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Awakening

 見直しをあんまりしてないので、分かりづらかったら言ってくださいね。

 この世界にて生まれたてで真っ裸だった私は、カガミ博士が予め取り揃えておいたらしい下着やブラウス、コートなどで服装を整えながら暫く博士と前世の記憶なんかの四方山話で語らいつつ、現状と、自身の記憶の溝を埋めていく。下着を履くところから眺められていて私の顔は燃え尽きそうなほど熱くなってるけど。何故じっと見るのか。まあ研究対象の経過観察だとは思うが。……何か感性が若返っていて辛い。恥ずかしい。


「君が生きていたのは千年以上も昔だ。千と余才おめでとう」

「うるさい。その頃からどうして今みたいな世界になったのか教えてくれ」

「良いだろう。先ずは君が生きていた頃から何年か後だろう、戦争が始まったんだが」


 第三次世界大戦。それはアインシュタイン曰く、次の戦争で使われる兵器は分からないが、その次は石と棍棒を使っている、だったか? その、次に何が使われるかも分からないほどの破壊がもたらされた三回目だ。それが、行われたらしい。

 まあ激しく原爆、水爆、潜水艦のハープーン、衛星兵器、様々な大陸間弾道弾、いわゆる核ミサイルみたいな兵器が中心に使われたんだろうが、その後、戦争は凶悪な熱量を発揮するそれら兵器の爆風で巻き上がった粉塵によって、日光が遮られ、寒冷化が起こったその結果の、氷河期の訪れにより急速に鎮火したらしい。

 その更に後は、人類が太陽にエネルギーを直接求めに行く「サンルビーの時代」へと移行する。…………しかしサンルビーテクノロジーは太陽光のエネルギーを直接奪いに行く技術であり、太陽から急速にエネルギーを奪った結果、氷河期を長引かせる事になった。

 サンルビーテクノロジーとは、特殊構造のナノテクノロジーが産んだ結晶により膨大、莫大なエネルギーを水晶体に収める革新的な技術で、地上でもマグマが凍てつく勢いでエネルギー回収に使用されたらしい。地熱はかなり大切な地球のカイロだ。それを奪ったんだから、そりゃ氷河期にもなろうってもんだ。人類は馬鹿だから仕方ないが、なんで後先考えずにエネルギーを、金を求めるんだろう?

 その氷河期の頃から人類は地下に潜った。今私達が住んでいるのは東京Aブロックと呼ばれている小さな自治区だ。現在の日本はこの自治区の連合と言う形で政治機能を維持している。


 さて、この氷河期を終わらせたのは一つの事件。現代では『ルビーレインの日』と呼ばれている、ルビー輸送船の事故だ。太陽からそのエネルギーをたっぷり掠め取ったルビー輸送船。その数隻がどう言った間違いからか衝突し、壊滅。その結果としてその船が委ねられた蓄えに蓄えたエネルギーを放出、地上に数百万を超えるサンルビーの雨を降らせたのだ。

 サンルビーは高エネルギー結晶体であり、それが地上に炸裂、結晶体の崩壊に基づきゆっくりとそのエネルギーを解放していった結果、激しく緩やかなエネルギーの放出により地上は、一気に砂漠化した。

 ある学者が言ったそうな。「幾ら寒さを我慢できなかったからと言って地獄の釜の蓋まで開けなくて良かっただろうに」と。


「人類は馬鹿だな」

「そうだな、紀元前から馬鹿だったんだからどうしようもない。馬鹿な子ほど可愛いとは言うが」

「ふはは」


 変な笑い声が出た。どうにもこの体は若いらしく、色々と敏感に反応してしまうので、持ち前の婆の感性は何処かに押しやられてしまっている。


「頭の中の整理がある程度ついたなら、次は体を慣らすか。依頼を一つこなしてきてくれ」


 依頼、か。頭の中に入れられているデータを一通り参照する。いよいよこの体を与えられた理由の一つ、「イーターハンター」をやらなくてはならないらしい。


「他に気になることも有るだろうが、追々な」





 カガミ博士に与えられた一室で、備え付けられていた大きめの鏡で見た私の容姿は、薄い金髪と言うか、亜麻色? の、髪に水色の発光しているくらい明るい瞳、白人かって言うくらいの白い肌をしていた。やんちゃしてた頃にも髪の色は抜いたが、それよりも薄い金髪だ。白髪が出ても目立たないレベルだ。

 白髪とか婆臭い発想は置いといて、その、こっ恥ずかしいが妖精のような見た目に砂漠に対応するためのフード付きの赤い、いわゆるダッフルコートを羽織っている。まるで絵本の中の赤ずきんちゃんだ。……可愛いのは嫌いじゃないけど。

