像以上に誰も戦ってくれないし、誰も訓練してくれない国だったのを思い出す。百人の民間人しかいない国って感じだったからな。

 百の民間人を後ろに、本命の騎士が一番前に出されるなんて、ガムも思ってはいなかったのだろう。それであれだけの部下が前に出てアリエスを囲むようになっていたのも仕方ないかもしれない。


「……まあ、こっちもいきなり殴っちまったのは謝るぜ」


 俺は、これについては素直に謝ろう。拳は最後の手段って思っていたが、どうもそいつを使うのを早めすぎちまったらしい。結果的に、使わなきゃ解決しなかったような気もするが、もう少しこいつの話を聞いてやっても良かったかもしれない。戒めよう。


「――それで、ガム。あんたは、それだけ教えに来てくれたのか? すげえありがてえ情報だが……それで、なんで、アクィナ軍を裏切った?」


「アクィナ様は、負けた者にそれ以上、用はない。だからといって、別に殺すわけでもない。もう一度、他人のように野に返すだけだ……。あとは好きにしろ、とばかりにな」


 子は親を選べないってわけか……俺がまともな親の下に生まれたのを感謝する。

 だが、こいつは親なしでも生きていこうと決め、別の生き方を成功させたのだろう。そんな不利から立ち上がるとは、なかなか立派だ。


「そのうえで、私は選んだ。この戦いを、すぐにでも終わらせようと……。トナリノ町の負傷兵を見て、敗北したコオラがここに攻めて来た事を知り、私はきみたちにすべて伝える事を選んだのだ……このまま、無益な憎み合いや血が流れるのは、私も本意ではない」


 しかも、こいつは性格面でも案外悪くないかもしれない。

 戦いを終わらせる。……なるほど。俺も同じ事を考えていた。

 こいつは、更にまた、これは毅然とした態度で、言った。


「さて、話は長くなったが、コオラの居所はこれより案内する。――そして、アクィナ様の居場所は……極寒の地、スウィート・ピィの王国だっ!」


(……!)


 俺の中で、アリエスが強く動揺した。

 セラフに、エリサも、傍で驚いていた。……冷静になれるのは俺だけだった。


「ここのみんなの故郷が、決戦の地ってわけか」


「ああ。時折、アクィナ様は、きみの母の氷像を眺め、憎しみのまなざしを向けている……いや、あれは……わからない。私には、母が一体、自分の妹にどんな感情を向けているのかまでは……」


 そりゃあ、家族への感情ってのが、ガムにはあんまりわからないだろうからな……。

 それに、俺もそのアクィナっていう奴が一体何を考えているのかわからん。姪である三人も、明らかにアクィナのやっている事の意味はわからなそうだった。


「とにかく、アクィナ様については、そこにいる。私からの情報は以上だ。あとは、コオラの行く場所には私が案内する。――コオラやアクィナ様のやり方には、私も一人の騎士として不満がある。ゆえに、私はこれより、きみたちに協力する立場となろう!」


 こいつも随分元気で前向きな奴だな……。


「ああ、わかったぜ。……でも、あんた、結構良い奴じゃねえか。そんだけ立派な理由で、元の仲間から寝返ろうって」


「――いや、実は、理由は他にもある」


 などと言い出すと、ガムはなんだか、少しもじもじとし始めた。

 なんていうか、背筋に嫌な予感がした。


「その、なんだ……実は……親戚同士とわかった今言うのも何だが……私を殴ったきみに……その……あの時、なんというか……一目ぼれを、な……」


 やっぱりだ。

 ……申し訳ない。それは、俺だ。お前を殴ったのは、アリエスの身体を使った伊神敏也だ。

 果たして、この場合、アリエスが惚れられた事になるのか、その瞬間の精神を支配していた俺の魂が惚れられた事になるのか……そこがよくわからんが、俺の考え方を述べると、俺に惚れたのと同じと言って良い。

 とにかく、この姿を参考するに、恋愛感情っていうのはこういう風に自分の言いたい事をシンプルに伝えればいいのか? こいつもシャイな奴なのであんまり参考にはならなそうだが、ちょっと色々勉強しておこう。

 横から、幼女エリサが言った。


「――ガムの兄貴。その人は、一応アリエス姫ではあるんですが、その、殴り倒した時の姉上は、男性のゴーストに取りつかれていたんで、そりゃあ実質、男に惚れたのと同じですよ」


