レンタータさん
「メアさん」
フェルタさんの声にはっとする。気が抜けてだらしない食べ方をしていたら諌められてしまった。
気を落とす私にレンタータさんが肩を寄せ言葉をかける。
「いちいちこいつの文句に耳を貸す必要はないぞメア」
言い終わらない内にレンタータさんは料理を口に運び、見せつけるように顔をフェルタさんに向けながらクチャクチャと音を鳴らしだしてしまった。
「れっ……、レンタータ!」
震えた声を出すフェルタさんの顔は私の予想と異なり、苛立ちではなく恥辱に染まったものだった。
ずっとニヤニヤしながら口を鳴らしていたレンタータさんは、料理を飲み込んで嗜虐的に語りだした。
「こいつは上品ぶってるが、口ん中でぐちゃぐちゃになってく食い物を見て興奮する変態だからな」
「本当何ですか!フェルタさん」
驚きのあまりフェルタさんに強く声を投げかけてしまった。
「違う!嘘だからレンタータの言うことを信じないでくださいメアさん!」
しかし否定するフェルタさんがあまりに必死すぎてその言葉を素直に信じ切れない私に、レンタータさんがフェルタさんを見ながら言葉を紡ぐ。
「メアもしてみろ。俺みたいな如何にもな奴がするより、お前みたいに普段行儀良いのがやった方がフェルタも喜ぶんじゃねえかな。ほらこうやって…………」
そういってまた音を鳴らしだしてしまった。そしてフェルタさんは顔を俯けテーブルから離れていってしまった。
「レンタータさん本当?」
「ああ本当。だって二人で食ってる時、あいつ俺の口元じっと見てるもん」
レンタータさんの根拠で結局どちらを信じればいいのか分からなくなったが、とりあえずフェルタさんの傍へ行って気遣う。
「私はどちらであっても気にしないから安心してください」
声にしてから、これでは私がフェルタさんの言葉を信じていないように聞こえることに気付く。
「本当に違いますから……、ただ少し羨ましかっただけです」
「羨ましかった?」
「行儀作法なんて気にしないレンタータの自由さが、少しだけ」
一応納得したけれど、でもレンタータさんが口を鳴らし始めたときの恥ずかしがり方は、それだけじゃ説明がつかないような。