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LIFE GOES ON・・・  作者: shion
第三章 cross road
12/35

2

 ああ・・・すんげー苦しい・・・俺、死んじゃうかも・・・

 その時、ひんやりとした感触が、俺のおでこに触れた。

 気持ちいー。

 

「ちょっと頭上げるわよ。」

 

 うっすら目を開けると、水野 さつきがそこにいた。

 何でこの人が・・・俺、夢でも見てんのかな・・・この人のことばっかし考えてたから・・・

 そうだよな・・・でなきゃ、この人がここにいるはずねーもんな・・・

 起き上がって確かめたい・・・でも、動けねーよ・・・

 夢でもいい・・・とにかく、この人に謝りたい・・・

「さつき・・・さん・・・ごめん・・・俺・・・ほんと・・・ごめん・・・」

 

「39度もあるじゃない!」

 なんか声がする・・・でも夢なのか何なのか訳わかんねぇ。どーにも動けねーよ、俺・・・

「苑田くん、口開けて。とりあえず、解熱剤飲もう。」

 意識がもうろうとする中、言われるまま、少しだけ口を開けた。

 中に、薬らしきもんが2粒はいってきた。

「水は・・・どうしよう・・・ストローもないし・・・スプーンは・・・ダメだ、こぼれちゃう・・・」

 なんかブツブツ言ってる気がする・・・

 ん?何だこの感触は・・・

 何かが唇に触れ、そして水が口の中に入ってきた。

 ゴクリ。

 そして俺は、完全に意識を失った。

 

 

 

 

「ん・・・あ・・・」

 俺は目を覚ました。

 

「苑田くん眼が覚めた?」

 

 水野 さつきが俺を覗き込んでいる。

 まだ夢見てんだ、俺・・・

 優しい微笑を浮かべて、彼女が見ている。

 女神みたいだ・・・

 許してくれたのか・・・俺の事。よかった・・・俺はニッコリと微笑を返し、再び目を閉じた。

 

「うーん、昨日よりはだいぶ下がったみたいね。」

 彼女の手が、俺の額に触れてる。少しひんやりして・・・

 妙にリアル。

 俺はパッと目を開けた。

 

「どうしたの?大丈夫?」

 

 彼女が俺を覗き込んでいる。どーみたって、彼女だ。

 俺は訳がわからず真実を確かめようと、手を伸ばし、彼女の頬に触れた。

 

「どうしたの?」

 

 彼女が戸惑っている。手のひらの感触は確かだ。

 本物だよな・・・

 

 本物だ!俺はびっくりしてガバッと起き上がった。頭がズキンと痛む。

「いてて・・・」

「ダメよ、急に起き上がったりしちゃ・・・」

 彼女が優しく俺を横にならせてくれる。

 何でだ・・・なんで彼女がここに・・・

 俺は状況が飲み込めなくてパニックになった。

 

「とりあえず、熱はかって。」

 彼女が体温計を差し出す。俺は素直にそれに従う。

 何でだ・・・なんで彼女がここに・・・しかも超気まずい。

 そういえば、いつの間にかベッドで寝ている。

 どうやって・・・いつからここに・・・?

 だいたい怒ってねーのか?

 

「あの、今何時?」

 俺は、一番関係ない素朴な疑問を目を合わせないできいた。

 気まずくて・・・彼女の顔なんかまともに見れねーよ・・・

 

「今ちょうどお昼よ。」

 お昼・・・「お昼って仕事は?」

 俺は少し体勢を起こした。

「私?私は今日は休みよ。日曜だから。あなたは?

 今日、撮影とか入ってるの?」

 彼女が再び俺を横にならせながら言う。

「今日は、入ってねえ。」

「そう、よかった。とりあえず、ゆっくり休まなきゃね。

 昨日は大変だったんだから苑田くん。」

 ピピッ体温計が鳴った。

「うーん、37、5かぁ。」

 俺が見るより先に、彼女が体温計を取り上げ見ている。ふと、彼女の結婚指輪に目が行った。

 

 まだ、はめてるんだよな・・・俺は、自分が言った事を思い出し、胸が痛くなった。

 あやまんなきゃ・・・

 

「お腹すいたでしょ?おかゆ作ったけど食べる?それとも、もも缶がいい?」

 もも缶・・・そー言えば俺、そんな事いったような・・・

 俺はわからない事だらけのまんま「おかゆがいい。」と言った。

「そう、どこで食べる?こっち持ってこようか?」

 彼女は何事もなかったかのような態度でそう言う。

「いい、起きてあっちで食べる。」

 とりあえず、そう言った。

 

 

 

 気まずい思いで柊が見ているのを知ってか知らずか、さつきは手際よくおかゆやのみ物を運んできた。

 

 俺の言ったこと気にしてねーのかな・・・そんなはずないよな・・・

 でも謝るタイミングがつかめない。

 大体なんでここにいるんだ?どーやっておかゆ作ったんだ?

