表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/64

第57話 ケルベロス

 さあ、この階層のザコ部屋もラストだ。

 俺はみつ首のカイザーウルフにケルベロスウルフと名付けた。

 口から火を吐くのは知っている。

 あと、頭がみっつあるから、たぶん頭をひとつやっただけでは止まらないのだろう。

 視界も目が3対あるから、かなり広いと思われる。

 思考もみっつの頭で共有されているぐらい考えた方が良さそうだ。


 体もカイザーウルフの2倍ぐらいはある。

 これで普通のカイザーウルフと同じAランクでは詐欺だな。


「強敵だな」

「私もそう思います」


 大船(おおぶね)さんと藤沢(ふじさわ)の意見が俺と一致する。


 さて、どうするべきか。

 手数は3倍だから、大船(おおぶね)さんも接近戦はきついだろうな。

 俺がフェイントして隙を作れたら良いけど。

 床ツルツルはどうかな。

 オーガは2足歩行だけど、ケルベロスウルフは4つ足だ。

 一つの足が滑っても転ぶとは考え難い。


 落石攻撃も駄目だな。

 頭がみっつあるから、冷静に処理される未来しか思い浮かばない。


「とりあえず、閃光手榴弾はどうですか」

「やってみろ」


「ではいきます。3、2、1、今」


 閃光手榴弾を投げ込んだ。

 光が治まったがケルベロスウルフになにかダメージがあったようには見られない。


「いや、効いている。頭ひとつの視線がおかしい。だが、2つは防いだのだろうな」


 大船(おおぶね)さんがそう言ってケルベロスウルフに向かって歩き始めた。

 目の見えないであろう頭から火炎放射器みたいに炎が吹き付けられた。

 目を潰しても、他の頭がカバーするんじゃそんなに痛手ではない。


 閃光手榴弾もう一度はたぶん効かない気がする。

 学習能力は高そうだ。


 大船(おおぶね)さんは炎があるので近づけないでいる。

 炎を吐いていた頭の炎が止まったと思ったら、別の頭が炎を吐いて前進を始めた。


 息継ぎの時間もないのか。

 くそっ隙が見当たらない。

 大船(おおぶね)さんは後退を始めた。


「こうなったら自棄だ。【リフォーム】【リフォーム】【リフォーム】【リフォーム】、槍。上下右左からの4方向同時」


 4方向同時はケルベロスウルフの処理能力を超えたのか、見事全ての槍はケルベロスウルフに突き刺さった。


「破れかぶれの策が嵌ったな」

「ええ、俺が戦力外になっても大船(おおぶね)さんがいるからこそできる芸当です」

「先輩、やりましたね。1階層制覇、おめでとうございます」

「ありがとう」


 討伐の仕事を終え、事務所でコーヒーを飲んでくつろいでいたら、前の会社の後輩である辻堂(つじどう)から電話が掛かってきた。


『先輩、尻手(しって)の野郎、遂に尻尾を出しましたよ。横領騒ぎをまた起こしたので、社内に仕掛けたカメラ映像をチェックしたら、印鑑を盗んで、書類に押しているのがばっちり映ってました』

「よし、濡れ衣を着せられそうになった社員に、俺が裁判費用を持つから尻手(しって)を訴えるように説得してくれ」

『分かりました』


 遂に俺も動く時がきたな。

 尻手(しって)を俺が会社を追われた横領事件で訴えるのだ。

 俺の示談金は返ってこないが、尻手(しって)を訴えることはできる。

 示談書には前の会社が俺を民事と刑事で告訴しないという約束だけだからな。

 示談金はもったいなかったが、まあいいさ。

 金ならある。


「先輩、電話聞いてました。尻手(しって)がボロを出したんですね」

「そうだ。馬鹿な奴だとは思ったが同じ手口でやりやがった。民事では真偽官を呼ぶつもりだ」

「嘘判別スキル持ちですね」

「あくまでも参考資料にしかならないが、裁判員と裁判官の心証は確実に悪くなる。容赦はしないつもりだ」

「勝てますよね」


「ああ、勝てるさ。金の力を思い知れっていうんだ。少し気が早いが、1階層制覇と尻手(しって)の有罪を祝して乾杯しよう」

「はい」


 100万円もするワインを買って来て開けた。


「乾杯」

「乾杯」


「高いってのもあるが、今まで飲んだ酒のなかで一番美味い」

「私もです」


 電話が掛かってきた。

 前の会社の社長からだった。


『すまなかった。尻手(しって)の事だから前の件も彼がやったのだろう。もしよければ会社に戻ってこないかね』


 いまさらだな。

 だが、会社には戻るつもりだ。

 社長の意図した形ではないかも知れないけどな。


「まだしばらくは戻りません。戻る時は連絡を差し上げます」

『そうか。その時はよろしくな。待ってるよ』


 会社にどうやって戻るかと言えば、会社を乗っ取るつもりだ。

 会社のオーナーは経営にタッチしてない。

 会社に対して思い入れなどないだろう。

 金を積めば株を売るはずだ。


 そんなに大きな会社じゃないから、20億もあれば売ると思う。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               20,854万円

依頼金          100万円

上級ポーション2個             618万円

彫像10体                  10万円

カイザーウルフ60体          6,000万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

エレファントスレイヤー6体         720万円

高級ワイン        124万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            224万円 31,598万円 31,374万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -74億円

スタンピード積み立て金  105億円


 エレファントスレイヤーの殺処分ロッカーからの搬出が重労働だ。

 こんなのやってられるか。

 体全体で1トンあるんだぞ。

 値段を考えると閉鎖しようかと思うぐらいだ。

 あとで他の人間に仕事を振ろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