32.フェルダの過去
投稿日:2026/2/10
~フェルダの視点~
「俺がワンダと初めて出会ったのは、幼少期の頃。 学校に通うより早かったな。 あ~、今思い出すと、あの時の俺は~クソガキだったな。
ノーザンモスト帝国には、年に一度『武器』のみの実力で競い合う大会『アイゼン・クラフト杯』が開催される。
アイゼン・クラフト杯とは、ノーザンモスト帝国にいる全ての人が参加する権利を持っている大会だ。 つまり、身分関係なく行われるってことだな。
当日10歳だった俺は~ 『初鋼部門』…10歳~13歳ぐらいの若年層の部門に、腕試しとして大会に初めてエントリーし、決勝でワンダと戦い負けた。
家が貴族ということもあり、小さいときからの英才教育を施されていた。 勉強や礼儀作法は面倒だったが、剣術の稽古の時間だけは伸び伸びと楽しくやれた。 そんな日々の授業で俺には剣の才能があることを幼いときに自覚し『同年代には負けね~』とその日まで余裕こいていたな。
今だから言えるが…そこがいけなかったな。
当時の戦いはそうだなぁ。 身の丈程の大きな両手剣を使う俺は、力で勝ってきたのに対して、小盾を上手く使いこなし攻撃をそらしスキを作る戦い方をする当時のワンダに対応できず負けた。
今まで貴族連中相手にしか試合をこなさず、型にはまった戦い方しかできなかった俺の完敗だったな。
初めて同年代には負けた、あの日を境に俺はワンダをライバル視するようになった。 まぁ、あの時の俺はまだワンダの奴からすれば周りの有象無象に過ぎなかったのだろうがな。
そんなことを考えれば考えるほど、今までの慢心した自分に腹が立つのと、俺を一人の人してワンダに見られていないということが、当時の俺はたまらなく許せなかったよ。
その日以来、勉強や礼儀作法の授業を全て放り出し時間をつくり、その時間の全てを剣の腕を伸ばすために使い俺は死にものぐるいで鍛錬した。 それ以外にも、俺は両手剣以外の武器種を沢山試し、俺に合った武器を探し迎えた 11歳のアイゼン・クラフト杯。
今回俺が選んだ武器は以前ワンダが使用していた片手剣と小盾。 1年間、剣に取りつかれたように鍛錬を続けたおかげか、再び決勝進出することができた。
そして…対戦相手として望んでいた相手である、ワンダは反対側のトーナメントで当たり前のように上がってきていた。
俺は震え、歓喜した。 もう一度奴と、ワンダと戦うことが出来ると。
決勝で再び相まみえたワンダの奴は俺の構えた武器を見て少し目を見開いた気がしたが…気のせいだろう。以前の俺は違う武器を使っていたから、ワンダの奴が俺の顔を覚えてはいないはずだと、当時は勝手に思っていたな。
互いの準備が整い終わり、決勝が始まる。 同じ武器種を使っている関係上、攻守が常に入れ替わり1年の付け焼き刃であった俺の剣は再びワンダの剣に負けた。
その時悟ったんだよ、真似ものでは本物に勝てないと。
再び武器種を考え試し、迎えた12歳のアイゼン・クラフト杯。 その時俺が選んだ武器は『槍』だった。 剣で得た知識は槍でも応用が利き、鍛え上げた肉体は長い槍を自在にコントロールできる体つきになっていた。
今回こそ勝てると思い望む決勝戦… 長いリーチを活かして接近させず、今までで一番惜しい試合をしたけれど…負けた。 ワンダとの試合では、小さな盾を構えているだけなのに奴へ付け入るスキを全く感じさせない鉄壁さを何度も見せつけられた気がしたよ。
18歳…俺が学校を卒業する年まで来て、計9回アイゼン・クラフト杯 全て準優勝。 年齢が上がり『初鋼部門』から『若鋼部門』と部門が上がり14歳から20歳の括りとなったが、決勝戦には常にワンダがいて、俺の優勝を阻んだ。
卒業する最後の年に勝てなかったら俺は剣の道を諦めると心の中で決め…俺は負けた。 負けた俺はワンダの顔を直視できず、試合舞台から降りた。
