覚悟
「はいっ!出来ましたよ!ソラ!」
ほんの少し前、ソラの家についてすぐリンは台所に入った。よっぽど昼の寿司と天ぷらが気に入ったのだろう。
「天ぷらとお寿司です!」
どんっ!と机に鍋がおかれる。
「え!?天ぷらと寿司だよね?」
「はい、そうですけど?」
(なんで鍋がでてくんだよぉおおおおお!!!!
いつから寿司は鍋で出来る料理になったんだぁぁあああ!!なにこれ!なんでふたを開けるというイベントが発生するんですか!?魔法!?魔法か!これは彼女の魔法なのか!?)
超高速で脳内ツッコミが始まる。
「ほら、早くふた開けてくださいよ!!」
リンはウキウキといった様子である。
「あ!ちょっと待って!!ほら、お寿司は少し時間をおいて食べた方がいいって言うしさ!(←ウソ)」
「そうなんですか!!わかりました!」
そういってイスに座る。
(よし!落ち着け俺!よく考えよう!この危機を回避する方法を。
まずプランAだ。ふたをあけて中身をいただく。いや、無理無理無理無理!!まず、なんで天ぷらとお寿司がひとつの鍋にはいってんだよ!!
次にプランB!ここは逃げる。これは…いや、どうなんだろうか、リンがせっかく作ったのに男としてそれは…
プランCは転んだふりをして鍋を倒す!お!これいいな!ん?待てよ、あれ肌に触れたらどうなんだ?溶けるよな!おれ溶けるよな!)
そんなことを考えている間にリンは皿とスプーンを用意する。
(もう、これ中身、液体なのね………)
「もう、いいですよね?ソラ!開けてください!ビックリしますよ~っ!」
ソラは覚悟を決めた。
「わ、わかった!」
(ビックリしないやつ、いねーよ!)
パカッ!静寂を切り裂く空気音。ホカホカと煙が上がる。
「おいしそうだ………ね………うん」
そんな間にもリンはテキパキと未確認液状物体を皿へと継ぎ分けていく。
「それじゃあ食べましょうか!」
「………うん」
ソラは恐る恐るスプーンで未確認(以下略)をすくい口へと運んでいく。その未確(以下略)は自らが命を持っているようだった。ゆっくりと口に流し込む。
その未(以下略)はドロリと食道をつたっていく。
み(以下略)が胃に到達したと思うと(以下略)はボンッと音をたてた。
「す、すごい美味しいよ」
ソラは遠くなる意識を辛うじて保ち愛を込めて感想を言った。
「おかわりいっぱいありますからね!」
リンはそう言うと台所からもうひとつ鍋を持ってきた。
(寸胴鍋ぇぇええええええええ!!!!?????)
約三十分後、十三杯目になる液体をソラは無言で食していた。そんなソラをリンはちらり、ちらりと盗み見みて、なにか話したそうにしていた。ソラはそんなリンの視線を感じているのだが
彼女から話しかけてくれるまで待つことにした。
そして、十六杯目に突入したころリンはぽつりと口を開いた。
「あの、ソラ??」
ソラはようやく話しかけてくれたことにほっとした。
「どうしたの?」
「その…今日シャインさんに聞いたのですが…」
そう言うって朝、シャインに言われたことを、青いベクトルのことを話始めた。
「ふ~ん、それでそれがどういうことなのか俺に聞けっていってたの~?」
「はい、続きはソラ、本人に聞けと…」
ソラは宙を仰ぎ見てしばらく考え込む。
「うん!別にいいよ、大したことじゃないんだけどね、実は俺が子供のころ…」
そうして、両親が捕らわれ自分が殺したこと。そして、殺させた元凶である二人の男のこと、牢獄から逃げ出しジョーカーを探すため魔法族の領域でさまよっていたこと、そして、そこでシャインに出会い、一年の時を経て、ここにきたこと、そのすべてを話した。
「そ、そんなことが…」
「ま~そんなとこだよ」
リンは驚いていたもののひとつ疑問に思ったことがあった。
「シャインさんと出会ったあとの一年間は何をしていたのですか??」
それを聞いてソラはほんの少し動揺した。
「まぁ、それはあんまり言いたくないかな?」
これ以上はこのことについて追求するなと言った感じであった。
「それでシャインさんのお話はなんだったのですか?」
リンは本題を聞いた。
「俺の両親を捕らえた二人の男のうち一人はジョーカーと名乗っていたから見つけるのは簡単だったんだ、でも、もう一人のやつが見つからなくて、それでシャインにずっと探しててもらってたんだけど…その男が見つかったんだ」
ソラが感情を抑えているのが伝わったのか少し遠慮がちにリンは聞いた。
「だ、誰だったのですか?」
ソラはゆっくりとはきだすように答えた
「そいつは科学族の最高責任者だったんだ、つまり、族長ってこと………灯台もと暗しとはこの事だね」
リンはそれを聞いて先程のソラの話を思い出した。
自分は復讐のために今を生きてきたと。つまり、それが意味するのはリンでも理解できた。
「つまり、科学族の長であるその男を殺すと?」
「そうだね」
「魔法族のジョーカーも殺すと??」
ソラはリンがなにを伝えたいのかわかったようだった。
「そういうことになるね」
リンはその返事を聞いて愕然とする。
「それは………科学族と魔法族、同時に敵対することに………」
「そうなるね」
「それは世界中を敵にまわすことになりませんか?」
ソラとシャインもそれと同じことを思った。でも、二人はすぐに同じ答えを出した。ソラはゆっくりと息を吸い、その答えを口にする。
「そうなるね、でも、それでもこの憎しみを止められない。もし、科学族のすべてのひとが族長についたとしても決意は変わらない。それでもし、その人たちが俺らと戦うと言うのなら…」
ソラはリンをまっすぐにみつめて低く冷たい声で言った。
「俺たちは世界を殺す…」
爆弾料理編はこれにて、おしまいおしまい