 俺は疑問でいっぱいだったけど、出されるまま、おかゆを一口食べてみた。

 うまい・・・たまごがゆなんて何年ぶりだよ・・・

 そこには感動すら、あった。

「うまい。」

 思わず言ってしまった。

「そう?口に合ってよかったわ。」

 彼女が軽く微笑む。

 

 そーいえばすんげー腹減ってたんだ・・・俺は夢中になっておかゆを食べた。

 そして食べ終わったら、いろいろな疑問が一気にわいて出てきた。

 まず、何で彼女がここに居るかだ。

 怒ってるって感じじゃないみたいだけど・・・そしていつからここに居るんだ?

 

「あの・・・何であなたがここに居るんでしょう。」

 先に謝んなきゃと思うけど、どうも切り出しにくい。

 柊は気まずさから変な口調で聞いた。

「ああ、勝手に入ってごめんなさい。昨日の事は、やっぱり覚えてないみたいね。会社であなたが熱出したって聞いて・・・もしかしたら

 あの日の取材の時のせいかなって思って・・・住所と電話番号調べさせてもらったわ。電話したんだけど出ないし、住所を頼りに来てみたの。

 何度もインターホン鳴らしたんだけど返事がなくて・・・

 ドア開けたらカギがかかってなくて・・うめき声が聞こえたから中に入ったら、あなたがここで倒れてたの。」

 彼女が独特のハスキーな声でスラスラ答える。

「そいで、何時ごろ来たんでしょう。」

「うーん、昨日の6時半ごろかな。」

「6時半?6時半って事は、もしかして、寝ずに看病してくれたとか?」

 まさかと思いながら、聞いてみた。

「うーん、まぁね・・・。昨日は9度もあって、大変だったんだから。

 はぁはぁして意識もないし・・・ちょっとあせったわ。」

 彼女が少し微笑む。

「ふーん、それはどうも・・・」

 

 俺は気まずかった。

 だって彼女には、あんなすんげーひどい事言っちまったんだから・・・

 その通りねって傷ついた顔してたっけな・・・

 あんな事があったなんて知らなかったとはいえ、あんまりだ、俺の言った事。

 

 

「あの・・・おれ、この間は、すいません。」

 柊は意を決して謝った。

「いいのよ。全くその通りなんだから・・・」

 彼女がすごく悲しげな笑みを浮かべている。その笑顔に胸が痛む。

「ほんとごめん。俺、全然知らなくて・・・勢いだけで言っちゃって・・・でも許される事じゃないって、解かってる。」

「ほんとにいいのよ。あなたの言うとおりなんだから・・・でも、あれだけ面と向かって言われたら、正直傷ついたけど。」

 彼女は笑った。

 返す言葉もねぇ・・・柊は思った。

「そいで、とりあえず、どーも。なんか面倒かけちまって・・・。」

 彼女は大人だな・・・と思いながら、柊は言った。

「いいのよ、そんなの。この間のお礼とでも思って。

 これで、貸し借りなしね。」

「はぁ・・・」

 でも、すんげー申し訳ねーよ・・・柊はすごい自己嫌悪におちいった。

 

「とりあえず、あと、私に出来そうな事あるかしら?」

 ふと部屋を見渡すと、こぎれいに片付いて居る。

 台所もきれいになってるし、洗濯物まで干してある。

 ってことは・・・

「あの!現像室入った?」

 柊はあせって聞いた。玄関を入ってすぐ横に、現像室がある。

 現像室には、あの写真出しっぱなしなんだよ・・・

「ううん、入ってない。現像室って書いてあったから。あーいうとこってやたらと光とか入っちゃいけないのよね。

 だから開けてないわ。

 この辺は勝手に片付けさせてもらったけど。」

「そう、よかった・・・」

 柊は胸をなでおろした。


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