何もかもどうでも良くなり心が折れた。
そんな俺を襲ったのは何の前触れもなく起こった災害『モンスタースタンピード』。 1匹の魔物を原因とした魔物の暴走を差し、周りにいる魔物にも影響を与え被害を拡大させる災害の1つ。
原因としては魔物の活性化や上位種の出現、魔物の繫殖が被った時に起こるとされているが、魔物は冒険者協会の人や騎士団が数を間引いてくれているおかげでここ最近…俺が大きくなったその日まで経験したことのない災害だった。
聞いた話では、騎士団や冒険者協会の人が事前に予兆を察知し迅速に動くと聞いていたけれど、『モンスタースタンピード』自体、以前起きたのが10年前と言うこともあり、今回のモンスタースタンピードの規模は小さい規模であり、予兆を察知出来ておらず、対応が遅れてしまっていたらしい。
モンスタースタンピードは規模によって脅威に波があり、大きいものだと昔国一つ壊滅した過去もあるくらいだ。
森の魔物は数が少ないから規模が小さくなりがちだが、国に数個あるダンジョン内のスタンピードは影響を与える魔物の量が多くて厄介だと聞くな。
今回、俺達が騎士団より早く気がつけた理由としては『アイゼン・クラフト杯』が行われていた会場が、城門外の平原であり、俺達の決勝がおわった直後…会場にスタンピードの影響を受けた魔物群れが襲ってきたんだ。
普段、俺達人間を見るなり逃げていく様な魔物である『ボアレット』が群れを成して襲ってくるものだから、会場にいる全員が異変を察知し、一人一人臨戦態勢を整え、迫りくる魔物の群れを退けることが出来たってわけよ。
スタンピードの影響を受けた魔物とは言え、この会場に集まる者達は『アイゼン・クラフト杯』を勝ち抜かんを鍛錬を積んできた強者達。 迅速な対応を見せ、スタンピードの第一陣制圧の被害を最小に収めた。
まぁ… ただ、一人を除いてだがな。 …俺は決勝戦で負けったショックを引きずり、周りが魔物と戦っているさなか、一人上の空。 目の前にいる魔物は俺の視界の中ではぼやけていて、とても強大な魔物に見えた。 そんな魔物を目の前に俺は恐怖の感情ではなく、死ねば終わることが出来るという一種の開放を受け入れるよう、剣を抜かずその場で立ち尽くしていた。あの時の俺はそれほど人生がどうでもよく思ってしまっていたんだ。
戦う気力、剣を振る気力…嫌、動く気力すら無い俺を身を挺して庇ってくれた奴がいた。
戦場で戦意を失った奴は真っ先に死ぬ。 この世界の常識であり、必然。 集団戦において、周りを気にしながら戦うリスクは高い… そんな中、一人を庇いながら戦うとなると尚更だ。
俺は思わず、顔を上げその人物に焦点を合わせる。 そこに立っていたのは、決勝で当たった人物。 俺が横に並びたいと、密かに憧れていた…ワンダだった。
「な…何で…」
俺の事なんて眼中に無い思っていた。 俺の事なんて気にも留めていないと思っていた。 そんな相手、危険を顧みず俺を守ってくれているこの状況に、俺は思わず声を漏らす。
「何でって? 勘違いするなよ… 自分にムカついたから近くにいた魔物に八つ当たりしているだけだ。
はぁ…俺はこんな弱い魔物に身を投げ出すような『弱い奴』をライバル視していたと思うと恥ずかしくなってくるな。
『アイゼン・クラフト杯』で毎年、毎年武器と戦術を変え決勝まで上がってくる見慣れた顔の奴。 器用でない俺は、毎年同じ戦術で負けないよう、必死に鍛錬を積む日々。『1回ぐらい負けても良いんじゃないないか?』『今回は怪我で出場しなければ努力しなくても済むのでは?』と心にいる悪魔の囁きを何度も耳にし、辛い鍛錬から逃げ出したい時が何度もあった。 それでも、俺は日々の鍛錬から逃ず、剣と向き合い『アイゼン・クラフト杯』に臨み今日も何とか勝てた。 そんな、意識していた相手が目の前で弱い魔物にやられそうになっているときた。
