30.冒険者登録
投稿日 2026/1/10
「イブちゃん~ 起きて~ ご飯できてるよ~」
レイ先生に起こされ、目を覚ます。
目を開き、レイ先生をとらえる。一夜明けた後のレイ先生はスッカリ元気になっていたので安心した。
「今行く〜」
軽く返事して、レイ先生の待つダイニングルームへと向かった。
「今日は朝から冒険者協会行くんでしょ? つまり、私も形だけだと思うけど、レイ先生と同じ冒険者になれるってことでしょ!」
ご飯を食べながら、レイ先生と話す。
今日1日の予定をざっくりとレイ先生は言っていたが… 朝食が美味しくて入ってこなかった。 夜ご飯がプリンだけだったということもあり、私はお腹がすいていたようだ。 話を聞く余裕なんて無かったのだよ!
朝食中、私から話しかけたのにも関わらず…今日の予定はレイ先生と離れなければ大丈夫でしょ〜と思いながら、頭に残さず料理を次々と口に運んだ。
ご飯を食べ終え、歯を磨き、着替えをしてレイ先生の部屋を出る。
私は冒険者協会の位置が分からないため、レイ先生と手を繋ぎながらゆっくりと横を歩く所数分、レイ先生が冒険者協会を指差した。
レイ先生が冒険者をやっているからだからだろうけど、数分で着く所に冒険者協会があるのは、随分と便利な場所に住んでいたんだなと思ってしまった。
私なんて…会社に行くために毎朝早くから起きて初発に乗らなきゃいけなかったのに… こう考えると…レイ先生、本当はお金持ちなのでは?と言う疑問もよぎったが黙っていることにした。「冒険者として充分な稼ぎがあるので、家庭教師辞めます」なんて言われたら嫌だからだ。変な妄想を膨らましている間にレイ先生に引かれ私は冒険者協会の大きな扉を押し、入った。
「イブちゃん、ここが冒険者協会『ノーザンモスト帝国支部』よ。 ここではこの国の問題事がほぼ全て依頼化されているから、依頼が無くなる事が無い大きな支部なの。 冒険者登録や、ランク昇級試験はここみたいな大きな支部出ないと出来ない事があるから気をつけないといけないの。イブちゃん物知りだから知ってたかもしれないけどお浚いね。 早速、受付嬢さんの所に行ってイブちゃんの冒険者登録しましょうか…あっ…」
広い冒険者協会の中でレイ先生は言った。
冒険者協会の中は私の想像を超えた広さだった。 私の本を読んで得た知識では、『ロビーには依頼書が貼ってある壁があり、数個のカウンターがあるだけの簡素なもの。』と書かれていた記憶があるのだが…ここの協会のロビーは…広かった。
ロビーに設置されているものは特に変わった物は無く、ただただ大きく、多いのだ。 受付カウンターなのかわからないけれど、入り口から入った正面には数十人の受付嬢さんと人数分のカウンター。
右の壁には大きなボード…そうだな〜学校とかにおいてある黒板を思い出して欲しい、あれを2枚並べた大きさのボードだ。 そのボードに沢山の紙が貼られていた。 恐らくあれが依頼事なのだろう。
左側にはちょっとしたバーと、沢山のイスとテーブルが置いてあった。 周りの会話を盗み聞きした感じ、パーティーが集まるまでの休憩所といったところのようだった。
大きい冒険者協会の規模には流石にビックリさせられたね。
「えっと… イブちゃんちょっと待つことになるけど…我慢してくれる? その〜見たところ、私の事を担当してくれていた受付嬢さん今忙しそうだから…
ほら、あそこのイスに座って待ちましょう。飲み物も飲めるから好きに言ってね。」
休憩所の角を指差しレイ先生言った。
慣れてきたのか、私の前ではオドオドしなくなったレイ先生だったが、久しぶりの冒険者協会の雰囲気は慣れないのか、内気なレイ先生が出ていた。
少し懐かしい雰囲気を感じ面白かったが、同時に私の屋敷に来る前まで、冒険者協会に来るたびに担当受付嬢さんが飽くまで角席で待っていたのかと思うと心配にもなった。
「イ、イブちゃん。 そ、そんな目で見つめないで〜 私はただ親身になって聞いてくれる受付嬢の人が担当してくれたほうが冒険者登録もスムーズにす、進むと思ってのことだからね。……まぁ、私が話せる人がその受付嬢さんしかいないのもし事実なんだけど…」
私のそんな顔を見て、慌てて弁明に入っていたが、最後白状したように弱音を吐くレイ先生だった。 そんなレイ先生を見て私の顔は更に心配になった。
レイ先生を担当していた受付嬢さんが空くまで暇なので、レイ先生に買ってもらったジュースを飲みながら他の冒険者の話を盗み聞きすることにした。
「暇だな〜 お前良い依頼あったか? 俺がざっと見た感じ、俺じゃ手に負えない様なモンスターの素材採取だらけでやる気消えたわ〜」
「それな〜 討伐依頼以外だと、雑用見たいな依頼ばっかでやる気でね〜よな〜。 今日どうするよ、俺は雑用は嫌だぞ?」
「雑用は嫌か〜 それなら今日は休みにしないか?
