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世渡り下手な最強の侍は異世界で気ままに生きる?  作者: ミイルキイ
第1章 ボーイミーツガール
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残雪

化け物共の集落近くに拠点を置いて1週間が経った。集落近くに拠点を置いたのはいくつか理由がある。


まず、集落の近くであれば危険な動物に遭遇する可能性も低いと考えたからだ。よほどの大型動物でなければ、あの化け物達を避けるだろう。


それに、あの化け物達の気配は人に似ているので分かりやすく、近づいてくればすぐに分かる。万が一見つかっても、四つ足の動物に比べれば足も遅く逃げやすい。


それに、もし絶対に勝てないような化け物に遭遇した時は、集落に逃げ込んで敵の目を誤魔化すこともできる。つまり、虫除けと(おとり)を兼ねているわけだ。


2つ目の理由は、最初に持たされた米がなくなりそうだということ。要は食料の問題だ。


観察すると奴らは、狩猟や採集で得た肉や木の実などを食べて生活しており、保存食も作っていた。食べられる物を知るため、奴らから学ぶことも必要だ。


現に奴らが食べていた木の実は、味はイマイチだが、大量にあるため採取が容易だった。煮ると粥のようになるので今は、これを米の代わりにしようと考えている。


まぁ、どうしようもなくなったら鬼どもの食料庫から気付かれない程度に食料を頂戴してもいい。


そして、考えたくはないが、この世界に人間がいるか分からないことも理由の一つだ。


あの神を名乗る女は、別の世界に送るとは言っていたが、この世界に人がいるとは一言も言ってなかった。


こちらの世界の 金貨が持たされていたので、あると信じたいが…例えば鬼どもの金貨である可能性も十分ある。


なので、あるかも分からない人の村落を探すよりも、ここを拠点として、生きることを最優先にしたのだ。


「しかし…暇だな。」


そんな訳で、食料事情も落ち着いたので、洞穴で横になり惰眠を貪っていると…前世であんなに追い回されていたのが馬鹿らしくなるーーー


生きるために殺しを生業としてきた。自分を拾ってくれた人に言われるままに人を殺めてきた。


ただ、殺せば殺すほど、身動きが取れなくなった。今度は、自分が狙われる立場にもなった。


それでも、正義に焦がれ、借り物の正義を信じて殺し続けた。


その先に、希望があると信じて…ただ、信じた人の目標が潰えた瞬間、自分が疎んじられていることに気がついた。


世界が音を立てて崩れた。


ーーーいつの間にか、眠っていたらしい。嫌な夢だ…


嫌な気持ちを振り払う様に、少し出歩くことにする。とは言っても、どこまでも森が続くだけだ。


集落近くを歩いていると、化け物共が話しているのが聞こえてくる。


聞こえてくるのは、「グプリュガ」とか「ギャゥ!バスベンボ!」とかいう訳の分からない異音だ。


ただ、最近気がついたがよく聞けば、不思議と意味が分かるのだ。


「おい…あのハグレ共をどうするか?娘も12歳になるのに角も一本しか生えてこない。」


「どうもこうもねぇよ。さっさと殺しちまった方がいい。そもそも白い肌の子なんて気味が悪い。」


「いや…アレは頭のお気に入りだ。それにアレの親は頭と同じくらい強いって話だ。」


「…ちっ、頭も何だってあんな小娘に」


「まぁ、確かに見た目だけ見れば美しい…もっと肉づきがいい方がよいが…珍しいメスにお頭が入れ込むのは珍しいことじゃない。」


「それでも、あのハグレが好き勝手やる理由にはなるまい。」


「それも近く終わるさ…頭はハグレに娘を差し出すように求めている。それが決裂すればどうなるか分かるだろ?」


「ハグレだけでもこっちに回ってくればいいがな。」


白いのがいるのか?…あまり興味がないから意識してこなかったが…まぁ、俺には関係ないことだ。


「おい!何かいるぞ」


おっと!気づかれた逃げないと!


✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


ここにきて一カ月が経った。だいぶ食べられる物も分かってきたので少し探索する範囲を広げてみることにする。


あるかは分からない人里だが、このまま化け物の集落周辺で暮らすのはダメだ。人と会話したい。


誰とも話さなくても、近くに人がいればまだいい…全く人がいない状況で一ヶ月だ。もしかしたら、世界に人間は俺一人きりかもしれないのだ。頭がおかしくなりそうだ。


そのため、気を紛らす意味もあり、いつもは行かない範囲まで探索することにする。人に会えなくても、人がいる痕跡でも見つかれば希望が湧いてくる。


俺は希望に胸を膨らまし、歩き始めた。


しかし、あるのは木と林と森だけ…あと時々、川だ。


くそったれ…なんだってんだ。神とやらに文句の一つでも言ってやりたくなる。ただ、説明は必要ないと言ったのは自分であることを思い出し、文句の言葉を飲み込んだ。


そして…三日後、探索した結果は成果なし…落胆して、いつもの洞穴に帰ろうとしたその時、人の様な大きな悲鳴が聞こえてきた。


人がいるのかという希望が半分、早く助けなければという焦り半分で、悲鳴の方向に急いで向かう。


そこには、馬ほどもある巨大な犬の群れに襲われる一人の少女がいた。ただ、その少女の額には赤く輝く一本の角があったのだ。

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