第13話 召喚魔法使い
今日の最初の敵はオークメイジだった。
いつも通り、串刺して片付けようとした。
メイジが魔法を使う。
目前にオークが現れた。
「しっ!」
呼気を鋭く吐いて、大船さんが斬り捨てた。
オークメイジはまだ生きている。
くそっ、オークの出現に驚いて腰が引けたんで、狙いが外れたんだ。
オークメイジの周りにオークが出現。
オークメイジは見えなくなった。
「あれは召喚魔法使いだな」
オークを斬り捨てながら、大船さんが言った。
くそっ、オークが邪魔でオークメイジが見えない。
召喚されているのがザコオークで良かった。
2メートルぐらいのザコオークなら、大船さんはスキルを使う必要がないみたいだ。
その時、オークが死骸を食っているのが見えた。
2倍体の恐怖が甦る。
恐怖に支配されちゃ駄目だ。
「【リフォーム】」
ありったけの魔力でダンジョン格子を作る。
これなら2倍体のオークはダンジョン格子で止まる。
大船さんは、楽々戦えるはずだ。
「助かったぜ。もう少しで息が切れてやられるところだった」
ダンジョン格子の向こうはオークの2倍体で一杯だ。
「助けになって良かったです」
「こうなったら持久戦だな。オークメイジの魔力が尽きるのを待つしかない。じゃあ、ちまちま削るとするか。そいっ」
大船さんは1体倒すと休憩を入れて、また倒すを繰り返した。
俺は唐辛子スプレーを噴射しまくって援護。
やがて、リュックサックに入れていた唐辛子スプレー20本が尽き、永遠と思われる時間が過ぎて、立っているオークはオークメイジだけになった。
「これで終りだ。【リフォーム】」
回復した魔力を全てつぎ込んだ槍が炸裂。
オークメイジは息絶えた。
「今回は助かったぜ。これだからSランクダンジョンは侮れない」
「ところどころ、人間が通れる幅のダンジョン格子を作るのも手ですね。スタンピード対策になる」
ダンジョン格子はフォークリフトが通れないから、やるならボス部屋の前だな。
「過信は禁物だ。ダンジョン製の棒を破るモンスターが現れないとも限らない」
「ええ、たぶんSランクモンスターには破られるんでしょうね」
「今日は後片付けして上がろう」
「俺も疲れました」
後片付けをして地上に戻った。
いつもと同じに藤沢にデータを渡す。
コーヒーを飲み終わっても、藤沢は何も言ってこなかった。
今回の俺の行動は良かったということだろう。
今日も生き延びられた。
俺のスキルは1対1で相性が良ければ、Sランクモンスターでも倒せるような気がする。
だが、相性が悪いモンスターは駄目だ。
他のダンジョンで相性が悪いモンスターの部屋を封印するというのは分かる気がする。
部屋の封印がばれると政府から監査が入るらしい。
だが、そういう行為は後を絶たない。
冒険者が通報することは稀だそうだ。
冒険者も命は惜しい。
相性の悪いモンスターは相手にしたくない。
余裕ができたら他のダンジョンにある封印部屋のリスポーンを潰して回ろうかな。
配信のチャンネル登録者数は401人。
まだ収益化の千人には届かない。
でも素人がやっているとしては健闘しているほうだと思う。
腐らずに行きたい。
配信の映像は大船さんの映っている箇所を編集でカットしている。
俺の映像だけだとこのぐらいが限界か。
俺は図書館に出掛けた。
魔法について調べるためだ。
分かったのは、魔法は魔力をエネルギー変換しているらしい。
召喚は結局ワープだろ。
よくオークメイジは魔力が持つな。
読み進めると、理由が分かった。
ダンジョンからモンスターに魔力をサポートしているらしい。
なにそれずるい。
死んだモンスターの魔石に魔力がたくさんあるのは、そのためらしい。
死ぬ寸前に魔力が流れ込むのだそうだ。
となると鍛冶場の馬鹿力的なモンスターがいる可能性もある。
自爆する奴とかもいそうだ。
「来ちゃいました」
藤沢が図書館に現れた。
「よく分かったな」
「たぶんここだろうと」
「まあな。買い物以外だとここしか来ないな」
「もっと趣味をもった方がいいですよ。ストレス発散しないと」
「モンスターを串刺しするのは爽快だぞ。あれでストレスを発散している」
「静かにして下さい」
司書に注意されてしまった。
「すみません、外で話そう」
本を元に戻して、図書館から出る。
「先輩は、ダンジョンのことを考えない時間を作るべきです」
「分かった。ダンジョンで庭が滅茶苦茶だった。整備しよう」
俺は業者に頼み、ダンジョンの脇を家庭菜園にして、ダンジョン入口から道まではブロックを敷いた。
何か育てるのはいいことだ。
ダンジョンのタイムリミットを忘れられる。
この家庭菜園が滅茶苦茶にされないように頑張ろう。
絶対にモンスターに足を踏み入れさせないぞ。
そう強く決意した。
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俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 934万円
依頼金 150万円
庭整備 100万円
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計 250万円 934万円 684万円
相続税 2,000万円
示談金 3,000万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -100億円
庭の整備なんかしている場合じゃないという声もありそうだが、うるおいは大事。
それに道が良いと業者さんに気持ちよく仕事してもらえる。
気遣いは大事だ。