何度も言うが、俺はこんな『弱い奴』をライバル視していた過去の自分にムカついたから魔物に八つ当たりしているだけだ!」
俺の方を振り向かず、ワンダは一人そう言い放った。
俺は、ワンダのその言葉を聞き、色んな感情が溢れ出した。 俺のことを認知してくれていたという『喜び』、密かに憧れていた人物から言われた失望の言葉からくる『悔しさ』と『恥ずかしさ』、最後に『怒り』。
決勝を何度も戦って来たにも関わらず、ワンダの声を聞いたのは、今回の罵倒に近いさっきの言葉が初めてだったのだ。
決勝で当たった時、一度でも話してくれていれば俺はここまで落ち込むことは無かったのに…と、全てワンダが悪いことにし、俺自身も込み上げてきた怒りを周りの魔物に向け発散した。
「…俺を『弱い奴』って言ったか? 俺は!こんな弱い魔物から守ってもらう程の『弱い奴』じゃない! 大体、お前が毎試合事に無言でスカしているのが悪い!全部お前の態度が原因であって、俺は魔物にやられそうになっていたわけじゃねーからな! それに、盾の裏で引き籠もった戦い方をしている奴に雑魚呼ばわりされたく無いね。 お前の戦い方は対人戦向きであって対魔物戦に置いては殲滅力に欠ける。 お前こそ引っ込んでろ!」
溢れ出した感情が全て怒りに変わり、溜め込んでいた不満を吐き捨てた。
俺の豹変ぶりにワンダは驚きつつも、少し安心した様な表情に変わった。
当時の俺にはそんな変化を感じ取れる程の能力は無かったから、気が付かなかったが…今思うと、ワンダは敢えて俺を怒らせる言い方をして、俺の正気を取り戻させてくれたのではと思っている。 恥ずかしくてワンダには聞けないがな。
そこから、俺とワンダの言い合いは止まらず、第二陣、第三陣と襲いかかってくる魔物の群れをついでに薙ぎ払いながら言い合いは白熱していった。
モンスタースタンピードを聞きつけ、部隊を編成し、現場である会場に騎士団達が駆けつけてくる頃にはモンスタースタンピードの元凶である、ボアレットの上位種『ブラッドボア』は俺とワンダが既に討伐してしまっていたらしい。
俺は、言い合いに夢中で倒した魔物の種類をみていなかったが、周囲の人達曰く、ワンダが迫りくる魔物の攻撃を盾でいなし、生まれた後隙に俺が槍で急所を突く。 この一連の動作で『ブラッドボア』も討伐してしまったらしい。
意図せず得た功績『モンスタースタンピードの鎮圧』の報酬として、大金貨10枚と騎士団入団を認められた。
当時…今でもか。 騎士団入団は男性女性問わず憧れの職業であり、騎士学校に通っていても、全員が全員騎士になれる訳では無い。 騎士学校の校内評価である全ての教科の平均を考慮した成績上位者しか入団は認められていなかった。 俺は剣の鍛錬のみに焦点を当て学校に通っていたから勉強は勿論、礼儀作法や言葉遣いも忘れてしまっていた。 つまり…俺がどれだけ剣の腕が立っても、俺の校内評価は最低。 今から頑張っても、騎士団入団は叶わぬ夢だったんだ。
騎士団に入団し、配属された隊はワンダと同じ小隊。 今思い返せば、あの日を境に、俺はワンダに遠慮することを止め、思ったことをそのまま口にしていた。
入団当初はぶつかり合うことが多かったが、互いが互いを理解し始め、精神も成長してきた時…俺らは親友になんていた。
支え合いながら、沢山の任務を共にこなし…ワンダは騎士団長。 俺は第二小隊長と自分の部隊を持つまで来た。
認める、ワンダは天才だ。 平民の出で、騎士団長にまで上り詰めるなんて誰でも出来ることでは無い。 騎士団長就任と同時に爵位を与えられているからもう平民では無いが、貴族になったからといって奢らず、誰とでも分け隔てなく接するようにまでなった。 気づけばワンダも良くしゃべるようになり明るくなった。
昔の話を聞いても余り想像がつかなかっただろ?
