第18話 部屋の賃貸
ダンジョンの部屋の本格リフォームが始まった。
まず、束石の代わりにダンジョンの床にくぼみを作る。
床束を立てて、壁に根太や大引と呼ばれる木材を壁に固定。
床板とフローリングを敷く。
トイレと風呂はユニットバスを入れる。
これは別に依頼を出した。
ストレングスアップ持ちの冒険者が応じてくれた。
一時的にリフォームスキルで壁に大穴を開ける。
ユニットバスの排水溝の部分の下には汚水溜めを作った。
汚水溜めの中のゴミ収集機能は働いているから、長いあいだ水を出しっぱなしにしない限り溢れたりしないはずだ。
電気工事はまず共同溝に配線して、部屋の壁に穴を開けてそこから配線を通す。
部屋の中の配線はリフォームスキルで壁に埋め込む。
ところどころ、コンセントボックスを埋め込み、配線したらコンセントは完成だ。
天井の照明も配線は埋め込む。
特に問題なく終了。
水道管は共同溝に配管して、やはり壁の穴から通す。
風呂場とトイレに配管する。
壁にも水道を配管して、キッチンを作る。
換気扇はない。
ダンジョンの空気は常に清浄に保たれている。
でないと毒ガスを入口から送り込んで、全てのモンスターを殺せるからだ。
そんな抜け道はない。
都市ガスを引きたいが、とりあえずはプロパンにした。
こういう所は追々だ。
リフォームスキルでいつでも配管はできる。
壁の穴はリフォームスキルで埋める。
パテでやっても良かったが、スキルの方が早い。
数時間でリフォームは終わった。
部屋が完成した時に見学者が来た。
「スキル研究家の香川と言います」
キャリアウーマンみたいな人がきた。
「あなたが部屋に住みたいのですか」
「ええ。私の学説では、スキルの覚醒はモンスターを倒すのではなくて、ダンジョンにどれだけいたかの経過時間に起因すると考えてます」
「まるで魔力に汚染されているみたいですね」
「みたいではなくて、それが事実です。地上ではダンジョンの入口に近い人ほど覚醒率が高い。それにダンジョンのクラスが上がれば上がるほど高くなる傾向があります。ではダンジョンの中に住んでみたらどうでしょう」
「それで住みたいと。お話は分かりました。契約は不動産屋さんに任せてますが、家賃は高いですよ。月200万です。よろしいですか?」
「はい、住んでみたいです」
世の中には変わった人がいるものだ。
募集の張り紙を出した俺が言うのも何なんだが、ダンジョンに住みたいとはな。
配信の再生数を見る。
ぜんぜん増えてない。
配信は駄目だな。
でも辞めるという選択肢はない。
でも良い事を聞いたな。
ダンジョンの中に住むとスキルが芽生えるのか。
俺もやってみよう。
リフォームスキルで、空き部屋に扉を作り、トイレを作る。
不細工なトイレだけど構わない。
とりあえず、照明は災害時用の懐中電灯でいいか。
ベッドを運び込めば、床はフローリングでなくても良い。
「何、面白そうなことしてるんですか」
「スキルが芽生えるっていうから住んでみようかと」
「私も住みます」
「ええ、トイレこんなだよ」
俺はトイレを指差した。
「それは困りますね。温水便座は必需品です」
「分かった。今度ポーションが出たら、1部屋を住めるようにリフォームしよう」
「きっとですよ」
「ああ」
「それまで私は上の家に泊まります」
「えっ。まあ別にいいけど」
風呂に入る時に札を掛けるとかのルールを決めた。
香川さんが引っ越しの挨拶にきた。
「今日からよろしくお願いします」
「ええ、よろしく」
「今日からここに住む。藤沢です」
「おや同棲ですか。羨ましい」
「同棲だなんて♡」
「いえ、俺はダンジョンに住みます。廊下のリスポーンは切ってありますが、部屋からモンスターが出てこないとも限らない。何かあったら知らせて下さい。そうだインターホンを設置しましょう」
俺の部屋と香川さんの部屋までインターホンを設置した。
これでいつでも連絡が取れる。
「ずるい。私もお話したい」
「藤沢、これはあくまでも緊急用だ。世間話するためのものじゃない」
「でも」
「そのうち携帯が使えるようになるから、それまで我慢だな」
「毎日、携帯の会社に催促の電話を掛けようかな」
「ウザがられて逆効果だぞ」
1日で効果は出ないだろうけど、明日の朝が待ち遠しい。
スキルよ芽生えろと思いながら寝る。
香川さんの実験が上手くいくと、入居希望者が増えるに違いない。
そうなれば好都合だ。
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俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 721万円
木材など材料費 200万円
家賃 200万円
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計 200万円 921万円 721万円
相続税 2,000万円
示談金 3,000万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -100億円
初めて家賃収入が入った。
でも、こんなのはラッキーパンチみたいなもの。
そうそうあるものじゃない。
香川さんの試みが上手くいくことを祈る。




