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仕切り魔様の憂鬱  作者: 森埜林檎
第一章
5/13

05

 

 東堂さんの人柄に感銘を受けた私は、自分でも現金だとは思うけど、一気に気を許してしまった。


 マスターの先輩って事は、一番上の兄と同い年位だろうか。うちの長男もクセの強い人だし、何だか年の割に可愛い人だと思ってしまう所も似ている気がする。

 そう思うと益々親しみを感じてしまって、自然と笑顔になってしまうのは致し方無いと思いたい。


 それからは暫くお仕事大変じゃないですか、なんて世間話しをしたりして。マスターからも若い頃の失敗談なんかが飛び出して、話しは大層盛り上がった。

 東堂先生も、それらを嫌な顔一つせずに答えてくれるものだから、私はついさっきの最低な元彼との事を少し忘れていられた。


「あ、やだ! 私ったら舞い上がっちゃって、こんな時間まで先生をお引き止めして……」

「あ、いや……」


 気づけば、あれから一時間以上が過ぎていた。

 マスターもごめんなさいと、これでお暇する旨を伝える。


 出しっぱなしにしていたコスメポーチ等を片付けて、財布を持って立ち上がろうとした時だった。


「あのっ!」

「はい?」


 東堂先生が腰を浮かせて何か言いかけている。

 今日一番大きな声だったので正直驚いた。

 どうしたんだろうと座り直して言葉を待ってみるが、当の先生は酷く困惑した顔で口を開いて閉じてを繰り返している。


「先生っ、ほらちゃんと言わなきゃ」

「ん……いや、でも……」

「アナタ切羽詰まってるでしょうが。今回みたいに倒れただけで済めばいいけど……」

「えっ! ちょ、ちょっと先生倒れられたんですか? 一体何の話しです?」


 穏やかじゃない話しに私も思わず腰を浮かせる。

 それでも話し渋る先生をマスターが肘で突いて先を促し、更には私の問い掛けるような視線を感じたのか、東堂先生はフッと息を吐き出してやっと重い口を開いた。


「……吾妻さん。こんな事をお願いするのは失礼だと分かっていますが……。

 僕の生活を仕切って貰えませんか?」


 そう言って、東堂先生は真剣に私を見つめた後、頭を下げた。


「えーっと……」


 正直、そんな斜め上方向のの話しだとは思ってませんでした。


 思ってませんでしたが、取り合えず。



 先生。正気ですか?


 


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