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LIFE GOES ON・・・  作者: shion
第六章 why・・・?
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2

 俺はこの間の取材の写真を渡すため、オフィスに来ていた。

 すんげー気が重かったけど。でも、彼女の姿はなかった。

 

「あれ?水野さんは?」

 俺はオフィスの1人に聞いてみた。

「今日は休みですよ。知らなかったんですか?ご主人の命日だそうで」

 

 命日・・・か・・・

 俺は、俺が撮った、彼女の写真も持って来ていた。彼女に渡そうと思って。

 俺が今までで一番キレイに撮れた写真だから。

 あの浜辺での、彼女の美しい姿。美怜さんとこで思わず撮っちまった写真も一緒に入れて。

 たぶんもう、彼女は本当の心を俺には見せてはくれないだろうから。

 何事も無かったかの様に、振舞うつもりだろうから・・・

 これは俺なりのケジメだった。

 どー考えたって、こてんぱんにフラれちまったからな・・・

 だけど、あなたはまだ、こんなにも美しく、そして無邪気に微笑む事が出来るんだ。

 その事を、どうしても伝えたかった。

 写真はウソをつかねえ・・・後ろ向きにしか生きようとしない彼女に、その事を気付かせてあげたい。

 

 ふいに、飯田さんがオフィスへと入ってきた。

 みんなにニコニコと挨拶をしながら歩いている。

 すこしびっこを引いてるけど、退院して復活したようだ。

 すでに2ヶ月近くが経過していた。

 そうか・・・俺とさつきさんのコンビも、もう終わりか・・・

 彼女とのつながりも、全て途切れてしまう・・・

 俺を見つけ、飯田さんが歩み寄って来た。

 

「おう苑田!俺の代わりに色々悪かったな!」

 気さくに声を掛けてくる。

「いえ・・・元気になったみたいっすね。」

「おかげさんでな。お前、今時間あるか?」

 急な誘いに、柊は一瞬戸惑った。

「はあ・・・」

「俺が居ない間のさつきの様子も聞きたいから、ちょっと茶でも飲み行こうか。」

「はい・・・」

 

 そうは言ったものの、今は彼女の事を話せなんて、傷口に塩をすり込むようなもんだと柊は思った。

 

 

 

 二人は喫煙所に来ていた。他に人は居ない。彼とゆっくり話すなんて

 入社して以来だ。

 こういう人生の酸いも甘いも嗅ぎ分けた、みたいな人と話すのって、何かキンチョーする・・・

 

「さつきの仕事っぷりは、どうだった?」

 飯田がコーヒーをすすりながら話し出した。

「どうって・・・手際よく、テキパキとこなしてましたよ。すごく仕事が出来る人っすね、彼女。」

 そう言いながらも、胸が痛む。

「そうか・・思いあぐねたり、行き詰まったりしてる様子は無かったか?」

「いえ、そういうのはみじんも・・・」

「そうか。あいつ不安がってたんだよ、俺が居ないなんてって・・・。」

「そうだったんすか。」

「ああ。でもその様子じゃ、お前の写真もアシストも、よかったって事だろうな。」

 飯田が笑う。

「はぁ・・・あの、一つ聞きたい事があるんすけど。」

 柊は、前から気になっていたギモンを彼にぶつけた。

「何で飯田さんの穴埋め、俺を指名したんすか?」

「ああそれか?それはさつきが選んだからだよ。」

 飯田さんは、事も無げに言う。

「さつきさんが?」

「ああ、厳密に言うと、お前の写真をさつきが選んだんだ。」

「はぁ。」

「ここに採用するとき、テストで東京タワーの写真撮らせただろ?」

「はい。」

「俺は必ず同じ写真をみんなに撮らせるんだ。そして決める。

 その写真をさつきに病院に持ってこさせて、この中で一番好きなのを選べって言った。そしたらあいつは真っ先にお前の写真を選んだ。

 優しい感じがするって言って・・・俺は当然俺が撮ったのを一番に選ぶと思っていたから、びっくりしたよ。

 本人は誰が撮ったかなんて、知りもしねーんだけどな。」

「そうだったんすか・・・」

 

 俺はうつむいた。彼女は俺の写真を選んでくれたんだ・・・

 

「写真はウソをつかねーからな・・・撮った奴の性格や気持ちが出るんだよ。」

 飯田さんは伸びをしながら言った。

「そういや最近、お前の撮った写真見てねーな。ちょっとそれ、見してみろや。」

 飯田さんが俺の持ってきたグリーンの封筒を指差して言った。

「い、いやっ、これはいいっすよ。」

 俺は慌てた。こんな写真恥ずかしくて見せれねーよ、さつきさんなんだから。

 こないだの取材の写真はデスクに置いて来ちまったし・・・

「なんだ、いいから見せろ。」

「いや、いいっすよ。」

 俺の言葉をさえぎって、飯田さんが強引に封筒を取り上げて、そして中身を見た。

 

 あーあ・・・

 

「お前・・・これ・・・お前が撮ったのか?」

 飯田さんが写真を食い入る様に見つめたまま、言った。

「はい・・・」

 俺は恥ずかしさで一杯だった。

 だってそれは、さつきさんのオンパレードなんだから。

「お前、さつきに惚れてんのか?」

 彼はまだ写真から目を離さない。

「ぐげっ・・・」

 痛いとこを付かれ、俺は返事に困った。

「写真はウソをつかねーんだよ。」

 飯田さんが俺をジロッと見て、少し笑った。

「はぁ・・・」

「そうか、あいつ、こんな顔できるんだな。そしてお前はこんな写真が撮れる。よし!気に入った。お前、がんばれよ!」

 飯田さんが俺の背中を思いっきり叩いた。

 

 イテッ・・・

 

「もうフラレたっすよ・・・」

 俺は小さく言った。

 俺の言葉に全てを解かり切った様な目をして、飯田さんは言った。

 

「いんや、お前がんばれ。さつきは俺の娘みてーなモンだけど、お前なら許す。もうちょっと、がんばってみろや。」

 

 彼の言葉に、複雑な気持ちになる柊だった。

 

 飯田は思った。

 写真を見れば、この男がさつきに対して真剣な事はすぐに解かる。

 この男の性格や器の大きさも・・・。

 そして、この男の写真を一番に選んださつき・・・この男なら、さつきを任せられる・・・

 あいつのかたくなな心を溶かしてやってくれ・・・そんな願いを込めて、飯田は柊を、温かい眼差しで、見つめた。


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