だが、これは全て事実… これが俺達2人のクソガキ時代の出会いだ。」
長々と俺はそう語った。
〜イブの視点〜
フェルダさんが話し終え、私が分からなかった『モンスタースタンピード』のことや『ブラッドボア』のことなど聞いているとき、ようやく騎士団長さんが店に入ってきた。
「………」
顔を見合わせ無言の騎士団長さん。
「お〜 ワンダ。 遅かったな。 こんな時間まで何してたんだ? 俺達3人共既にシチューは食べ終わってるぞ。」
フェルダさんは騎士団長さんを個室に招き入れながら悪びれる様子を見せず言った。
「…おい。 フェルダ。 俺は冒険者協会外で待ってと言わなかったか? 近くの店ならまだ分からなくは無いが、どうして冒険者協会から遠い店でご飯を食べているだ〜!! 俺がどれだけ走り回ったか理解できるか?!10件以上の店を回ったんだからな!」
フェルダさんが話しかける前から、騎士団長さんの顔が暗く、何があったのか気になったけど…すぐにその理由が分かった。
「フェルダさん…伝えてなかったの?」
私は思わずフェルダさんの顔を見て聞いた。
「ワンダ…お前正気か? 冒険者協会に入る時、お前はこう言った「送った2人を俺が戻るまで、帰らせないでくれよ。 それと…お前には難しいかもしれないが、2人には丁重に対応してくれ」と。俺なりの最大限のおもてなしをお前は否定するのか?! 2人とも店にいるし、嬢ちゃんはこのシチューを美味しいと言って、大盛り2杯を食べてたんだぞ! 俺は充分頼まれた役目を果たしただろ!」
騎士団長の怒りを感じ取ってフェルダさんは不満を漏らす。
フェルダさんの言い分は分からなくは無い…けれど…抜けているんだよな…
「フェルダさんはどうして、この店に行くことを騎士団長さんに言わなかったの?」
口を出して良いのか分からなかったが…私はどうしても気になり聞いてしまった。
「それはだな〜 俺にはこれ以上のおもてなしを考えることはできなかったのと…ワンダが冒険者協会に入っていった後に思いついたから言う機会がなかったんだ。」
そう、平然とそう語るフェルダさん。
ここで私は気が付いた。 フェルダさんて…『バカ』なんだ。
店の人に顔を覚えられている時から少し思っていたけど…過去の話を聞いて、今のやり取りを聞いて確信に変わった。
「…もう、いい。 嬢ちゃん、レイは何処にいるんだ? 嬢ちゃんを、置いて何処かに行くようなことはしないだろ?」
騎士団長は頭を抱え言った。
…あれ? そう言えば、レイ先生… お手洗いって言ってたけど、戻ってくるの遅くない? フェルダさんの話が始まる前から行っていたと思うんだけど…?
「レイ先生は、今お手洗い中… ちょっと戻りが遅いから私様子見てくるね。」
2人に断りを入れ、私は一人店にあるトイレ前に来た。
コンコン… 「レイ先生~? まだ、入っているの?」
私はドアノブを叩く。
あれ…ドアノブが回る? え?
「レイ先生な…何しているの? その魔法って、光魔法? 怪我をしたの?」
トイレの鍵はかけられておらず、私はゆっくりと扉を開き、中を確認する。
そこに立っていたのは、後姿のレイ先生。パット見た感じ傷跡は見当たらなかったけれど、綺麗だったはずの洋服についた汚れが目立った。
私に気がついてレイ先生はすぐに魔法を止めたけど、ドアをゆっくり開けた時、隙間から少し見えたのはレイ先生が光魔法を自身に使っていた姿だった。
「あ、イブちゃん。 どうしたの? もう少ししたら戻るからまっててね。」
レイ先生はずくに振り返ると、何もなかったかのように言ったが…レイ先生の目線が外れ、手が小刻みに震えていたのを私は見逃さなかった。
今聞いても、話してくれなさそうだったので、辺りを見回し状況を確認しようと、辺りを見回し聞き耳を立てる…
「あ〜 スッキリした〜 前合った時、楽しめなかった分、発散できて良かったね〜」「それな〜 異常者が楽しそうにしてんじゃねぇーよってね。」「トイレじゃ狭くてできること少なかったからさぁ、今度はもっと広いところ連れて行かない?」………
楽しそうに話す3人の声が店の外から微かに聞こえた。
…3人の話している姿は見えなかったけど…私はこの声に聞き覚えがあった。
ノーザンモスト帝国に入国する時、私がぶつかった3人組の声と同じだった。 レイ先生に何があったのかと聞いてはいないけれど…私の直感が告げていた。「あの時の三人組が関わっていると」 私はそう思った時にはもう、入り口まで駆け出していた。
「…イブちゃん! ま、待って」
震えたレイ先生の声が私の後ろから聞こえた。
しかし、私の足は止まらない。…止めては行けない気がした。 ここで足を止めてしまったら、また3人組にレイ先生が嫌がらせを受ける可能性があるということ。 私たちはまだこの国に滞在する、昨日今日の遭遇は偶然で、もう会わないという保証がない限り今のうちに解決しておきたい一心で、レイ先生の静止を聞かず追いかけようとした。
「国内での抜刀行為は原則禁止とされている。 嬢ちゃんも騒ぎにしたくないだろ? その短刀を鞘にしまってくれ。 何があったんだろ? 話してくれないか?」
店を飛びだそうとした私の前を遮り言ったのは騎士団長だった。
騎士団長は私を諭すように優しく言ってくれたが、今の私には響かない。 私の行方を阻む騎士団長さんは、今の私にとって邪魔者としか映っていなかった。
「そこどいてよ… 私にはやらなきゃいけないことがあるの!」
3人組が何処かに行ってしまう前に、問い詰めようと焦っていた私は騎士団長に飛び掛かる瞬間、レイ先生の悲しむ顔が頭をよぎり、体がピタリと止まった。
今この場で、騎士団長さんを傷つけてしまった後に起こる未来。
子供がやったことと、騎士団長さんが仮に私の謝罪を受け入れたとしても、店の中の出来事…確実に騒ぎになる。 そんな騒ぎを起こした私達…私はこの国に滞在し続けることを許可されるのだろうか?