 下は今回はブラウスにショートパンツ、暖かいサイハイソックス、そして太股にはホルスター。これがアンバランスなのに何か似合っている。

 錆び臭い地下、何か前世の東南アジアの市、マーケットのような景色を感慨深く眺めながら疎らな人の間を抜け、この地下から抜け出す唯一のポイント(と言っても数ヶ所あるので唯一地上に出られる手段と言うべきか)である長距離エスカレーターに入り、地上へ向かった。

 今は地面の硬い砂漠に立っている。砂漠の砂と言うのは水分量で硬さが変わるが、島国の日本の砂漠は水気が多く硬いのだ。


「若い頃は銃を撃つ事にも憧れたもんだが」


 中学生の見た目の私の呟きとしては些か滑稽だが、漏らさずにいられない。中二病を拗らせるには適当な外見だ。的に中たっていると言うべきか、中二病だけに。この辺りの駄洒落の発想が婆だな。

 右足側のホルスターから重い拳銃を抜いてみる。昔兄貴の漫画で読んだオートマグナムだか、デザートイーグルって奴に似ているな。小さい手には余りそうだ。この体は握力も半端じゃないから持てているが。


『君は初心者だから一番手頃な装備を整えさせて貰った』

「お安い原始的な兵器って事か」

『小型イーターを倒すには十分な威力が有る。至近距離で脳天にぶちこめ』

「ラジャ」


 耳に取り付けたSFチックな通信機で博士とやり取りしていると更に、こう、中二病が擽られるものがある。今から私は通称「アイアンイーター」を狩りに行く。

 私の体に予め入力(プリインストール)された記憶から知ったことだが、アイアンイーターとはその名の通り、鉄を含む金属やコンクリートをそれらの物質を収集する目的で食い荒らすナノマシン集合生物と呼ばれる、……分かり易い言葉を使うなら、モンスターの一種だ。

 その大きさは蟻のようなものから鯨のようなものまで様々有るらしい。今回の討伐対象は大きさは大型犬より少し大きいくらい、形はオオサンショウウオの、初心者向けの小型イーターだ。


『現地点に反応は無いが、マンイーターに遭遇すれば今の十分にイーターの知識を持っていない君にはかなり危険になるはずだ。このミッションで君の戦場に置ける戦える感覚を覚醒するつもりでいる。気をつけて、だが大胆に行け』


 カガミ博士の言い分が少し、気を付けながら大胆てなんだ、そう思ったら滑稽で、ちょっと含み笑いしつつ更に私の感性で分かりやすく一言返す。


「ラジャ」

『ブラジャー?』

「言ってない」


 中身が婆だからか、博士はかなり下ネタや駄洒落が好きなようだ。まあこう言う手合いをあしらうのは前世で居酒屋の客に来ていたハゲ散らかしたオッサンどもで慣れているけれども。

 と、私のこの体に与えられた尖った感覚、センサーに反応が現れる。こいつがアイアンイーター?


「居たぞ」

『アイアンイーターは基本的に人を襲うような事は無いが、痛みには反応する。一撃で仕留めろ』

「分かった」

『若貴時代か。我ながら古いな』

「千年位な」


 この博士も前世の記憶が有るようだ。流石に千年も前の相撲ファンな筈はないからな。若いのに異様に昔の力士に詳しい子とかもいるけど。


「ウル○も好きだったぞ。若いから知らないか?」

「ギリギリ千○の富士は知ってるよ。メチャクチャ強かったのに亡くなった時には若い子達が誰も知らなくて凄いショックだったな」

「分かってるな。同年代だったか」


 中身は似たようなもんだ。見た目は私が年上で、今回の人生を過ごした時間は向こうが遥かに上。複雑怪奇だな。

 それはさておき、この体の性能は凄まじい。先ず、目が良い。人間の身長で見やれる地平線ギリギリの四、五キロ先の地面を這う一メートル程度の個体が見えるのだから。更にはそこまでに到達するのに三分かかったかどうか。車でもここまで速く走れば周りに注意が向きづらくなりそうだが、そこも高性能。全てが見渡せてのんびり旅をしている気分だ。どうやら強化された反射神経の能力が半端じゃないらしい。

 欠伸をしながらターゲットに会敵、地面を蹴りつけ体を空中で高速で横回転させながらピンポイントで小型アイアンイーターの脳天を狙い撃つ。我ながら呆れるくらいの能力だ。そして体のコントロールもプログラムによってか、十年来使い込んだバイクの車体のように、いや、遥かにそれ以上に馴染む。


「最高だ」


 飾りの無い本心からの呟き。

 ガツン、と、体に響く銃の発する轟音と反作用の衝撃もこの体は上手に反らして緩和してくれる。後に残ったのは頭を失った鉄塊だけ。

 始めての狩りは、あっさりと終わった。


「くくっ……」


 どうにも年頃の娘の体は笑い上戸なようだ。箸が転がっても笑えるが、モンスターの死体が転がっても笑えるらしい。






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