もう少ししたら、ここの裏にある訓練所で昇格試験が行われるらしい。 俺らの知ってる奴らも受けるみたいだから落ちたときに笑って励ましてやろうぜ〜」
「お前、ただ昇格できなかった奴笑いたいだけだろ? 性格の悪いやつは嫌われるぞ〜」
数人の冒険者は朝からアルコールの匂いを撒き散らしながら大きな声で喋っていた。
酒癖の悪い人にいい印象は持たないが、面白い情報を知ることができた。 もう少ししたら昇格試験があるんだね。 せっかく来たのだから見学とかできないのかな〜などと考えている時、レイ先生がキョロキョロした後、私の手を引き受付嬢さんがいるカウンターに速歩きで向かい出した。
つまり、担当の受付嬢さんが空いたってことね。
「大変申し上げにくいのですが…冒険者登録には年齢制限がありまして…その年齢制限としてこの国では10歳からと、決まっています。 他の国も大体10歳からであって、特例が無い限り冒険者協会の規則に従ってもらいます。
レイさん、ごめんね。 協会の決まりだから、私じゃどうにもしてあげられないの。
その〜お嬢ちゃん。 もう少し大きくなったら登録しに来てね! お姉さん待ってるから。」
受付嬢さんはそう言った。
私は少しごねてみたが…「協会での決まりだからごめんね。」の一点張りで私が折れてしまった。 この受付嬢さんは、生粋の仕事人の用だ。
「受付嬢さん…今日昇格試験あるんでしょ? せめて、その見学くらいはさせてもらっても良いよね?」
せめて、楽しませて欲しいと言う思いからダメ元で言ってみた訳だが…アッサリと了承を得ることができた。
あ、見学とかは自由にしていいのね。
そう言う事なので、私達はロビー横から抜けれる通路を進み、ロビー裏にある、ロビーと同じぐらいの広さをした訓練所に来た。 ロビーの広さにも驚いたけど、そのロビーと同じ大きさの訓練所が後ろにあるとは思っていなかったね。 この冒険者協会の建物どれだけ広いの?
