第二の敵。【さようなら……】
「宣言しよう……
君はただ力の差を感じながら、自分の無力さにうちひしがれて
絶望のうちに死んでいくだろう」
「そんな、こけ脅しにはビビらないわよ!」
「脅し? 脅しじゃないよ。
これは君の確定未来。
さぁ、先手は君に上げよう。」
「な、なめてんじゃないわよっつつつ!!」
ララがそう叫び放った銃弾は、先程よりも、はるかに力強く、はるかに数の多いものだった。
「はぁ~、同じ手ばっかり…… 」
確かに先程とは格段にレベルアップしている銃弾であったが、しかし、先程と同じように空間に喰われていった。
「まぁ、こんなものよね~。 けど、私、実力の半分も出してないからね」
「俺も実力の…… どのくらいだろう。 めんどくさー……」
「これで終わらせるっ!!」
「楽しみだなぁ…… 君の終わりでないことを祈るよ…」
ララはもう一丁、プラズマ砲を取り出し、構える。
「はぁああああぁぁあっっつ!!!!!」
大砲の、いや、大砲よりももっと、もっと大きい音が部屋を震わせる。
銃口からでた、光は赤色をしていた。
光が通った空間は、摩擦により、電気を散らし、光に放電が絡み付いた。
「これは…… ヤバっ」
シャインはブラックホールをさっきの倍以上の数、大きさを3倍以上のものを繰り出した。
「全部… 潰すっ!」
シャインのその言葉通り、迫ってくるいくつもの銃撃は空間に喰われている。
それでも、数が多すぎる。
シャインのブラックホールに隙間ができた。
そう。
これこそが彼女の狙い。
赤い銃撃でシャインを仕留めるのではなく、
それによって生まれた隙をつき、シャインを仕留める。
彼女は自らの最高の技を、奥義を囮として使ったのである。
「うぉおおおおおお!!!!!!!」
銃撃の対応で気をとられていたシャインは、
ブラックホールの隙間から飛び込んでくるララの攻撃に反応が一瞬遅れた。
しかし、その一瞬はベクトルを着た彼女が彼を仕留めるのに、充分すぎるほどの時間であった。
「ヤァアアアっっつつつ!!!」
彼女が突き刺した刀はシャインの胸を貫いた。
「や、やった! 倒した!!!!!」
勝利を確信した。
その剣は、確かに致命傷となる箇所を貫いたのだ。
……だが、
「あぁ、そうだった。 触れるの定義をどうするかで色々変わってくるねっ」
即死しなければ、なっていなければおかしいのだが、シャインは声を発した。
「な、なんで???」
疑念と不安と恐怖が彼女を包み込む。
「君はいつから俺と戦っていた?」
「な、どういう……」
彼女は理解できない。
「いつから、俺を俺として、攻撃していた?」
「だ、だから何を!」
「君が認識する俺はどこにいる?」
刀で胸を貫かれたシャインは彼女をみて、言った。
「俺は……」
彼女は驚くべき光景を見た。
自分が戦っていた、相手が。 殺したはずの相手が、
紙吹雪を散らすように光を放って崩れていく。
「媒質操作。幻惑之姿。」
そう最後に呟いて、シャインは消えた。
「ど、どういうこと!?」
「その答えは……」
シャインの姿を目視できない。
が、確かに声は聞こえた。
「ここにある」
「……え?」
━彼はどこに?
そう言おうとした、時、彼女は自分の胸から刀が出てくるのが見えた。
いや、背後から刺されたのだ。
「この魔法は空気の屈折率を変え、自分の姿を消したり、写し出したりすることができるんだ。」
「ゴホッ」
口から血が止まらない。
「君の敗因は、まず偽物を見破れなかったこと。 偽者に攻撃を食らわせ、魔法を強制解除させることが出来なかったこと。」
シャインは苦しそうにしている彼女の頭に優しく手をのせる。
「ごめん。 苦しくして……。 さようなら」
彼女の体が、糸の切れたようにストンと落ちる。
「せめて安らかに……」
━この戦いの数10分前━
「俺より年下じゃねーか!! なぁ? 俺に殺られてもいいってことだよな?」
「その覚悟はある。」
明らかにソラの顔つきがかわる。
「……ったく、最近のわけーやつは恐ろしいわぁ」
「戦わずにそこを通してもらうことは……」
「できねぇわな」
「できないね」
ソラは二刀流である。
ジョーカーと戦うため、今まで戦ってきた経験から導き出した自分に最も合う戦いかた。
右手は刀を下向きに握り、防御用に。
左手は刀を上に向け握り、攻撃用に。
役割を完全に分けることで反射的に相手の攻撃を捌き、反撃することが出来るようになった。
「やれやれ…… いったいどんな戦をすりゃ、んな殺気まとえんだよ……」
━10代にしては恐ろしい……
ソラは右手を左手を顔の前に持ってくる。
「時間が惜しい。 早く始めよう。」
ソラは臨戦体勢に入る。
腰を落とし、いつでも飛びかかれるような体勢だ。
ギシギシとベクトルが音をたてる。
音をたてたのだ。
鎧とベクトルは違う。
鎧は着るもの。
ベクトルはいわば着られるもの。
普通の人間は、自らの能力を上げるためベクトルを着ている。
つまりそれは、ベクトルに自らを支配されること。
ベクトルに利用されることを意味する。
人々は気づかぬうちに依存している。
しかし、ソラは違う。
自分の運動能力にベクトルが付いていけていないのだ。
ソラはベクトルを支配し、利用した。
それが如何に驚異的なことか……
しかし、相手も相当の使い手。
━全力を出さなければ即死する!
そう思った。
しかし、それは、その決断は……
「いくよ……」
「おう!」
二人は間合いを一気に近づけて、激しい攻防を始めた。
魔法ズルい




