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世渡り下手な最強の侍は異世界で気ままに生きる?  作者: ミイルキイ
第1章 ボーイミーツガール
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初春

襲われている。鬼娘を見て…期待外れだと落胆する。さっさと帰って寝よう…そう思い、その場を後にしようとする。助ける義理もない。


「ひ…来ないで!」


ただ、必死に棒を振り回し抵抗する少女の姿に…見捨てることに後ろめたさを感じる。


姿が人に近いからだろうか?


それとも、孤独に耐えられなかったのだろうか?


ただの気まぐれか?


俺は何の得もないのに、思わず刀を引き抜きその化け犬どもを強襲した。


犬と似ているが、かなりでかい。しかも5匹…善意だけで相手にするのは、割に合わない。


「くそ…」


俺は悪態をつきながらも…1番近くにいる化け犬に狙いを定める。化け犬がこちらに気付き、迎撃態勢に入ろうとするが…次の瞬間には化け犬の首は胴から離れていた。


首のない胴が2、3歩進み倒れこむのを気配で感じながら…もう一匹の攻撃を躱わす。そして、その足を狙い攻撃する。


「キャン」


足を斬られ鳴き声をあげる化け犬、そしてバランスを崩したところに、返す刀で首を刎ねる。…残りの三匹は、二匹がやられたのを見て慌てて走り去って行った。


奇襲が功を奏した…鬼どもと同様に硬い感触だった。まるで大木を切ったような気分だ。鬼どもと戦ってなければ、予想以上の硬さに失敗していたかもしれない。


こっちの世界の生き物はでかくて固い奴が多いのか。そんなことを思いながら、刀の血を拭い、白い個体を見る。


「ひ…」


怯えた目でこちらを見る鬼娘…なんだ?助けたのにこの反応は…。まぁ、仕方ないか…ここにきて鬼娘を見る。青みを帯びた白い髪に、グレーの瞳、鬼というよりは雪女といった風体だ。


あれ程、気になっていた角も、その可憐ともいえる容姿のせいで髪飾りにしか見えない。


「おい…何でこんなところにいるんだ?集落からだいぶ離れてるだろ?」


「?…?」


不思議そうにこちらを見る白い個体…こちらが意味を理解できるなら、もしかして相手にも伝わるかと思ったがそうではないのか?


「…わたしたち…ハグレ…お母さんが見つからない…。」


化け物たちと同じ言葉でボソボソと話す白い個体…どうやらこちらの言葉の意味も伝わるらしい。


「そうか…、ほら」


そう言うと、持っていた食べ物を与える。どうやら腹が減っていたらしい。嬉しそうに干し肉を頬張り始めた。


その間に、その場を離れることにする。流れで助けてしまったが、迷子のガキの世話をする余裕はない。


しばらく歩くが、白い鬼娘は俺についてきてしまう。会話をして恐怖が和らいだのだろうか?そして、俺の横に来ると…


「あなたは何?わたしと同じ肌の色…」


ジーっと俺を見る。どうやら俺を自分と同じだと思ったらしい。


「いや、違う…俺は」


「違う?何が違う?一緒」


なんて説明すればいいんだ?見れば確かに白い個体は人に似ている。と言うか人にしか見えない。違いを説明しようにも思いつかない。もう…いいや…疲れた。とにかく帰って寝よう。


俺は、説明することを諦め、結局は白い個体が寝ぐらまで来るのを許した。



✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


朝目を覚ますと、例の白いのが一緒に寝ていた。どういうことだ?確かに別々に寝たはずだ。


いや…それよりも、こいつが俺の寝床に入って来たのに気が付かなかったのが問題だ。誰かが近寄ってきて気が付かないなんて、前世(あっち)じゃあり得なかったことだ。


慣れない森を歩き回って疲れが溜まっていたのだろうか?


考えながら、白いのを見る。背丈は俺より低い…人の女であれば普通だが…化け物の中ではかなり小さい…と言うか見れば見るほど人にしか見えない。


気持ちよさそうな顔しやがって…まぁ、躾は最初が肝心だ。寝床は別々だと決めた以上…決まりを守らなかったこいつには仕置きを与えねば。


「おい!起きろ。」


「…んー、もう少し…」


「少しじゃねぇ!起きろ!」


「んうー!」


俺は力ずくで起こそうとする。しかし、白いのは起きるどころか、俺の手を振り払い、そのまま手で俺を払いのけた。


「ぐわっ…」


驚くべきことに、それだけで俺は10尺(約3.3m)ほど吹き飛ばされた。どうやら見た目はひ弱そうでも、俺よりずっと力が強いらしい。やはり、化け物だ。


「ゲホッ…くそ…」


起こすことを諦め、朝食の準備を始める。


今日は、木の実と残り少ない米の粥に干し肉をいれたものだ。辺りに食べ物の匂いが立ち込めると…眠そうに目をこすりながら、白いのが起きてくる。


「おい、そこに座れ。」


食べ物をくれるのかと、嬉しそうに寄ってくる白いの。元々二人分作っているのでそれはいいが…


「何で、自分の寝床じゃなくて俺の寝床で寝てたんだ?」


「んー寒いから」


「おまえ…今までも誰かと寝てたの?」


「…私はハグレだから、いつもお母さんと一緒、家族なら一緒に寝るのが普通。」


「俺はおまえの家族じゃないの!だから男と女が一緒に寝ちゃダメなんだ。わかったか?」


「家族じゃない?ダメ…?」


少し俯きながら涙ぐむ、白いの…当然のことを言っているのに、何だこの罪悪感は…


しばらく沈黙が続く…何も言わず、出来上がった粥を器に入れて渡してやる。


黙って食べ始める白いの…食べ終わると口を開く。


「でも…あなた、子供。だから一緒に寝るのいい。」


名案とでも言いたそうにそう言った白いの


「おい、誰が子供だ!俺は元服してるし、お前よりも絶対に歳上だ。」


自分の正確な年齢なんざ分からんが、少なくとも八つぐらいは離れている。


「…でも小さい?わたしと一緒」


「お前らからしたらね。俺の国じゃこれぐらいが普通なんだよ!」


…くそ。


「そうか…わかった。」


いまいち分かってなさそうに答える白いの


「そういえば、名前も名乗ってなかったな…俺のことは八乃介とでも呼んでくれ。お前は?」


「ヤーノ・スケ?……私、名前ない…条件揃うまで名前付けない。」


「そうか…」


そういえば、俺も拾われてから新しい名前をもらったな…懐かしさを感じながら思わず…


「俺が名前をつけてやろうか?」


「名前くれるか?」


急にソワソワし始める白いの…何だ名前くらいで大袈裟な。


「そうだな…考えとくよ。」


白…そう言えば、あの人の家に咲いてた白い花はなんて名前だったか?


「約束?約束」


嬉しそうに俺の腕を掴みそう言う白いの


「わかった。わかった…約束な約束」


まぁ、少し考えてみようか。


さて、今日は何をするかなーーーー。




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