「あの〜 訓練所に着いたのは良いけど… 受付嬢さん? 聞いていいのか迷ったけど…どうして受付嬢さんもついてきているの?」
私達の後ろを自然な雰囲気を出しながらついてきていた受付嬢さんに思わずツッコミを入れてしまった。
「お〜お嬢ちゃん。 いい質問をするね。 この時間は受付ロビーが空く時間帯なんだよ。 だから、手の空いている私のような受付嬢も、昇格試験を見に来ても、大丈夫ってわけ。 お嬢ちゃんが気になっている事は、身近な私も気になっていてもおかしくないでしょ? 手が空いているのなら少し持ち場を離れても、問題になることはないでしょうからね。」
受付嬢さんは意気揚々と仕事をサボる宣言をしていた。
…全く、私のさっきの言葉返してほしい。この受付嬢さんは『生粋の仕事人間』などでは無かった。寧ろ真逆なのだろう…面倒事を嫌い、面白そうなことのためなら仕事をサボることもする不真面目人間なのだろう。
今思い返せば、私が早々に駄々をこねることを諦めたのは正解だったのだろう。 こう言う相手は他人の事を気にしない性格が多いと私は思っている。そして、恐らくこの受付嬢さんには当てはまっているのだろう。
現に今から行われる昇格試験を見てワクワクを抑えられていないようだった。
「あ! 試験を受ける人たちがぞろぞろ入ってきていますよ。 ん~ 今日は主に『Cランク昇格試験』を受ける人たちですか… つまり、対人戦内容を問われる試験ですね。 いや~ 見に来た甲斐があるというものです。 Eランク、Dランクは特技を見せるだけで、激しい戦闘を見ることが出来ませんからね。 普段依頼を受けていく冒険者さんの腕っ節を実際に見ることが出来る貴重な機会なんですよ。
私がレイさんの魔法の実力を知ったのも、レイさんのCランク昇級試験でした。 あの試験は圧巻でしたね〜 無数の魔法を同時に操り、試験監督に選ばれた格上の冒険者を圧倒してたんですよ。 あの時の試験監督になっていた巨漢の冒険者さんは気の毒でしたね… と、あ! あの巨漢の人です。 あの人は『ゴルド』さんと言ってBランク冒険者さんですね。…今日の昇級試験も担当するんですかね?
試験監督を担当できる程の冒険者さんの数が足りていないのは把握しているんですけど… ゴルドさんの試験は他の人より合格率が極端に低く、いい噂を聞かないんですね。 一時期、裏で自分に勝ち、合格した相手に嫌がらせをしているとか、何とか… 酷い噂が絶えない冒険者さんなんですねよ、彼。」
受付嬢さんの話は、私が深堀りするまでもなく、一人で話を広げ、時間があっという間に過ぎ、昇格試験開始の時間になった。
***1時間後***
「いや~ どの試合も激しさはありましたが、合格者ゼロですか。 あのゴルドさん相手にして、楽に突破する人はいませんでしたね。
まぁ、今回は試験監督がガチすぎたところもありましたから、今回受けた人たちには心折れず次回も頑張ってほしいですけどね。」
試合結果をみて、受付嬢さんは一人うなずきながら言っていた。
「レイ先生、あの試験監督をしている人強いの?」
私が言った質問に対して直ぐに答えが返ってきた。
「あの人は強いですよ~。 前提として、この国の冒険者協会に登録されているBランク冒険者の数は両手で数えられるくらいしかいない中、早くからBランク冒険者に昇格した人です。
ここの冒険者協会登録している冒険者の中に前衛を務めることのできる人は沢山いますが、ゴルドさんは一番斧の使いが上手い人とよく言われています。」
そう教えてくれたのは、レイ先生ではなく受付嬢さんだった。 ありがたいけど…私はレイ先生に聞いているんだよ… レイ先生、手を震わせてどうしたのかな。 寒い…? …え、もしかして…。
「イ、イブちゃん…昇格試験も終わってしまったことだから、そろそろ別の所に行く? …あれ? イブちゃんは?」
レイ先生が横で話していたはずのイブちゃんに声をかけたが、返事は返って来なかった… 返せなかった。
私は、私が感じた違和感を払拭する為、その場から動いていた。
「あれ? さっきまで横にいましたよね? う~~ん… あ!」
受付嬢さんが辺りを見回した後、訓練場の中心を指差した。
「おじさん。 おじさん!! おじさんって強いの? 見ていた感じ、私の知っているBランク冒険者の人より弱そうだったんだよね。 良かったら、私もおじさんの試験受けてみたいな~」
見ているだけでは退屈だったの、運動がてらこのおじさんに付き合ってもらいたいな〜と、思い少し挑発する。
周りからは「正気か、嬢ちゃん?」「あの嬢ちゃん死んだぞ」など不吉な発言が多く飛び交っていたが、気にしない。
筋肉質な脳筋タイプは挑発に弱いって相場は決まっているのだよ。 レイ先生と同じランクなんでしょ? 見せてもらおうかな? 私の予想通りなら…
「嬢ちゃん… 本気で言っているのかい? お嬢ちゃんの用な体付きだと、俺が手を抜いていても怪我だけでは済まないぞ?
