表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無名  作者: 北村 きかみ
1章
2/2

2話 第三者

「千賀くんやっぱり火傷酷くて学校来れないかと思ったよ~」

放課後にお見舞いに行こうとしてたんだよ?と俺の顔を覗く。

その瞳には心配の眼差しと、やはり俺が見えていた。

あっけらかんとしていると、俺の手に視線を落とす。

「千賀くん!?火傷はどうしたの!?」

その驚く声にやっと俺は傘霧の声に反応する。

「なんか治ってたんだよ、寝て起きたらさ、おかしいよな…」

ははっと笑って見せると、今度は傘霧があっけらかんとする。

その表情に俺はこんな顔をしていたのかと想像してふはっと、吹き出して笑った。

傘霧は急に俺が笑い出すのでびっくりして、その後、すぐに俺と同じように笑った。

やっと俺を認識出来る人間に会えたことを傘霧には秘密だが、心の底から安心した。

その時、授業開始5分前のチャイムが鳴る。

「あ!千賀くん、5分前だけどご飯食べた?」

俺は首を横に振る。

「そっか、じゃあこれ、あげるね」

手に渡されたのは売店に売ってあるメロンパンだった。

何故か、パイン味の。

「少しなら食べれるかもしれないから!」

とどんなに小声でも分かる、元気な声でそう言い、

振り返って小さく手を振って席に座った。

こういう時に気が利くのがこいつの強い所だ。

そして、俺の幼なじみ。

授業が始まる。

「起立、礼、着席。」

この歯切れのいい号令も、なんだか久々に聞く気がした。

「では初めにプリントを配りますね。」

国語の先生がプリントの枚数を数える。

「ここの列だけ4人。」

先生の独り言が、どうやら傘霧の耳にも入ったらしい。

プリントが俺の席に来る。

そう思った時に、

「はい」

俺の後ろにプリントを渡す生徒が横切る。

そのまま席に戻ろうとする生徒を止める人が一人。

「菊池さん!?千賀君にプリントなんで配らなかったの!?」

やはり異変に気付くらしい。

薄々感じてたのだろう。しかし明確に異変が浮き彫りになってしまっては傘霧の中で、見逃す訳にもいかなかったらしい。

ねぇ、ねぇ!と菊池の両肩をゆさゆさと揺さぶる。

しかし、目が虚ろで傘霧の事もまるで見えていないらしい。

傘霧が思わず慌ててしまい、菊池の机にぶつかる。

そのペンを拾い、

「ごめんね、菊池さん、」

と、渡す。


「雨凛!あんた、いつからそこにいたの!?あ、ああ、ありがと」




傘霧と俺の時が止まったような気がした。


「千…賀くん…?」


どうやら、俺に関わる物全てが無かった物になるらしい。

それを傘霧も徐々に理解する。

周りの授業が進み、

傘霧は棒立ちで俺の顔を見る。

黒板には、先生が教科書の文を書く。

傘霧が、立っているのに、それを注意する者は、誰もいない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

傘霧、お前はなんて楽観的なんだ。

それからどうしてそんな事が思いついた、

何故それを実現しようとした?

疑問は化学基礎の問題集用ノートから生成される消しカスと共に多くなっていく。

「千賀くん、その方程式、じゃなかった!化学式、ちょっと違うよ!」

言い直す必要はあったのか?

その言葉を飲み込み、

1番聞きたい質問を厳選し、聞く。

状況を何故そんなに飲み込むのが早いのか、と。

「ん〜…」

口にシャーペンを当て、

「ん〜〜……」

緊張が走る、

そしてあっと言って目を開かせたかと思うと

こっちを向いて一言。

なんだ、何を言うんだ!?



「何となく!かな!!」



もうこいつに質問するのやめようかな。

自信満々のこいつの顔にデコピンを食らわせてやりたい。

どうやら俺の内情を察した(?)らしく

両手を振って

「あ、で、でもそれだけじゃないよ!もちろんね!!」

他にはなんだ?と半ば呆れながら聞くと

「だって、千賀君ひとりぼっちなんて寂しいでしょ?そんなのって……あんまりだよ……」

そうだ、知ってたじゃないかこいつ、傘霧はこういう奴だって。

聞かなくたって良かったかもな、と少し後悔する。

ありがとうと言うと

私も、なんか悪い事してる感じで楽しいからいーの!

と明るく言う。

すると何かを閃いたのか、

「中庭行こうよ!!私達、見えないなら悪い事にもならないでしょ!」

俺の返答も聞かず、

問題集とノートや筆記用具をまとめ、手を引かれてバタバタと中庭へ行く。


静かな中庭に心地よい日光の暖かい日差しと鳥のさえずりが響き渡る。

1時間もこの極上安眠場所に俺しては珍しく勉強を出来たものだ。

もうすぐで学校も終わりか、

帰ろう、と声をかけると

ちょっと早いけど、いっか!

と、満場一致で決まった。

帰りに傘霧が口を開く。

「今度から千賀くんが他の人に見えるまで、私と中庭で勉強しようよ!」

と言う。

何もすることなんて無いし、何も出来る訳では無いので、俺は黙って頷く事しか出来なかった。

別れた後、色々自分の事や将来、いつ治るかとか考えていると不安でなかなか寝付けなかった。これもまた、俺にしては珍しくーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんなこんなで奇妙な時間が1ヶ月流れた。

変な夢もなんか見なくなっちまったし、このまま傘切にしか見えなくなるのか……?

いやいや、それは何がなんでも絶対に迷惑をかけるから早くどうにかしないとな……

手がかりを掴もうにも掴みようが全く無いしどうしようもない。

傘切も手がかりを探してみる!と言ってはいるものの、お互いに何も出来ない。

ネットで調べても何も出てこない、

流行りのスマホで調べても何も出てこない……

このまま時が進みながら止まったままなのか……?いっそ盛大にデカイ落書きを学校にで



『おい』



中庭のベンチに鋭い声が響く。


『お前だよ、千賀』


は?


ベンチの後ろから声が聞こえる。


『お前いつも傘切と一限からいるが貴様ら何故教師から何も言われ「お前、俺が見えるのか」




『は?』




気付けば俺は振り返ってそう言っていた。

目の前の猫のような目と俺の目の前のそいつの間をぬける風がやけに鋭く感じた


2話第三者完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