魔女の跡
一軒の古い家。これは魔女がいた跡だ。
この家は村の人間の誰よりも古く、遥か昔からあり、まるで村を見守り続ける長老のように、ここに佇んていた。
俺は村の木こりとして、木を伐りながら、時間があればここにきてしまう。
俺はこの家を見ると寂しくなる。
彼女がいなくなってしまったことを思い出して落ち込んでしまう。
俺はこの家のことが嫌いだった。
俺は彼女のことが好きだったのかもしれない。いなくなって初めて気が付くというやつだ。
俺たちは幼馴染で、ずっと一緒に育ってきた。
こんなにも彼女のことが好きだったのに。一緒にいた時はそんな風に思いもしなかった。
毎日彼女と話して、笑いあって、感情的になる事も多くて、だけど彼女がいる未来は当然だと思っていた。
彼女の一族はこの村の歴史でもあった。彼女は生まれた時からこの家に住んでいた。
だけど、ここに魔女が住んでいることが国王に知られてしまった。
だから彼女は逃げないといけなかった。
俺は彼女が逃げるのを手伝った。兵士たちを誤魔化し、彼女が逃げる時間を稼いだ。
彼女が殺されるなんて耐えられなかった。
そして彼女は逃げた。
彼女は魔法でどこかに行ってしまった。兵士たちが彼女の籠る家のに押し入った時、その姿は消え去っていた。
もうここに、いつも笑顔だった魔女はいない。
俺は毎日彼女を思い出す。
彼女はもう思い出の中。
年月をかけて岩がぼろぼろになっていくように、
俺の記憶も朧げになり、いずれ忘れてしまうのかもしれない。
その頃になっても、この家は魔女がいた跡として残っているのだろう。
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