俺は外見と違い優しいんだ!今なら謝るだけで許してやるぞ…謝るか? ちゃんと額を地面につけ、詫びる姿勢を作ってからの謝罪以外受け付けないからな?」
昇格試験を担当したBランク冒険者さんは顔や手をピクつかせながら言った。
周りの声は「素直に謝っておけよ〜」「ラッキーだったな〜嬢ちゃん」など。 最初から私が勝てないと思われている発言ばかり。
全く…つまらない。 そんな内、レイ先生と目があい、表情を読み取るとこが出来た。 レイ先生の表情は、私がやられる心配をしている顔ではなく、私がやり過ぎないかを心配している顔をしていた。 …多分。止めてこないからきっとそう。
「と、なると… コホン! おじさん、私に負けるの怖いの? やっぱり自分より強い相手とは戦いたくないんじゃん!
試験の時に感じたんだけど、おじさん弱いもの虐め好きでしょ? 一方的に攻めている時の顔すごっかったね。 私、そう言うタイプの人嫌いなんだよね〜。
どうする? 逃げるなら今の内だよ? お・じ・さ・ん」
私は最大限おじさんを煽る。
「よ〜しわかった。 今から追加で試験を行う!!今日の試験は冒険者協会から全て俺に任されているから俺がルールを決める。いいよな?
本来の試験内容は決着が直ぐについて面白くないだろ? 相手を降参されるか、意識を飛ばすのどちらかが勝利条件だったが… 今から行う試験の勝利条件は1つ、相手の意識を飛ばすのみだ。 その他は変更点なしってことで良いな。
このくらいの変更で逃げ出すようなガキではないのだろう? 散々俺を煽ってくれて覚悟は出来てんだろ?」
怒りを隠す事なく、大きな声でおじさんは言った。
…私も人が悪いな〜 相手を怒らせ、合法的に殴れる状況を作り出すなんて… おじさんも怒っている様子だけども、私もおじさんに怒っているんだよ。
私が感じた違和感はほぼ確信へと変わっていた。レイ先生が止めて来ないのが分かりやすい理由だ。
言っているでしょ? レイ先生を傷つける奴は許さないってさ。 過去のことでも今にも影響が出ているのなら、それは同罪だよ。
ここで私が、このおじさんを殴り痛めつけることはレイ先生にとって過去の清算にならず、私の自己満に終わってしまうかもしれない。
けれど、私は止まれない。昨日から振り上げている拳の落としどころを見つけないと、私はおかしくなってしまいそうなんだ。
冒険者協会に入った時も、観戦していた時も…レイ先生の手を握って歩いているだけでわかる。 定期的震え出すレイ先生の手からはこの国で、この街での苦痛を心に刻まれているのだろうと。
あのおじさんが出てきた時、レイ先生の手は昨日の3人組と即遇したときと同じ震えを感じた。 私の怒りはそれだけで充分。
自己満でも何でもいい、この振りかざした拳を叩きつけるまで、私の怒りは収まらないんだよ。
「レイさん。 と、止めなくてもいいんですか? あの子本当に殺されちゃいますよ? レイさんもゴルドさんの噂くらいは聞いたことあるでしょ? あの人は本当に何をするか分からないんですよ? 早く止めないと…? レイさん? 大丈夫?」
観客席の方から受付嬢さんの声が微かに聞こえた。
しかし、今は確かめなければいけないことがある。勘違いなら、私は謝ってもいいが、私の直感が言っている…この人は悪だと。
「ねえ、おじさん。 1つ聞いていい? 冒険者のレイって人知ってる? 昔、彼女に何かした? 回答よっては〜私許さないからね?」
鋭く睨みつけながら発した。
〜受付嬢『リュミエール』の視点〜
私は『リュミエール』。 冒険者協会ノーザンモスト帝国支部で受付嬢の一人として働いているの。
受付嬢の仕事内容としては主に依頼を斡旋や冒険者のサポート、依頼の内容の情報収集など。
担当している冒険者さんが無事依頼をこなせるかは受付嬢の腕にかかっていると言っても過言ではないのよね。
今日も今日とて、冒険者のサポートをする為に朝早くから協会に出勤し、準備を開始する。