それに、この過程は騎士団長さんが私の謝罪を受け入れる前提の話だ。 もし、私の一振りで謝罪も聞けない姿にしてしまっていたら、私はこの国で恐らくお尋ね者になっていただろう。 しかし、私が恐れることはこんなことではない…私は本能的にもレイ先生に嫌われてしまうことを恐れているんだ。
冷静に考えてみると、そもそも事情を聞いてきただけの騎士団長さんに八つ当たりまがいの暴力を振るおうとしていること自体がお門違いな話という事にその時の私は気が付けず、一瞬の中で考えることが出来たことは、騎士団長さんを傷つける行為はいけないことであり、レイ先生の望むことでないという事だけ。
本能がレイ先生が嫌がることだと感じ体を静止させた。
三人組を追いかけるためには、騎士団長さんを超えて外に出なければいけないが、騎士団長さんはどいてくれる気配がなく、傷つけることもダメ。
やりたい事を何もなせない今の状況が嫌になり私は叫んだ。
「……… ……何で邪魔するの …レイ先生が傷ついているんだよ… お前は何とも思わないの… レイ先生から聞いたよ…レイ先生の育ての親…なんでしょう? …なら…なら何でレイ先生の為に動かないんだよ! …そんなの …そんなのお父さんなんて言わないよ!!」
勢い任せに放った言葉。心の中で少しずつ大きくなっていた騎士団長さんへの感情。
騎士団長さんはついさっき店に入ったばかりで状況を把握しているはずがなく、騎士団長という個人で勝手に動けるわけでもないことぐらい、私だって分かっていたのに… レイ先生がこの国で受けた嫌がらせの全てを騎士団長さんのせいにしてしまった。 後先考えずに言い放ち、騎士団長を突き飛ばし私は外に駆け出していた。
感情に流されるまま言った私の言葉は騎士団長さんの事を一切考えていない自己中心的な発言…後ろにいるレイ先生にも聞かれていたと思うと私は振り返ることが出来ず、その場から逃げ出すしか出来なかった。
外に駆け出していた時には、自らの過ちを悔い、早く謝った方が良いことは理解できていた。 しかし、私の足は店と反対方向にかけていた。
溢れだした不安という名の感情。 今のかっこ悪い姿を人に…レイ先生に見られたくないという『自尊心』が私を店から遠ざける。
「はぁ… レイ先生を守るとか言って…結局何もしてあげられてない。 挙句の果てには、騎士団長さんへの八つ当たりって… 私… かっこ悪いな…」
騎士団長さんに言い放った言葉…あれには、勿論、三人組への怒りや焦りも交じっていたのだが、一番大きな感情が隠れていたと思う…それは『嫉妬』…レイ先生が騎士団長さんから離れたと初めは言っていたけど…レイ先生が騎士団長さんの話をするときはとても楽しそうで…私は心の片隅でそのことに嫉妬していたことを理解した。
お疲れ様です。 杯の魔女さんです。 綺麗で、続きが気になるとこで話を切った後、後書きが来るの…今話はあまりうれしくないな… 今回のお話、結構頑張りました。 次回もお楽しみに




