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LIFE GOES ON・・・  作者: shion
第二章 he's gone
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 もう夜なんて、明けなければいい・・・

 朝なんて、来なければいい・・・

 彼のいない明日なんて、私には何の意味も無いから・・・

 彼がいないのに、生きていけるわけないから・・・

 

 耕作さん、痛かったろうね・・・苦しかったろうね・・・

 ずっと、生きていたかったよね・・・やりたい事、いっぱいあったよね・・・

 耕作さん・・・私の耕作さん・・・

 私を置いていかないでよ・・・一人にしないで・・・

 私、もっと一緒にいたかったよ・・・ずっとずっと一緒にいたかったよ・・・

 さつきって呼んでよ・・・優しく微笑みかけてよ・・・

 思い切り、抱きしめてよ・・・

 逢いたいよ・・・逢いたいよ・・・

 

 私は、彼と出逢うきっかけとなったのと同じような事件で、彼を失ってしまった。

 

 

 彼の死から三年以上経った今も、私は同じ朝を迎えている。

 何の意味もない朝を・・・

 私の心は、長い長い夜をずっとさまよっている・・・

 孤独でさみしくて不安で・・・そして彼は何処にもいない。

 

 

 悲しみのどん底だった私は、何度も自殺を図った。

 彼に、逢いたかった。彼のところへ、行きたかった。

 彼に抱きしめて欲しかった。

 犯人を、殺してやろうとも思った。

 耕作さんは帰ってこないけど、耕作さんが悲しんでもいいから、殺してやろうと思った。

 あんなに激しく人を憎んだことなんて無かった。              

 だけど、やがて私の心を支配していったのは、犯人を

 憎いと思う気持ちより、彼を失ったという絶望感だけだった。

 

 

 そんな私を支えてくれたのは、親友の美怜と、意外にもあの、怖かった飯田さんだった。

 美怜は半年間も一緒に住んでくれた。

 一緒に涙を流してくれた。

 励ましてくれた。

 飯田さんは仕事を次から次へと入れて、私をヘトヘトになるまで働かせた。

 私もがむしゃらになって仕事をした。

 そうするしか、この言いようの無いさみしさを、埋めることが出来なかった。

 

「あの人に恥ずかしくない生き方をしなさい。でないと、彼も浮かばれないぞ。」

 飯田さんも美怜も、常にそう言っていた。

 そして、私は今の地位を築き上げた。

 

 

 

 きのう、苑田くんにはじめてバイクに乗せてもらった。

 風を切って走るあの感触は、私の心を重く支配している悲しい過去を少しだけ、忘れさせてくれた。

 味わったことの無い爽快感がそこにはあった。

 だけど、家に帰ってみればやっぱり、いつもの辛く孤独な時間だけが

 私を包み込んだ。

 あの人のいない、独りぼっちの空しいだけの時間・・・

 

 そして今日、彼は私に言った。

 『あんたのその眼が気にいらねえ。本当の私は不幸なの・・・ムカムカする。年中喪中みてーな顔しあがって。』

 そう・・・その通り。

 彼がいなくなってから私は、ずっと喪中なのだ。

 心のそこから笑ったことなんて、一度もない。

 何のために生きてるのかわからない。

 みんなの前ではできるだけ、明るく気丈に振舞ってるつもりだったけど、彼には見られていたんだ・・・。

 彼の冷たい、刺す様な視線を思い出す。

 

 まさにその通り・・・返す言葉も見つからないよ・・・

 

 私はもういない、あの人を想った。

 

 耕作さん、あなたは本当にウソつきだね。

 約束したのに。ずっと一緒にいるって、守ってくれるって・・・

 絶対離さないって・・・・言ったじゃない・・・

 あなたは今、どんな気持ちで私を見ているの?

 夢にさえも、出てきてくれないね・・・ほんとにさみしいよ・・・

 夢でもいい。あなたに逢いたいよ。声が聞きたいよ、話がしたいよ・・・

 

 いつまで続くの・・・こんな辛い日々・・・

 いつまで耐えなくちゃいけないの・・・この言い様のない、さみしさに・・・

 いつまで生きなくちゃ、いけないの・・・・

 あなたはもう、いないというのに。


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