想い
青仮面との戦いに勝利し、連れ帰ったソラは青仮面の正体を知る
目を開けるといつもとは違う天井の色。
(あれ?私…さっきまで科学族のやつと戦って…)
ふんわりとした布団のぬくもりに心地よさを感じつつもいつもとは違う風景に不安を覚える。身を起こそうとすると重みを感じた。布団の上にさながらダンゴムシのように寝ている人物がいた。
「あ、あのー…」
起きない。
先程より大きな声を出してみる
「すいません!」
起きない。
どうしようもないのでツンツンとつついてみる。
起きない。
思いきってユサユサと揺らしてみた。うめき声のような声が聞こえる。
「ん?…んー?お!起きたか!今日もいい朝!おはよう!」
「お、おはようございます…」
状況をあまり理解できずに戸惑いつつもそう答える。
「元気そうで、よかったよ!殺しちゃわないでほんとによかった~!俺が女の子に弱くてよかったね!」
(殺しちゃわないで…?)
寝ぼけた頭を必死に働かせて記憶を思い出させる。そして、気絶する前に起こった戦いをすべて思い出した。
「なっ!お、お前は!」
驚きと怒りとが混ざった感情を吐き出しながら言う。
「ようやくお気づきでしたか~。っというか初対面の人にはまず名前を言って、名前を聞くのが筋ってもんじゃないの~?」
正確には2回目だけど、と呟きを加える。
「ふざけないで!敵の捕虜になるなんて屈辱…!」
勢いをつけて立ち上がろうとする。しかし、ジャラっと音がする。彼女が足元を見ると鎖がついていた。
「え!?は……!?」
不敵な笑みを浮かべた顔が目の前にあった。
「ふっふっふっ!残念だったな!お前の自由はすべて奪ったぞ!俺と一緒にいろんなプレイを……」
ソラのセリフを遮るようにバチンッツと音がする。
「いってぇぇえー!!!ビンタしないでもいいじゃんかさぁ!!いや、でも美人のビンタというのもまたいとをかし!」
と真顔で言う。
「あなた、本当に最低です!」
うっすらと目に涙を浮かべて彼女は言った。
「まぁまぁ、落ち着いてよ、看病したのは俺なんだしよー感謝されることはあっても、なんでそう怒られないといけないんだ!」
彼女はそういわれて確認のため体を見る。体のあちこちに包帯が巻かれていて確かに看病の証拠はある。
「……確かに、それはそうですけど…」
そう言いつつ服に目をやる。違和感に気がつく。何が違うのか、そう思いながらズボンをみると、彼女は急に赤くなった。
「あ、あ、あなた!服が変わっています!」
「あー、それなら着替えさせたぞ?つーか初対面の人には名前をきいてよ…以下略!」
「な、なら、私の体を…!」
「おーすみずみまで、じっくりと、しっかりみたぜ!☆」
「あなた!本当に最低です!これだから科学族はっ!」
顔を真っ赤にしている、耳まで真っ赤だ
「おいおいそれ、固定観念だぜ?科学族だからとか魔法族だからとかで人間かわんねーよ」
急に真面目な顔でソラはそう言った。少し怒りの感情も含まれているように見えた。そして、はぁーっとため息をしたあと、急に顔を上げて、澄みとおった目を向けられる。少し心臓がドクンっと音をたてる。
「な、なんですか!??」
(ヘラヘラしているかと思えば、がらりと雰囲気を変えてものをいったりして…)
「いや?そんだけ元気あればだいじょぶそうだね。んじゃ、行こっか!足枷は外しといたから!」
「え!?どこにいくのですか?」
「え?いや、外に?」
「敵である私を外にだすのですか?逃げ出しますよ!?」
そういって男をみるとニヤニヤしていた。かと思うと急に真面目な顔になる。また心臓がドクンっと音をたてる。その真面目な顔から目を話せない自分がいた。
少し間があいて男がゆっくりと近づいてくる。顔に少し血が昇っているのを感じつつも目をそらせない。そうしていると男の手がゆっくりと自分の頬に手を当てる。そして優しい笑顔を見てせ…
「逃げ出す?俺はお前をずっと見てる、離さない。絶対に逃がさないから…」
心臓が大きく音をたてる。ドクンドクンと爆発したかのように動き始める。足の指先まで熱いと感じる。
「な、なにいってるんですか!気持ち悪いですよ!」
そう言うと男はけろりと表情を変えた。
「やっぱそっか~そーだよね~。これで女の子が落ちるって聞いてたんだよね!せっかくこんな美人がいるんだから落としたいよね!」
(び、美人…)
