かわりになってよ
起きるとひどい睡魔に襲われた。
となりには幼馴染兼、恋人の菫が服を着ないで寝ていた。
こんなことは日常茶飯事で、特に気にすることはなかった。
菫は僕が幼稚園のころからの仲で、まあまあ仲が良かった。小学校でもそこそこ遊んでいた。家族ぐるみの付き合いもあり誕生日も、クリスマスも一緒に祝ったりしていた。半ば僕らは兄妹のような関係だった。
しかし、僕の友達が死んでからは僕は菫を避けるようになった。そのころには、菫と帰ったりしていると同級生からからかられてた。もう死にそうだった僕は誰とも会いたくなかった。からかう友達も、兄弟のような友達も。
僕が中学3年生のころその関係も変わった。菫の親が死んだのだ。不運な交通事故だった。その訃報を知ると、親はすぐに僕を連れて病院に行った。
菫は泣いていなかった。
いや、涙は流していたのだろうが、もう枯れたように無表情だった。親はいろいろと事情を聴きに部屋をでていった。僕は残って菫を見ていた。
菫はしゃべらなかった。僕が少し話しても生返事だけだった。現実が夢のように感じて、これが現実かどうかわからないようだった。
僕は彼女を病室から連れ出した。親に頼んでタクシーを呼んでもらって菫を家に送った。
家について、僕が家に帰ろうとするとか細い菫の声がした。
「抱いて」
僕は、彼女の部屋に行って、キスをした。彼女の眼は人形のようだった。
それから僕らはこんな生活をしている。
まるで、お互いを誰かの代わりにしているように。