朝から、冒険者さん達が持ってくる依頼の受注ラッシュを捌き終え、一服しているとき、懐かしの人が私の受付カウンターに来た。
「え! レイさんですよね?! 長期依頼を受けていた筈では? 何かトラブルありましたかって… 思い出してみたら、依頼は1ヶ月間でしたね。 今日から復帰ですか?」
懐かしの顔を見て、私は思わずカウンターから乗り出し言った。
レイさんは私が初めて担当した冒険者さんだ。 物静かな人だけど、魔法の腕は本物なんだけど…人見知りが原因なのか、パーティーを組まず1人で活動している冒険者さんだ。
前回、冒険者協会に依頼を探しに来た時、レイさんに勧めるようとして取っておいた依頼を勧め、長期依頼に向かった筈のレイさんが今日、子供と一緒に私の前のカウンターにやってきたのだ。
「リ、リュミエール… ひ、久しぶり。 依頼のことが覚えているのね。 家庭教師の依頼、話し合って延長…になったんだよね。 だから、今日はこの子『イブちゃん』の保護者として来たの。
この子の…イブちゃんの冒険者登録って出来る?」
レイさんが言った。
護衛依頼や討伐依頼の延長は良く話なので、レイさんの依頼延長の話は不思議に思わなかったが…となると、今レイさんの横にいる子は依頼対象者と言うことになり、3歳児と言うことになる。
レイさんの頼みなので聞いて上げたいけど、ルールを破りこの子に資格をあげれる権力と勇気は私には無いので…「大変申し上げにくいのですが…冒険者登録には年齢制限がありまして…その年齢制限としてこの国では10歳からと、決まっています。 他の国も大体10歳からであって、特例が無い限り冒険者協会の規則に従ってもらいます。…………」
断るしかできなかった。 ごめんレイさんルール何だよ。
その後、イブちゃんが「昇格試験を見たい」と言い出した。 観戦は自由なので私も休憩がてら見るつもりだったので、昇格試験会場であるカウンター裏の訓練場まで一緒についていくことにした。 サボりではないよ? 朝早くから仕事しているんだから、中休みが他の人より長くても許されるの!
移動中、イブちゃんはレイさんと仲良さそうに手を繋ぎながら喋っていた。 私だってレイさんと話したいこといっぱいあるのに、イブちゃんが横に居るせいで中々レイさんと話せない… イブちゃんに私は少し嫉妬してしまった。 私の方が知り合った暦が長いんだぞ!と、喉まで出かけた言葉を押し留める。 私はもう大人だから、子供相手にむきにならない…心に言い聞かせ自制する。
…でも、やっぱり羨ましい〜 レイさんの横は私の場所なの〜
無理矢理2人の話に入り、受付嬢になり蓄えた知識で話を広げに広げた。 私を仲間外れにして2人で話すのは…許さない!
沢山の話をしている間に試験時間になり、受験者と試験監督者が訓練場に集まり出した。
集まった人達を見回した所、皆Dランクの人だったので、今日の試験はCランク昇級試験だと判断できた。
私達、受付嬢にとっては激しい戦闘を実際に見るのは新鮮であり、いい刺激になる。
試験方式は一対一で試合。 スキルは全て使用可能。 受験者は試験監督者に一度でも試験監督に、攻撃を綺麗に当てると合格。 ルールは受験者が有利に聞こえるが、『綺麗に当てる』と言う曖昧な表現を使い、軽く当たった攻撃では合格を出さないという。
試験監督に試験ルールを任せている為、試験監督の言うことは絶対であり、少し忖度もあったりするのだが、今回はなかったようだ。 つまり、全員不合格。 ゴルドさんの実力は本物であり、攻撃を全て反らすことは簡単みたいだった。
「いや~ どの試合も激しさはありましたが、合格者ゼロですか……………」
本心ではあるけれど… これで今回の試験が終わる受験者の気持ちを考えると、可哀想と思ってしまう。
私の担当している冒険者さんも今回受験していたので、メンタルケアとかしないとな〜 など考えていたら、イブちゃんが姿を消したらしい。