「はっ!? きみは何を言って……」


 セラフが続けた。


「いや、マジです。ゴーストは実在してるんです。伊神敏也さんっていう“番長”だそうです」


「うわ、マジか……そんな、やっぱりゴーストは実在したのか……じゃあ……私の一ヶ月は……」


 セラフの言で納得しているようだった。様子が変な事や、最初に「伊神敏也」って一応名乗っていたことが効いたのかもしれない。

 まあ、こいつの認識上でも、イトコの中のオトコに恋してたってわけさ。照れるね。

 とはいえ、そこで折れる時点であんたの想いってのはそのくらいのレベルって事だぜ。好かれてもイエスなんて答えられないけどな。

 俺は、落胆するガムの肩に手を置いて、言った。


「――まあ、いいだろ。男ってのは、時に男に惚れる事もある」


「そ、そうか?」


「前の人生でも、よく“惚れた”って言われたぜ。番長ってのは、男に惚れられるような男の事だ。その惚れるってのは、ちょっと、ただ男が女を好きになったり、女が男を好きになったりするのとは意味が違ぇ。魂が魂に共鳴し、言葉だけじゃ言い表せない深いダチになるって事だ」


「そうか、なるほど……」


「俺もちょっと、あんたに惚れたぜ。昨日までの自分を改めて、“戦いを終わらせる”って事の為に踏み出せる……その漢気は、立派だ」


 これは本心だ。

 そして……もうひとり、俺にはこの世界で惚れた男がいる。

 そいつの仇討の為に、俺は行かなければならない。


「……行こうぜ、ガム。俺はコオラと決着をつける。案内してくれ」


 言うと、ガムは頷いた。

 そこから進んでいこうと踏み出した時――セラフが、何かを持って俺たちを止めた。


「あ。待って。兄様、そして、姉様。――こちらをお受け取りください」


「これは……?」


 振り返って、セラフに訊くと、セラフとエリサは、その瞬間、再び――傅いた。

 俺は、自分のもとに献上されているものが“指輪”だと気付く。真っ赤な宝石に『炎』という漢字があしらわれた、綺麗な指輪だ。――これはまさか。

 長女アリエスの妹として、彼女に付き従う立場を発揮しているのだろう。彼女たちは、敬語で説明した。


「アリエス姉様の大事な指輪です。――我々が母様より継いだ、大事な娘の証たります指輪。今、再び戦いの為、この指輪をお受け取りください」


「この国を継ぐ長女の誇りある戦いを、エリサたち妹も……陰ながら、支えさせていただきます」


 俺の中で、アリエスが言う。


(受け取ってください、伊神番長……)


「ああ……ありがとう、セラフ、エリサ、それにアリエス……頭を上げてくれ。――――行って来る」


 俺は、そう言って、赤い指輪を手に付けた。それを左手にはめ、喧嘩用のグローブを装着すると、俺は、今度こそ歩き出す。

 目当てはコオラ。あいつの顔面に、怒りのパンチを叩きつけてやる為だ。

 この国全員の怒りを、奴にぶつける為、俺はガムとともに、城を出る。人々は、瓦礫をどけたり、掲示板を治したり、働いていた。


「……みんな……俺たちは、ちょっとクソ野郎を倒しに行って来る!! 前に進み生きようとした人の命を軽んじ、見せしめのように殺し、俺の……いや、俺たちの仲間と、二度と会えなくした、あの野郎に……己の罪の重さをわからせる為に!!」


 民はみな、こちらを見た。

 強いまなざしだ。その間、ここを守れるのは彼らだけだ。だが、その覚悟はどうやら彼らにはきっちりあるらしい。近くの町から駆り出されてきた、俺がよく知らないような人たちもたくさんいた。

 みんな、俺の言葉に頷いた。


(いいな? アリエス姫!)


(勿論。……あなたの怒りは、私の怒り! 共に参りましょう!!)


 俺とアリエスと、ついでにガムは、行く。

 怒りが再びこみあげる。どんな事情があろうと、コオラはひねくれている。もう一発殴らなければ気が済まない相手なのは間違いない。

 そうだ、あいつをぶっ倒す!!

 俺たち二人は、ガムの案内で、コオラのもとに行った。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