日常
クレハの家の片付けが終わった頃、仕留めた牛などの肉を、ボロスを通じてどぶろくのような酒や布などと交換した。
他に、白いのの服も作ってもらった。つい最近まで全く気にならなかったのだが、最近は発育が著しく、布切れ一枚では目のやり場に困っていたので、助かった。
鬼達の持ってくる品は思ったよりも質が高く、多少作りは大雑把だが、丈夫で使いやすい。
「お前…せっかく交換してやったんだから服をちゃんと着ろ。」
「ん〜だって、きついし動きにくい。」
はじめこそ喜んで着ていたが、今では外に行く時ぐらいしか着ない。家の中にいる時は、いつもの布を一枚巻いただけの姿でウロウロしている。
「それに、ヤーノスケだって着てない方が嬉しそう。」
「そ…そんな訳あるか!お前は俺をなんだと思ってるんだ。」
「だってヤーノスケ…近頃、私の胸ばかり見る。里の発情期の男と一緒。」
「…おい、お前とは一度真剣に話をする必要がある事は分かった。そんな事より、見られたくなけりゃ服着ろ!」
「開き直った…」
半眼でこちらを見る白いの
「いや、待て、今のは見たのを認めた訳じゃなくて…。」
「まぁ、別にヤーノスケに見られるのは別にいい。外に行く時は着る。」
それで、話は終わりだと斧の手入れをし始める白いの
。牛男が持っていた槍と斧を合体させたような武器だ。
なかなか良い品だったので持って来たが、重くて俺には扱えなかった。そのため、白いのに持たせることにした。白いのは見た目は華奢だが、俺よりも遥かに力が強い。
「しかし、その斧…気に入ったんだな。」
「うん、よく斬れる。それに綺麗。」
「扱いにも慣れて来たし、どっかに狩に行くか?」
「本当に?行く!私…牛を狩りたい。」
「牛はやめとけ…化け犬くらいにしとけ。」
「化け犬はもう飽きた…」
「わがまま言うな…牛は模擬戦でクレハに一度くらい勝てたらやらしてやる。」
と絶対無理な条件をあげる。
「それは条件が厳しいすぎる。」
白いのは抗議してくるが、譲るつもりは一切ない。それだけ、危険な相手だからだ。
『ん?何の話だ?』
と危機感のない様子で、集落から帰ってきたクレハを見る。艶やかな青磁の肌に、美しい黒髪を持つ姿は、美女と言って問題あるまい。成長著しい白いのではあるが、クレハを見るとガキにしか見えない。実際、ガキだしな。
背も胸も何もかもがでかい。ただ不思議なことに腰回りは驚くほどくびれており、どこか猫のようなイメージがある。背丈は俺よりも高い…くそ!
「ん、白いのが牛を狩りたいと言い出したから条件をつけてたんだ。」
『牛?無理に決まってるだろう。少なくとも私に勝ってからにしろ。』
「ほらな」
「むーわかった。犬で我慢する。」
『ところで、ボロスの奴が気になることを言っていたんだが…』
「なんだ?」
『集落の若い男達に狩を任せたらしいのだが、10日以上経っても戻って来ないらしい。場所は霧の谷沿いに南に進むとある遺跡らしいから、狩るのは弱い兎やら鹿やらで3日程で帰ってこれるはずなんだが』
「遺跡?何だ…何の遺跡なんだ?」
霧の谷はよく知っている。あの底が見えない滝のことだ。ただ、遺跡は見たことがない。人の住んでいた遺跡だろうか?
『何だ?やけに食いつくな…昔はこの辺りにも他種族が住んでいたらしいんだ。その内の一種族が巨大な石造りの集落を作っていて、住む種族が居なくなった後もそのまま残っている遺跡があるんだ。』
「どんな種族がすんでいたんだ?」
『うーん、私が生まれるずっと前の話だし、我々とよく似た角のない種族らしいが、永らく他種族と交流していないから、それが何の種族かも分からん。』
「そうか…」
鬼に似た角のない種族か…それって人じゃね。半ば以上諦めていたが、ここに来て重要な情報を得た。若い鬼を探しに行く名目で遺跡の調査でもしてくるか。そうすれば報酬も入るしね。
「俺が探しに行ってやってもいいとボロスに言っといてくれ。報酬は酒でいい。」
『そうか、探そうにも男手がいなくて探せないらしいから喜ぶと思うぞ。しかし、若くて弱い男とはいえ5人の鬼族を襲う動物なんていないから、何処かで迷っているんじゃないか?』
「鬼族ってのは揃いも揃って方向音痴なのか?」
『失礼な!私たちの一族女系が方向音痴なだけで、男の鬼族が道に迷うなんて初めて聞いた。』
「自分が方向音痴なのは認めるんだな。だとすると何があったのか?」
『まぁ、犬が十匹以上の群れを組んでいた場合はあの5人じゃ心許ないな』
「それじゃ、犬に襲われた可能性もあるのか…まぁ、いいや。とりあえず、3日後くらいに行ってみるよ。」
「私もいく!」
珍しく、話を黙って聞いていた白いのが話に割り込んでくる。まぁ、危険のない地域らしいので連れて行ってみるか。さぁ、準備しよう!




