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LIFE GOES ON・・・  作者: shion
第五章 his love
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 彼女のおかげで、俺は何とか元気を取り戻した。

 あの夜から、彼女は少し変わった。

 俺とさつきさんとの間には、今までとは違う“絆”みたいな物ができた気がする。

 どんな風に生きてきたかとか、お互いの事がたいがい言い合えるようになったし、何より理解しあえた。

 ただ、亡くしちまったダンナの事だけは、彼女はあまり口を開こうとはしなかった。

 

 

 今日も取材が始まる。今日は最近すごい評判のカジュアルフレンチレストランの取材だ。

 海老原 透っていう若手の青年実業家が、新しいプロジェクトとして始めた店だ。

 店と、その実業家両方の取材だ。

 オープンな雰囲気のそのレストランは、パリを彷彿とさせる様な感じで店内も明るく、料理も美しく、値段も手ごろですごく繁盛してるらしい。

 定休日をわざわざ選んでの取材だった。

 ガラリとした店内に、シェフが作った料理を支配人が運んでくる。

 俺は料理や店内の写真を撮り、さつきさんはシェフと支配人に取材をしている。天気も良く、光が差し込む店内はすごく美しい。

 そこへ、長身の洗練された身なりのイヤミな位にハンサムな男が笑みを浮かべながら入ってきた。

 

「どうも、水野さん。お聞きしていたよりも数段美しい人ですね。海老原です。」

 そう言って、眼をキラキラさせて男は彼女に名刺を渡した。

「あら、社交辞令でも嬉しいですわ。今日はよろしくお願いします。」

 さつきさんも物怖じせずに名刺を受け取り、自分の名刺を渡している。

「イヤイヤ本心ですよ。栗原にうかがったんですよ、あなたの事。それはそれは美しい人だってね。」

 海老原がスマートな物腰で微笑む。その表情は自信に満ち溢れている。

 

 ヤな感じのヤローだぜ・・・俺は心の中で毒づいた。

 

「ああ、栗原さんですか。確か2ヶ月くらい前取材しました。それでは取材の方、始めさせて頂きますね。柊くん、写真撮って。」

「ああ。」

 

 サラリとかわすさつきさんにナイスと思いながらも、ムッとしたまま俺は写真を撮り始めた。彼女がインタビューを始めた。

 

 

「それで元々は企業の建て直しを主としたビジネスを展開なさっていたあなたが、どうして飲食店経営に手を進めたんですか?」

「ああ、こういう仕事をしていると、成功する企業、そうでないもの、それが解かりきっているんでね。だったらどんな物が成功を収めるのか、それを造ってしまったほうが早いと思いましてね。」

 年のころは30代半ばだろう・・・大人の男の雰囲気をかもし出して、奴はさつきさんから少しも眼をそらさずに話している。

 

 なーんかこーいうタイプ多いよな・・・さつきさん口説く男って・・・

 前もそうだった・・・

 

 奴のあからさまな態度に、さつきさんは平静を装ってる感じだけどほんとは少し困ってるみたいだ。奴は今までの奴より数段キョーレツだ。

 一通りのインタビューが終わり、俺が器材を片付けていると奴が言った。

「水野さん、あなたの様にステキな女性を目の当たりにして黙ってる何て出来ない。

 今度、食事でも行きませんか?」

 奴の態度は自信満々だ。女を誘いなれてる感じだ。

「とんでもない。私なんてそんな風に言われる様な女じゃありませんわ」

 彼女がさり気なく口元に手を寄せている。

 

 指輪を見せているんだ。死んじまったダンナに、そうやって守ってもらってるつもりなんだ・・・この間も、気づかなかったけどそう言う事だったのか・・・俺は思った。

 

 さつきさんほどの女なら、そういう誘いも多いだろう。

 実際一緒に仕事をしてたって、取材先の相手は彼女を見ると、眼を輝かせる。

 そういう誘いや何かをこの人は、どんな風に振り払ってきたんだろう。

 せいぜい指輪を見せて相手に納得させる・・・か・・・。

 彼女はどんな思いで、その行為を繰り返してきたんだろう・・・

 俺は、そんな彼女をみて、彼女のけな気さに、切なくなった。

 

 海老原がチラリと指輪を見た。それは、俺にも解かった。

「いいや、是非とも一度、二人きりでゆっくりお話がしたい。」

 奴はしらじらしい態度で指輪の事など無視して尚も言う。         

 さつきさんは困った様に曖昧な微笑みを浮かべている。

 ただ、指輪は尚も強調している。

「ぜひ一度・・・」

「いえ、あなたほどの人なら私の様な女じゃなくても、他にいくらでももっとステキな女性がいらっしゃるでしょうに。それに女性に不自由しているようには見えませんけど。」

 さつきさんの笑顔はもはや引きつっている。いつもはサラリとかわす彼女だけど、さすがにここまでしつこいと、そうも行かないようだ。

「いやいや、私の方にも選ぶ権利があります。私はあなたの様な女性が・・・」

 俺は奴の言葉や態度が、存在自体がムショーにムカついた。

 

 俺が守ってやる。指輪なんかじゃない、今ここに居る俺が。

 

「さつき、次の取材あるから行くぞ。」

 俺は奴とさつきさんとの会話に割って入って、彼女の手を引いた。

「うん。」

 彼女が助かったという表情をする。

「ちょっと待て、今俺は彼女と話をしている。」

 行こうとする俺達を、奴がさえぎった。

 その眼は冷淡で、そして俺をバカにしてる様な色を浮かべている。

 いつもの俺ならカーっとなって言い返していただろう。

 だけど、そんな奴の目をみていたら、妙に冷静な気分になった。

 

「申し訳ありませんがここには、あくまでも仕事で来てるんです。あなた程の人なら、ビジネスとプライベートをきっちりと割り切って考えてるんだと思ってましたけど、そうじゃないんですか?」

 俺は自分でも驚くほど滑らかな口調で言っていた。こんなイケスカねーヤローにだけは引けを取りたくない。そして何より、さつきさんを守ってやりたい。

 奴がニヤッと笑った。

 

「君は見た所、私よりだいぶ若そうだけど随分としっかりした事を言うんだなあ。」

 

 挑発してるんだ。だけどそんな手には乗らない。

 

「褒めていただいてどーも。あんたは俺より10は年上に見えるんですけど、大人な人だろうから、彼女が困っているのも解かりますよねぇ?」

 遊びなれた感じだ。同じ男だからすぐに解かる。

 

 この人にそんな気安い想いで近づいてくんじゃねえ・・・

 

 俺は眼で奴にそう言ってやった。

 奴は俺の眼をじっと見て、そして軽く笑った。

「そうか・・・解かったよ。確かにちょっと、スマートじゃなかったな・・・」

 奴は俺達の前から、体を退けた。

「それじゃあ俺達、これで失礼します。今日はどうも有難うございました」

 俺はさつきさんの手を引いて店を出た。


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