表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/64

第38話 家族来襲

『テレビ見たわよ』


 電話はうちの親からだった。

 いったい何時の話だ。

 その話題はもう古い。


「古いよ」

『あんた、水臭いわね。テレビに出るんだったら報せてくれてもいいのに』


「いろいろと大変なんだよ」

『近所の人から録画を見せられてびっくりしたったら、ないわ』

「それだけなら、忙しいので切るよ」

『今日、そっちに行くから』

「仕事があるから、大した接待は出来ないぞ」


『起こした会社を見学するから』

「好きにしたら」


 親が来ることになった。

 さて、親が来るまでに仕事を終えようか。


 大船(おおぶね)さんの討伐が終わったので死骸をフォークリフトで運ぶ。

 そして、まだ別件がひとつある。


 グラトニースライムを閉じ込めたことを覚えているだろうか。

 それの後始末にきた。


藤沢(ふじさわ)、グラトニースライムが生きているか確認してくれ」

「はい、【マッピング】。ええと仮死状態みたいです」

「なら危険性はないか。【リフォーム】壁解除」


 うん、玉が転がっているだけだ。

 素手で触ると危険なんだろうな。

 俺はスコップですくい上げて、クーラーボックスに入れた。


「どうだ」

「まだ仮死状態です」


 よし、スライムの核を売りにいこう。


「グラトニースライムの核を売りたい」


 冒険者協会のカウンターで俺はそう言った。


「ええと欠片でしょうか」

「いや仮死状態だ」

「研究所と連絡をとってみます」


 受付嬢が電話で連絡を取るのをぼんやりと見ていた。


「1千万で買いたいそうです。オークションに掛けられるのでしたら手配しますが、いかがします」

「研究所に売ってくれ。モンスターの弱点が分かれば人類の役に立つ」

「ではお金は口座の方に振り込んでおきます」


 やった。

 ちょっとした臨時収入。


 リフォームの仕事をしながら親を待つ。

 藤沢(ふじさわ)が両親の到着を報せにきた。


 入口まで行く。


「久しぶり」

「この子ったらもう、他に言うことがあるんじゃないの」


 と母が言う。


「無事で何よりだ」


 と父が言った。


「心配を掛けたくなかったから」

「それより、さっきのお嬢さんとはどんな関係?」


「ええと、部下以上、恋人未満かな」

「あんたも良い歳なんだから、結婚しちゃいなさいよ」

「まあなんだ。結婚する前は避妊はしっかりとだな」


「これだから、うちの親は。とにかく入って。ダンジョンの中を案内するから」


 両親を連れて仕事場を見学させる。

 モンスターは危険なので見せない。

 カメラがあるのでその映像を見せた。


「で会社は上手く行っているのか?」


 父さんが心配そうに尋ねた。


「スタンピードさえ起きなければ、たぶん大丈夫。もしもの時は逃げたり隠れたりするよ」

「そうか。どんなことになっても父さんと母さんはお前の味方だぞ」

「分かっているよ」


 両親は嵐のように来て、嵐のように去っていった。


「いい両親ですね」

「そうか。普通の親だと思うぞ」

「私の両親は糞親ですから、こないだも100万円の給料の振り込みを見せて黙らせました」

「会社を辞めたから心配だったんだろう」

「うちの親は老後の面倒を見てくれるかだけしか、関心がないんです」

「どこも似たような物さ」

「そうですか」


拝島(はいじま)さんのスキルが生えているはずだ。聞きに行こう」

「はい」


 拝島(はいじま)さんの部屋のインターホンを押す。


「はい」


 扉が開けられた。


「どんなスキルが生えたか調べましたか?」

「ええ、香川(かがわ)さんが来て調べてくれました。生えたのはフォァサイトスキルです。未来を予見できるそうですが、見える未来までの時間が短くて、あまり商売の役に立ちません」


 拝島(はいじま)さんはくいっと眼鏡を直してから、答えた。


「どんなご商売を?」

「株のトレーダーです。鍛えたら時間は長くなるそうですが、モンスター退治はリスクとリターンが釣り合わない」

「そうですか。安全に鍛えられればどうですか?」

「それなら一考の価値はあります」


 拝島(はいじま)さんはパーティメンバー保留だな。

 予見スキルはかなり使えそうだ。


拝島(はいじま)さんはこのダンジョンの住人の中で誰が好きですか?」


 藤沢(ふじさわ)がいきなり変なことを聞いた。


「だんぜん、香川(かがわ)さんですよ。私のパートナーは彼女しか考えられない」


「よしっ、ひとり脱落」


 藤沢(ふじさわ)が拳を握って小声で言った。


「ええと、付き合いは節度を持ってお願いします。トラブルになったら、契約を破棄します」

「もちろん、嫌われるようなことはしないさ。私には予見スキルがついている。失言の類とは無縁のはずだ」


 エロが絡むと行動力が半端ないな。

 エロゲー選択肢みたいにスキルを使うとは。

 モンスターをやっつけるために使ってほしいものだ。

 そんなのじゃスキルが泣くぞ。

 でも、拝島(はいじま)さんは好きになれそうだ。

 人間味があって良いじゃないか。


 香川(かがわ)さん陥落も近いかな。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               18,578万円

依頼金          100万円

スライムの核              1,000万円

上級ポーション               303万円

彫像10体                  10万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            100万円 19,891万円 19,791万円


相続税        2,000万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -84億円


 上級ポーションを一つ売らないで俺達が使う用に確保した。

 こういう必要経費は仕方ない。

 それにしても、バンバン金が貯まっていく。

 何となく大金がそのうち入って来るような予感がする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