人ならざる者(前編)
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何世紀もの昔、下界では、砂漠のあちこちにあるオアシスが旅人の心と喉を潤していました。その反面、地上の国々は王を中心に、激しい領土争いに明け暮れていました。
その頃、空にももう一つの世界があり、たくさんの民が暮らしていました。この空の国にも王がおり、人々は「光の神」と呼んでいました。
光の神は、息をのむほど美しい姿をしていました。透き通るような白い肌に、ブルーから白銀へと変わるグラデーションの瞳、そして輝く白銀ブロンドの髪。神は、下界の天候や大気を自由にあやつる特別な力を持っていました。身にまとっているのは、純白の生地に金のモールをあしらった、光沢のある美しい衣です。神は、白と金を基調にしたきらびやかな宮殿に住んでいました。
この空の世界では、光の神の特徴を受け継いだ子どもが、どこかで生まれることがありました。その子は物心がつく前に、光の宮殿へと召し上げられます。そして、その中から容姿や能力を最も強く受け継いだ子どもが、次の王となるべく特別な教育を受けるのでした。
しかし、光の神のすべてを受け継ぐ子どもは非常に珍しく、ここ数十年は現れていません。時代はもうすぐ、次の世紀へと変わろうとしていました。
後継者が、産まれて来ない神の不安からか、下界の天候は、荒れており、陽の光がなく、雨風、雷が続いていました。
地上の人々は、「神の怒りだ。」と恐れおののいて、礼拝堂に集まり祈るのでした。
ある時厚い雲の隙間より何本もの光の帯が地上に降り注ぎ、急に光が広がったかと思うと厚い雲をかき分ける様に青空が顔をだし大気が静けさを取り戻したのでした。
そんな時、空の世界では、光の宮殿から遠く離れた果てで、一人の少女が生まれた瞬間だったのです。
名は、レスプロンディール。
光の神は、下界の大気が鎮まった異常事態にすぐさま気付きました。そして、自分と同等、あるいはそれ以上の力を持った存在が誕生したことを知り、歓喜したのです。
その後、下界には何日もの間、晴れ渡った空に優しい雨が降り注ぎ、いくつもの虹のカーテンがかかりました。地上を生きる人々はこれを「神の奇跡」と呼び、深く祈りを捧げるのでした。
神がこれほどまでに歓喜した少女、レスプロンディール(愛称、ディール)もまた、やがて光の宮殿へと召されることになるのです。
光の宮殿の使者がディールの両親の元を訪れたのは、ディールが産まれてわずか3日後のことでした。その異例の早さに両親は驚き、我が子が特別な使命を背負って生まれてきたことを悟るのです。
こうして、ディールは光の宮殿へと召されました。まだ生まれたばかりの彼女には、育ての親となる使者が付きました。
驚いたことに、光の神は毎日ディールの顔を見に部屋を訪れました。愛おしそうに抱き上げ、膝に乗せ、実の娘のように愛情深く可愛がるその様子は、すぐに宮殿中の噂になります。宮殿に仕える者たちは、いつしかディールのことを「姫様」と呼ぶようになっていきました。
姫様は、毎日すくすくと健やかに成長していきました。
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