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1話目「遊びにいこう」

「────なんか、怖い夢見た。」


 響く怒声、周りの目が白く見える。


 また何かしたのかと無言の圧力と目の前の怒りや侮蔑の濁流に呑み込まれて、自分という存在がだんだんと小さくなる夢。


リュウちゃん〜〜‼︎とお母さんからの声が聞こえてくる。


「朝ごはんできたから、起きてきなさーい!」


 その声でノソノソと布団から起き出す。

リビングに入って食卓の椅子に座ると目の前に朝ごはんが運ばれてくる。

お腹が空いてきたので、箸を持ってソーセージを口に入れる。

塩気が口の中に溢れてくるので、ご飯茶碗を持ち上げ口の中に放り込む。


「こら、ちゃんといただきますをいいなさい。」


キッチンの方からお母さんの声が聞こえてくる。

ほっぺにモゴモゴとおコメを詰めてちゃんといえてない()()()()()()()をいう。


全く…とお父さんが使った食器を洗い始めたお母さん。


「お父さんは今日仕事?」


「えぇ。働いてる人は小学生みたいな長期休みはあんまりないの。」


ちぇ〜、遊んで欲しかったのになぁ〜とぼやくとお母さんから遊ぶのもいいけど、ちゃんと宿題もしなさい。といわれる。


ズズズ……と味噌汁を飲んでごちそうさまをいい、食器をキッチンまで持っていったあとに廊下から隣の部屋に走り出す。

タンスから着替えを引っ張り出して、パジャマを脱いでTシャツと半ズボンを履く。

時計を見ると9時半、歯を磨きに洗面所に走っていく。

歯磨き粉を歯ブラシに塗りたくり、口の中で動かしているとお母さんに出かけるの?と声をかけられる。


「うん、ハルと外で遊んでくる‼︎」


「ハルちゃんとね?……いいけど、ちゃんと帰ってきてから宿題をしなさいよ?」


うん!と頷いた後にブクブクとうがいをして歯磨き粉を吐き出して歯ブラシを洗い、容器に入れる。


いってきまーす!!と玄関まで走り、靴を履いて扉から飛び出す。


 タッタカタッタカとアスファルトを駆けていく。

道中で散歩しているおじさんとおばさんに挨拶をしたり、鎖で繋がれた犬に吠えられたので威嚇し返したりしながら、今日はなにしてあそぼうかと考えている。

そうこうしているうちにハルんちについた。

ピンポーンとチャイムを鳴らしながら家に向かって大声で友達を呼ぶ。


「ハァ!ルゥゥゥゥウウウウウ‼︎‼︎あっそぼぉーぜぇええええええええええええええええ!!!!!!」


中から足音が聞こえて、扉がガチャっと開く。


「リュウ、おはよう。」


「おはよう!ハル、遊びに行こうぜ!」


とワクワクとした感情が体に出て玄関先で地団駄を踏む。


ハルはウンと頷くと、家の奥から立川さんちのお子さんかい?という萎れた声が聞こえてきて、そうだよーと中に引っ込んだ。

とても長い1分間を待っていたら、玄関から出てきた。


「よし!遊びにいそう‼︎」


そういう時オレはハルの手を引っ張ってまたアスファルトへ走り出す。


「きょ、今日は何して遊ぶの?」


公園?駄菓子屋さん?と、手を引っ張られながらハルは質問してくる。


「今日はあの山に行こうぜ!」


街から見えるこんもりとした山を指を刺す。


「え、あそこ、学区外だから、行ったらダメなんじゃないの?危ないし……。」


ハルは学区外へ行ったのをバレたり危ないところがあった時のリスクを考えているみたいだ。


「大丈夫!行くだけならバレないし、へんなところに行かなきゃ危なく無いから大丈夫だろ!」


リュウハル探検隊出動!!と腕を突き上げる。


「う、うーん〜、答えになってないと思うけどなぁ。」


とつべこべ言っているのを無視して走り続ける。


途中で蟻の行列を見つけたり、葉が小さいハートになっている長い雑草を2人で引き抜いてデンデン太鼓のようにクルクルと回したり、細長い葉っぱで船を作って用水路に流して遊んだりしながら移動を続ける。


 気づいたら小さい砂利が散らばっていたり、大きな岩が置かれた道と『◯道山、◯山道』と書かれた矢印の看板が出てくる。

看板の目の前でオレたちは立ち止まる。


「ハル、これなんて書いてあるか読める?」


指を差してハルに尋ねる。


「え、えーっと狐道山(コドウサン)登山路(とざんろ)じゃないかな?」


おおさすが、いっぱい本を読んでるだけある。というとハルは照れ臭く笑いながらありがとうという。


「それじゃ歩いて上まで行ってみるか!」


オレは岩をジャンプして登り始める。

ハルもえ〜いくの?と言いながらついてくる。


「リュウハル探検隊はマボロシの生物を探すためにコドウサンの奥地に歩いていった……。」


「歩いてないよね、ジャンプして岩を乗り越えているよね。」


「次回は続く……。」


「勝手に終わらせないでよ。」 


そんなことを言いながらオレらはひとつひとつ岩を登っていく。

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