そこに嬉しさを否定できない自分がいた。恥ずかしさのあまり下を向いてしまう。顔を会わせれない。
「あなたがなぜ助けてくれたのかはわかりませんが、とりあえず感謝はします…」
「あ!もしかして照れてる!?」
「て、照れてません!」
「ちぇっ、まぁ、いいや!はやく行こうよ!そして、あなたじゃないでしょ!もう!俺の名前はソラ。ソラ・スカイよろしくっ!」
「わ、わたしの名前はリン。リン・ガラントと言います。」
「ほぉー、ガラントか!なんか男みたいな名前だな~」
するとリンは少し悲しそうな顔を浮かべた。
「よくいわれます…」
その顔を見てソラはびっくりした表情を浮かべる。リンの顔をじーっと眺める。居心地が悪いのかリンはもじもじしている。耐えきれなくなりリンが口を開く。
「あの~なんですか?」
ソラはふむーといったり、うむーといったりして顔をしかめて言った。
「いや、お前さ?静かにおしとやかにしてたらそうとうかわいいと思ってな~」
その瞬間リンは顔を真っ赤にする。きっとこの光景を見たら100人中99人は(…あ、これは恋に落ちてるな)そう思うだろう。リンが口を開きかけた瞬間ソラが話を始めた。
「まぁ、いいや、お前を外に出したのは紹介したいやつらがいてな!俺の親友とその連れだ!」
リンは疑念の表情を浮かべる。
「…?なんども言いますが私は敵ですよ?」
「いいんだよーそんなのは」
「ですが…」
「さっきも言ったじゃん。俺はお前より強いから心配しないでも逃がしはしないって」
その時の事を思い浮かべたのかリンはうっすら赤くなりながらも
「私が言っているのはそういうことではなくて…」
と続きを言おうとしたとき、はぁーとソラが長い長いため息をした。
「なぁ?何を基準に敵とか味方とか決めてるの?国?肌の色?髪の色?人種?科学?魔法?いい加減にしてくれよ………いい加減にしろよ!!」
荒い声が響く。その表情、目付きにリンは恐怖を覚える。
「俺らはそんな意味のわからない戦いに巻き込まれて、人を傷つけ、傷つけられて…ハハッ俺なんか他人を殺してもなんも感じなくなっちゃったんだよ…豚を、牛を、鳥を殺すように人も殺せるんだよ。生物学的に共食いやらはなんら珍しくない。おかしいことでもない。でも人間的には狂ってるだろ?おかしなことなんだよな!」
直感で彼の真の思い、真の顔はこちらなんだと。リンはそう直感した。
「だから、俺はどんなに人を殺せる。けど、友達は殺されたくない。ちゃんちゃらおかしいよな…その元凶はこの戦争だ…止めるためにはもっと人も殺す。けどそんなこと俺も嫌だ…だからさ、リン…敵とか味方とかそんなこと言ってないで仲良くしてくれよ………」
彼の過去に何があったのかわからない。けど差し出された手にリンは手を伸ばす。地塗られた手であったけれどリンは掴むことを怖れなかった。そうしたいと思ったからだ。
「俺は君でさえ、なんのためらいもなく殺そうとしたんだ…」
リンはその悲痛な表情、追い詰められた目に耐えきれなかった。
「大丈夫、私は大丈夫です。」
「…うん…ありがと」
手を握った状態でそのまま時がたった。殺したくない、しかし殺さなければならない。きっと彼は優しい人だとリンは思った。そしてやさしく声をかける。
「落ち着きましたか?私はもう敵とか味方とかそんなこと言いませんから!」
「落ち着いた…わかってもらえてよかったよ…」
ソラはゆっくり顔を上げてリンを見る。
「やっぱりそんな顔してるとかわいいんだよな
。いや、もったいないもったいない。君は残念すぎるよ!早とちりしたり、早とちりしたり、すぐビンタしたり……」
リンは目を見開く
「人がせっかく慰めてあげてるのに!!!!!」
その言葉の後、空まで響くくらい大きなビンタの音がした。
「っつ!いってぇー!!!!!」
「もう、知りません!先に行ってます!」
リンはソラの先を行こうとする
「きみー?道間違ってるよ~?」
顔を真っ赤にさせたリンがズンズンと歩いてくる
そして、なにも言わずに先程とは反対側の頬にビンタをする。
「おーーーーーう!!!いったい!すごいいたい!」
「はやく行きましょう!」
魔法族と科学族。憎みあい、忌みあった2つの種族の人物が友人と呼べる存在になった、世界で二回目の瞬間であった。
恋愛とアクションをうまく混ぜていきたいと思っています!