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LIFE GOES ON・・・  作者: shion
第一章 day by day
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2

 柊は橘となじみのショットバーに来ていた。静かな雰囲気が気に入ってチョコチョコ出入りしている。カウンターに座って、バーボンを飲む・・・

 今時の小ジャレた雰囲気というよりは、昔からの老舗というたたずまいのその店は、店全体が木のぬくもりで包まれ、そこにあるテーブルやイス、飾ってある小物の一つ一つに歴史と重みが感じられ、流れてくるジャズのメロディーがなんとも心地よく、柊を落ち着かせた。

 50代半ばぐらいだろうか、その店のマスターの持つ雰囲気も、不思議に柊は好きだった。

 そんな店だから、客層も常連客が多かった。今日だって、顔ぐらいは知っているってヤツが、何人か来ている。カウンターに客席五つのこじんまりとした店だ。

 イヤでも目に付いてしまう。

 どちらかというと、ここに来たら、静かにゆっくりと飲みたい柊だった。

 

 しかしこいつが一緒だと・・・柊は橘を見た。

 橘は二つ隣の席に座っている2人組みの女に軽いノリで声を掛けている。

 あ~あ、また女にちょっかい出してやがる・・・店にきてるうち、何度か一緒になったことのある女だ。

 2人とも、はたから見たらけっこうイケてる。

 割りと美人だし、スタイルもいい。そのうちの1人が、さっきから意味ありげな眼差しで、こっちを見ている。

 はぁ・・・柊は心の中でため息をついた

 

 

 

 

「おい苑田!美久ちゃん、前からお前の事気になってたんだってよ。」

 橘が嬉しそうに耳打ちした。

「だから何なんだよ。」

 柊はムッとして言った。

「何なんだよじゃねーだろ。あのコ、この店でもちょっと

 有名なかわいい女じゃん。俺は、さきちゃんとこのまま違うとこ飲み行くから、お前も美久ちゃんと、どっか行っちゃえよ。」

「ヤだね。」

 

 好みの女をゲットして、浮かれているヤツをよそに、柊はきっぱりと言った。

 

「そんなことゆーなよ。なっ、優しくしてやれって。おまえはどーしてそう女に冷たいのかねぇ。あのコなら、申し分ねーじゃん。」

 橘がなだめるように言う。

「とにかくヤだね。」

 別に女を目当てに飲みに来てるわけじゃない。

「まっ、そーゆうなって・・じゃ、俺は行くから。」

 そう言って、橘はとっとと女と行ってしまった。

 

 ったくよぉ・・・

 

「あの・・・」

 その女が声を掛けてきた。柊は何も言わないでその女を見た。

「ご一緒してもいいですか?」

 恥じらいながら、彼女は言っている。よくよく見ると、けっこういい女だ。

 遊んじまうか?一瞬そう思ったがすぐに打ち消した。

 

 そんなことをしたからって、何が満たされるわけじゃねぇ・・・

 なんかくだらねぇ。女なんて、めんどくさいだけだ。

 

「座っちゃいますね。」

 その女が、かわいい感じのしぐさをして隣に座った。その表情は私ってかわいいでしょといわんばかりだ。

「私、前からあなたと一度ゆっくり話してみたいなって思ってたんです。」

 彼女が微笑む。しかしその微笑みが、柊の心に響くことはない。むしろげんなりしてしまう。意味のねえ女・・・。

 柊は露骨に嫌な顔をした。

「苑田さんっていうんですよね。橘さんに聞きました。苑田さんって、すごくステキですよね・・・」

 彼女が勝手にしゃべりだす。

 

 ったく無心ケーな女だな・・・俺がイヤがってんの、ワカンネーのかよ・・・

 

「私、あなたのこと、すごく気になってて・・・。」

「ワリぃけど、俺帰るわ。」

 関わる気なんて更々ない。

 柊はその女といることがめんどくさくなって、店を後にした。

 

 

 

 もうすぐ11月・・・外の空気はだいぶ冷んやりとしてきた。

 街はきらびやかなネオンに彩られ、道行く人でにぎわっている。

 だけど俺には全てが色あせて見える。何の意味もない・・・

 言いようのない空しさがこみ上げるのを無視するかのように、柊は歩き出した。

 

 

 次の日の朝、さっそく橘から電話があった。

「お前昨日、美久ちゃんおいて帰ったんだって?美久ちゃん半泣きだったぞ。」

 ヤツの声は少し不満そうだ。

「それがどーしたよ。俺はヤダッて言ったろ?あの女置いて勝手に出て行ったの、お前らだろーが。」

 ちょっとムッとしながら言い返した。

「そりゃそーだけどよ・・・そんなに邪険にしなくてもよかったんじゃねーか?」

 橘が食い下がる。

「その気がねー女に優しくしたってしょうがねーだろ?」

 本心からそう思う。

「お前の言うとーりだけどよ・・・ったく、お前が優しく出来る女なんて、

 この世にいるのかねぇ。」

 ヤツが、少しあきれたような、あきらめにも似たような声で言う。

「おおきなお世話だよ。」

 柊は言った。別に女にキョーミがないわけじゃない・・・それなりに遊んでた

 時期だってある。だけど・・・

「もう、切るぞ。」

 柊はウザったくなって、そそくさと電話を切った。

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