表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LIFE GOES ON・・・  作者: shion
第六章 why・・・?
29/35

4

「なんで?なんで飯田さん!」

 さつきはオフィスで大声を上げた。みんなが、一瞬彼女の方を見た。

 

「なんでじゃねえ。俺はもう決めたんだ。」

 飯田がいたわる様な、でもきっぱりとした口調でそう言う。

「私とはもう組めないなんて、何でそんな事言うの?」

 さつきはすがる様な目をして言う。

「こないだも言ったろ?俺を卒業しろって。それに・・・」

「それに何よ?」

「俺もだいぶ年をとったよ。体だって、こんなんだし・・・そろそろもう少し、楽な仕事をさせてもらうよ。」

 飯田は優しく微笑んだ。

「そんな事言ったって・・・飯田さん組んでくれないんじゃ、私どうすればいいの?」

 さつきは尚もすがっている。

「苑田がいるだろ?」

 飯田は諭すような眼をして言った。

「彼なんかじゃダメよ。」

「ダメじゃねえ。俺、お前に病院で写真選ばしただろ。」

「うん。」

「あの時、お前が一番に選んだのが、奴の写真だ。そいで次に選んだのが俺の・・・・そういうこった。」

 飯田は優しい瞳で見つめている。さつきは戸惑った。

 

 彼じゃ・・・彼じゃダメだよ・・・

 

「編集長には俺から話しておいたから。これからは、あいつと組んで頑張るんだ。」

 飯田の優しいけれど、取り付く島のない態度に、さつきは黙るしかない。

 

 なんで?なんで・・・彼となんて、気まずいのに・・・どんな顔して会えっていうの?

 彼の気持ちを、聞いてしまったというのに・・・・

 そしてそれに、応えられないっていうのに・・・

 

 

 次の日、さつきはブルーだった。

 今日は彼との取材・・・・気が重い。どうしよう・・・

 そんな事を思っていると、柊が現れた。

 

「さつきさん、そろそろ行こっか。」

 彼はいつもの様に笑顔でそう言った。彼の態度に、さつきは戸惑った。

「うん・・・」

 複雑な思いで、彼の後へと続く。

 どういう・・・つもり?

 

 

 彼は今日もバイクで来ていた。私にヘルメットを軽く投げる。

「バイクで行こうよ。」

「うん・・・」

 

 私は、彼の体にしがみ付きながら、ふと思った。

 この人は傍にいてくれる・・・手を伸ばせば、いつでも届くところにいてくれる。

 そしてその感触は、こんなにも温かい・・・・

 彼は今、どんな思いでバイクを走らせているんだろう。

 私とこのまま組めといわれた時、どう思ったんだろう・・・。

 こんなうやむやで曖昧な関係を、どう捉えているんだろう・・・

 どんな風に、接していくつもりなのだろう・・・

 その日の取材は、心そぞろなまま、終わってしまった。

 

 

「ちょっと俺んち寄ってよ。帰り送ってくから。」

 

 彼女を後ろに乗せ、エンジンをかける前に、俺はなるべく明るく、でも思い切って言ってみた。

 

「え?」

 彼女は戸惑っている。今日一日ずっとそうだった。

「別に飯作れとか、そんな事言わねーから。渡したいモンがあるだけ」

 尚も明るい口調で続けた。

 

 だってそうしてやるしかないじゃないか。

 飯田さんは頑張れって言ってたけど、それで俺たちを組ませたんだろうけど、俺は彼女を困らせたくない・・・

 俺が想えば想うほど、彼女はキズ付いてしまうんだ・・・

 余計、かたくなになってしまうんだ・・・

 俺の入る余地なんてどこにもないんだ・・・       

 戸惑っている彼女を見て、すごく意外だったけど、だから尚更俺が何事も無かったかの様に振舞ってやるしかないじゃないか・・・

 

 それでも俺は、あの写真だけは渡そうと思っていた。

 どうしても、渡したかった。

 

「でも・・・」

「たのむよ、捕って食ったりしねーから。」

 彼女はうつむく。

「じゃ、決まり!」

 彼女の返事を聞かないで、俺は半ば強引に、バイクを走らせた。

 

 

 

「てきとーに座ってよ。」

 俺は何気ないフリをした。

 ほんとは心が痛いし、俺と気まずそうにしてるあなたを見て、何より傷つくけど・・・

 明るい自分を演じる事に、メチャメチャくじけそうだけど・・・

 彼女はソファに腰をおろした。ケーカイしてる感じが、ビシビシ伝わってくる。

 俺は再び、胸が痛んだ。

 

「これ。」

 そんな気持ちを振り払い、写真の入った封筒を彼女に渡した。

「うん・・・」

 彼女が中身を取り出す。それを見て、彼女が驚きの表情を浮かべる。

「柊くんこれ・・・」

「そ、あの日、俺が撮った写真。」

 それは夕焼け色に染まる海をバックに彼女が最高に美しい微笑みを浮かべた写真。彼女が写真をめくっていく。                  

「こっちは・・・」

「うん、初めて一緒に取材した時、美怜さんにツッコまれながら撮ったヤツ。」

 俺は少し笑った。ほんとは悲しかったけど。彼女もクスッと笑った。

 

 彼女はしばらく写真を見ていた。

 心なしか、彼女の張り詰めた空気も、和らいだ気がする。

「ありがとう、柊くん。実物とは全然違う。私じゃないみたいに、キレイに撮れてる。」

 彼女が瞳を穏やかに輝かせながら言った。

 実物のあなたも、すごくきれいだよ・・・俺は、心の中でつぶやいた。

 

「さつきさん、自分で気がついてないかもしれないけど、あなたはまだ、こんな表情、出来るんだよ。」

 

 今の俺に言える精一杯の言葉。俺が、どうしても言いたかった言葉。

 彼女は俺を見つめ、やわらかく笑って、そしてうつむいた。

 

 俺、やっぱりあなたを愛している・・・あきらめるなんて、出来そうもない。

 俺の人生に、色を落としてくれたこのかけがえのない人を、そう簡単にあきらめられるはずない・・・彼女を想うだけで、こんなにも心がふるえるから・・・

 それは何より、生きていると実感できる事だから・・・

 

「俺、あきらめない事にしたから。」

「え?」

「さつきさんの事、あきらめない。」

 きっぱりと言った。困らせるかもしれない。だけど、そんな事ムリだって解ったから・・・

 

「どうして?私みたいな4つも年上の、しかも未亡人なんか・・・あなたなら、いくらだって若くてキレイな娘、見つけられるでしょ?」

 彼女がいつもの調子でかわそうとしている。

 だけど俺の想いは、その辺のハンパなヤツとは違う。

 

「俺は見つけたのはさつきさん。他の女なんか、どーでもいい。」

 俺は真剣な眼差しで、彼女を見つめた。

「柊くん・・・」

 彼女は俺を見つめている。

 

 この人が欲しい。何としても、欲しい・・・

 やべぇ・・・すんげーキスしたくなってきた・・・捕って食ったりしねーって言ったのに・・・

 彼女の笑顔見たら・・・彼女ケーカイしてるってのに・・・

 俺の理性よ・・・たのむ、ふんばれ。ふんばってくれ・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