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もう夜なんて、明けなければいい・・・
朝なんて、来なければいい・・・
彼のいない明日なんて、私には何の意味も無いから・・・
彼がいないのに、生きていけるわけないから・・・
耕作さん、痛かったろうね・・・苦しかったろうね・・・
ずっと、生きていたかったよね・・・やりたい事、いっぱいあったよね・・・
耕作さん・・・私の耕作さん・・・
私を置いていかないでよ・・・一人にしないで・・・
私、もっと一緒にいたかったよ・・・ずっとずっと一緒にいたかったよ・・・
さつきって呼んでよ・・・優しく微笑みかけてよ・・・
思い切り、抱きしめてよ・・・
逢いたいよ・・・逢いたいよ・・・
私は、彼と出逢うきっかけとなったのと同じような事件で、彼を失ってしまった。
彼の死から三年以上経った今も、私は同じ朝を迎えている。
何の意味もない朝を・・・
私の心は、長い長い夜をずっとさまよっている・・・
孤独でさみしくて不安で・・・そして彼は何処にもいない。
悲しみのどん底だった私は、何度も自殺を図った。
彼に、逢いたかった。彼のところへ、行きたかった。
彼に抱きしめて欲しかった。
犯人を、殺してやろうとも思った。
耕作さんは帰ってこないけど、耕作さんが悲しんでもいいから、殺してやろうと思った。
あんなに激しく人を憎んだことなんて無かった。
だけど、やがて私の心を支配していったのは、犯人を
憎いと思う気持ちより、彼を失ったという絶望感だけだった。
そんな私を支えてくれたのは、親友の美怜と、意外にもあの、怖かった飯田さんだった。
美怜は半年間も一緒に住んでくれた。
一緒に涙を流してくれた。
励ましてくれた。
飯田さんは仕事を次から次へと入れて、私をヘトヘトになるまで働かせた。
私もがむしゃらになって仕事をした。
そうするしか、この言いようの無いさみしさを、埋めることが出来なかった。
「あの人に恥ずかしくない生き方をしなさい。でないと、彼も浮かばれないぞ。」
飯田さんも美怜も、常にそう言っていた。
そして、私は今の地位を築き上げた。
きのう、苑田くんにはじめてバイクに乗せてもらった。
風を切って走るあの感触は、私の心を重く支配している悲しい過去を少しだけ、忘れさせてくれた。
味わったことの無い爽快感がそこにはあった。
だけど、家に帰ってみればやっぱり、いつもの辛く孤独な時間だけが
私を包み込んだ。
あの人のいない、独りぼっちの空しいだけの時間・・・
そして今日、彼は私に言った。
『あんたのその眼が気にいらねえ。本当の私は不幸なの・・・ムカムカする。年中喪中みてーな顔しあがって。』
そう・・・その通り。
彼がいなくなってから私は、ずっと喪中なのだ。
心のそこから笑ったことなんて、一度もない。
何のために生きてるのかわからない。
みんなの前ではできるだけ、明るく気丈に振舞ってるつもりだったけど、彼には見られていたんだ・・・。
彼の冷たい、刺す様な視線を思い出す。
まさにその通り・・・返す言葉も見つからないよ・・・
私はもういない、あの人を想った。
耕作さん、あなたは本当にウソつきだね。
約束したのに。ずっと一緒にいるって、守ってくれるって・・・
絶対離さないって・・・・言ったじゃない・・・
あなたは今、どんな気持ちで私を見ているの?
夢にさえも、出てきてくれないね・・・ほんとにさみしいよ・・・
夢でもいい。あなたに逢いたいよ。声が聞きたいよ、話がしたいよ・・・
いつまで続くの・・・こんな辛い日々・・・
いつまで耐えなくちゃいけないの・・・この言い様のない、さみしさに・・・
いつまで生きなくちゃ、いけないの・・・・
あなたはもう、いないというのに。