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Disaster

 この世界に跋扈するモンスター、通称イーターには大まかに分けて四タイプ有る。

 金属を漁り食らうアイアンイーター。人を漁り食らう、マンイーター。緑を産み出すはずがイーターを産み出し、金属も人も無差別に食らうようになったグリーンメーカー。そしてたまたま建物に有ったルビーを食らったりハンターを食らい、ハンターの持っているルビーを吸収、狙うようになった、……ルビーイーターだ。

 これに加え、ウルフタイプやレックスタイプ、サラマンダータイプ(前回倒した奴)、アーマードタイプやウイングタイプ、更にはマルチコアやデュアルヘッド等々が存在する。様々な外見的、能力的特徴によって区分されているそうだ。この辺りはいずれメモにでもまとめておかねば。……なのでウルフタイプのクジラ並のアイアンイーター型ルビーイーターなんてややこしい物も存在するらしい。この場合は狼の形をした、金属などを常には食らうがルビーも食う、クジラのような大きさ(十メートルを超えるサイズ)のイーターと言う事になる。説明してて混乱しそうだな。

 ルビーイーターはサンルビーのエネルギーを使い活動する最も危険なイーターであり、潰された地下拠点も多数存在する、正に災厄と呼ぶべき存在。それを討伐するには軍隊規模のクランがルビーレールガン等の強力な兵器を持って尚、数部隊も必要になるらしい。それをファタリテートで単独撃破。AHはハルさんだけ。なるほど、凄まじく優秀なクランらしい。


「油断してたらアイアンイーターくらいでも殺られるがな……」


 ヒロユキは神妙な顔で呟く。恐らくは仲間を殺されたのだろう。この時代の人命は前世より遥かに軽いらしい。


「人は死ぬ時は死ぬさ」


 私の言葉は奇妙なくらいに自分の中で重く響いた。





 ハルさんのメンテが終わる。ヒロユキはヒロって呼んでくれとか言ったのでヒロユと中途半端に呼んでやる。ヒロだと二文字で何となくハルさんと混ざるからな。


「カガミ博士、彼女はうちに入れて良いのか?」

「構わんがあくまでも客分扱いで頼むぞ」

「何故?」


 私はどうやらファタリテートに加えられるらしい。だがハルさんは博士からあくまでも私を客として扱うようにと言われている。ハルさんの疑問の声は私の声だった。


「まず彼女にやってもらいたい事がある。それに彼女は規格外の最新型だ。お前たちの私物には出来ん」

「ふむ、分かった」


 私は最新型で、どうやら規格外の性能を持っているらしい。確かに頭の中にあるデータでも私の瞬発力やストレス耐性は桁外れみたいだ。それに秘密の能力みたいな物も有るようだし、ずいぶん私は強く作られている。


「さて、じゃあこの後は彼女の仮加入祝いと行くか」

「それと、ミズキの初ハント記念だ」


 博士の言葉にファタリテートのメンバーからざわっ、と声が上がる。大きな声に少しビックリした。本当に子供みたいに反応するなこの身体は。


「未経験者が初回から単独撃破だと?」


 そんなに大した事だろうか? 私的には散歩程度だったが。しかし狩りでも軍隊でも普通ならツーマンセル(二人一組)とかなのか。


「記録だ。見るか?」

「頼む」


 どうやら私の討伐は、空中を飛びながらターゲットを追跡するドローンのような機材で博士によって映像に残されていたようだ。私を自動追尾したり邪魔にならないよう位置取って望遠撮影したりする進化型ドローンとでも呼ぶべきか? ハルさんもヒロユも他のメンバーもその画面に食らい付く。


「ッ! 討伐開始から一発だと!?」

「発見から討伐までこの距離で五分未満だと? 有り得ん! どんな出力だよ!!」


 そ、そうなのか? 私が固まるのを見て博士はによによといやらしい笑みを浮かべ、そして茶化すように言う。


「ようこそ未来へ、勇者様」


 その博士の言葉は随分ふんわりと私の頭を通り過ぎた。勇者。英雄。そうなれて当然なレベルの能力が私には与えられているらしい。

 はあっ?!





「ミズキの能力は筋力だけを取っても平均的なAHの四倍近いスペックがある。総合力なら十倍にも匹敵するとみている」

「規格外にも程があるだろ。どんな新技術を使った!」

「デミヒューマン計画のデータを根こそぎ漁って注ぎ込んだ」

「……禁止条約の奴じゃないか……!! どこにそんな情報が……?」

「今さらだろ? この世界のどこにまともに氷河期前の法を守ってる奴がいる?」


 ハルさんと博士が言い合っている中で、私は頭の中に有るデータを次々と参照し、自分と言う存在を把握していく。


「要するに私は生物兵器として大戦中に条約で禁止されたテクノロジーを注ぎ込んだ個体と言う事か」

「もはや守る政府も無くなった条約だがな」


 何となく博士の意図は掴めた。彼女は現在のほぼ無政府の状況下で何かをやらせるために違法な私を持ち出した。大きな賭けである。私の頭は結論を出したが、私の心は一層混乱した。はあっ?!

 まさか私はとてつもなく困難な政治的問題を解決したりするためにこの世界に投入されたんじゃないだろうな……? 私の能力は正に災厄級である。かなりな難題に挑まされるのは間違いないだろう。


「恨むかね?」

「随分図々しいな。それを何となく理解できるのは私の脳に細工しているからか?」

「全く?」

「私はそう言う人間だったよ……」


 博士は私の意識に介入していない。それは何となく分かった。

 周りが全て悪い。ガキの発想だと思うかも知れないが私はこの考えは誰にしても正しいと思う。間違ったことをしていない人間に会ったことが無いからだ。つまりは自分も悪いし自分も間違うと言う意味も含むのだが、それが私の考えの深い所を支えている。逆に言えばだから必要なら悪い事も見逃してしまうのだ。自分もやってしまうかも知れないと言うレベルならだが。

 だからか博士がこの時代に、危急存亡のときの策として私を産み出したのは非常に理解できる。要するに間違いと分かっていても博士はやらなければならなかった。回りには任せられない、強い手駒が欲しい、……そう言う事態に差し掛かっているのだろう。世紀末な世界になって、モンスターが蔓延って、それらの環境を作った者が暗躍しているのだ。一千年も前の誰も守っていない古い禁止条約くらいは私も破るかも知れない。


「だとしても私が抱えるのは重たいわ」

「気にするな、ミズキは好きに生きれば良い」


 何か引っ掛かる物言いだが、今はその言葉を信じるしかないか。多分私は放っておいても彼女の目的を果たすと見込まれているわけだ。何故?

 何となくだが私は、博士に呼ばれてこの世界に来た気がする。どうやって私を選んだかは多分高度な科学的選択が有ったんだろうが、そうじゃない、彼女の意図を探って行かなければならないだろう。何故私がこの体に入ったのか。





 博士と私達に若干の溝が生まれたが、私達は博士のメンテを受けなければ停止してしまう。色々隠し事をされているようで若干は不愉快だが、何かを強制される訳でもないので、一時的に、古代の条約では違法な技術により私を産み出した問題は棚上げする事にした。

 翌日、私はファタリテートの客分として、彼らとハンターギルドへと向かう。


「ハンターギルドか……初めてだな」

「目覚めたばかりなら色々気になるだろう。ヒロユキにでも案内させよう」

「よろしくな、ヒロユ」

「ヒロユってなんだよ!」


 可愛い呼び方だと思うがお気に召さないらしい。わがままだな。私はフリーダムだが。少し混雑が落ち着き始めた地下街を見回しつつ、私達はギルドへと向かった。







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