イブちゃんを探すレイの姿は不安そう。 そんな姿を見たく無いので、目を凝らし辺りを見回した所… 訓練所の中央でカルドに話しかけるイブちゃんの姿があった。
何か話しているようだったが、カルドの顔をみると怒りを露わにしていた。
イブちゃんの言葉はよく聞こえなかったけれど、ガルドの声は大きく、私の耳にも聞こえた。
追加で試験を行う? イブちゃんが提案したの? 何しているの? さっきまでの試合を見ていたでしょ? イブちゃんに勝ち目は無い… 何でレイさんは止めないの… 何で… 何で……
そんな私の心配を嘲笑う出来事が起こった。
ガルドが試合開始を宣言し、一気に距離を詰める。 前に出る推進力をそのまま斧に乗せ振り下ろされた。
皆が一撃で試合が終わると確信する攻撃をガルドが繰り出した訳だが…その攻撃を受けたイブちゃんは、その場から動く様子を見せず、立ったまま短い短剣で受け止めたのだ。
イブちゃんの何倍も大きいガルドの両手斧、避ける以外の選択肢は無いと思われた攻撃は、イブちゃんにアッサリと受け止められ、振り返りざまにイブちゃんが返した反撃の回し蹴り。 巨体のガルドを宙に吹き飛ばし、30m程度ある天井に激突。 白目を剥いたガルドが自由落下し訓練場の硬い地面に叩きつけられた。
ガルドが開始時に宣言したルール通りなら、意識が先に飛んだ、ガルドの負けで終わる所…イブちゃんはガルドの首元を掴むと『バチッ』と強い音と共にガルドの意識が戻る。
既に実力差を理解したガルドの目は戦意は喪失しているようだったが、イブちゃんは止まる気配が無い。
ゆっくり歩みよると、倒れ付したガルドに容赦なく追撃を繰り出し、気絶するたびに『バチッ』と音を立てて、ガルドが目を覚ます。
数度繰り返された光景を見ていた私達観戦者側は、イブちゃんの心配からガルドへの心配に変わり、誰も関与できない状況に皆コソコソと言い合っていた。
戦闘経験が無い私にもわかる。あの間に割り込んだ時、私では無事では済まないと。 そして…試合を中断された時、イブちゃんの怒りが自分に向いたらと考えてしまうと…足が竦んで行動を起こせない。 受付嬢として不甲斐ない限りだ。
そんなことを考えていると、イブちゃんは2本の短剣を抜き、転がり倒れ付したガルドに歩み寄っていた。
イブちゃんが、何故初対面である筈のガルドにそこまで怒っているのかは、最後までは分からなかったが、怒っていることはしっかりと伝わってきた。
歩みよるイブちゃんを見た皆は私と同じことを思っただろう。『ガルドはもう助からないのだろう』と…
皆が諦め、人によっては顔を背け直視しないようにしていた時、訓練場の地面が突然隆起し始め、ガルドを飲み込みガルドの姿が見えなくなった。
イブちゃんが同様している様子だったので、イブちゃんの仕業ではないのだろう…なら、一体誰が?
「もう充分でしょう。 試合は終了です。 これ以上は収拾がつかなくなってしまいます。」
その人は何処からともなく訓練場に現れ、イブちゃんの前に立った。
お疲れ様です。 杯の魔女さんですよ〜。
今回は、冒険者登録の話し! と言ってもイブちゃんが幼すぎる為、登録を拒否されるところから始まるのですけどね。
初登場が2人と最後に謎の人物の3人。
受付嬢の『リュミエール』は最登場の兆しあり! 冒険者の『ガルド』は最登場の兆しなし? かな?
謎の人物も今後ちらほら出るかも。 凄い人の予感!
人物を多く登場させ過ぎると、読んでいる時『お前誰?』が起きるのは個人的に好きでは無いので、出さないようにしているけど…実際はどうなんだろ? 登場人物紹介とか作れば解決するのかな?
そんなことは置いておいて…今回は久しぶりの『他の人視点』を入れたので、思っていたより長い話になりました。 次回はイブちゃん視点に戻ります。
イブちゃんが怒った理由は次回明かされるかも?
次回お楽しみに〜




