表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/30

29.入国審査は付き物…ですよね…




「着いたぞ! ここが最北端の国『ノーザンモスト帝国』だ! 俺は、騎士団に報告をしなければいけないから、ここでお別れだが落ち着いたら騎士団に寄ってくれよ。」

レッドダイヤに揺られ数時間。 小隊長さんが帝国の入り口まで送り言った。


 レイ先生との乗馬は楽しく、道中の数時間はあっという間に過ぎて行った。

「小隊長さん〜 送ってくれてありがとう〜」

勿論、しっかり感謝を言って別れたよ、遠ざかる背中に向かってだけど…。 まぁ、また後で感謝を伝えればいいか… あれ?小隊長さんの名前…なんだっけ?


「イブちゃん、入国後の予定をもう一度お浚いするよ。目の前に大きな門が見えるでしょ? その門をくぐれば入国できるけど、入国する時入国審査が行われるの。 私は冒険者登録と同時に貰える冒険者カードが身分を証明してくれる物があるけど、イブちゃんは持ってないでしょ? 身分を証明する物がないときは入国時、入念な入国審査があること話したでしょ? だから…目の前に長く伸びる列に並び、順番に入国審査を受ける必要があるの。」

小隊長さんと別れたあと、レイ先生が向き直り私に言った。

 

「え? 列って? この?」

横にに見えるのは、長蛇の列で最後尾が見えない… そんな列に並ぶと言い出すレイ先生に思わず声が漏れた。

 そんな事はないだろう…そんな事があってはならない…真実を確かめるため、レイ先生に聞き直すが、帰ってきたのは言葉ではなく行動。

 私の手を引き列の最後尾へと連れて行った。

 レイ先生曰く、レッドダイヤに乗って入国門前までの時間を短縮することができた分、入国審査に並ぶ列が混んでいる時に着いてしまったようだ。 こんなことなら、小隊長さんに私達の入国審査をやって貰えるよう言っておいた方が良かったのでは?と思ったが…報告に急いで行ってしまったため、ここには小隊長さんはいない。

 わかったよ…素直に並びますよ。


 私とレイ先生は少し戻り、列の最後尾に並んだ。 



 ***2時間後***



 日が暮れ始めた頃、私達の順番が回ってきた。

 私が想像していたより、列の進行速度は早く、最後尾に並んだ時は1日待っても私達の順番は来ないのでは? と不安になっていたが、この国の入国審査は甘いのか、手際がいいのか… レイ先生と喋っていたらあっという間順番が来てしまって驚いてしまった。


「ようこそ。ノーザンモスト帝国へ。 まずは身分証の提出お願いします。」

爽やかそうな騎士さんが話しかけ来た。


 どうやら、今話しかけて来た爽やかそうな騎士さんが私達の入国審査を担当してくれる人のようだ。 見た目が怖い人よりよっぽど良いよね。

 まぁ〜 見た目が怖そうな人が担当でも、私くらいになると大人な対応をこなすことぐらい造作もないけどね! などと考えている間、レイ先生が入国時目的やら、滞在期間など必要な会話をスムーズに話し残す審査は持ち物検査のみになった。 レイ先生は冒険者カードがあるから免除されていたが、私は身分を証明出来る物を持っていないので免除はされないとレイ先生は言っていたのだが、爽やかそうな騎士さんは私を一見し入国料だけ求め、そのまま入国を許可してくれた。 


「レイ先生が言っていたより、ずっとスムーズに入国出来ちゃったね! まだ日が落ちるまで少し時間あるよ? 何処行く!」

レイ先生に向き直り言った。


 レイ先生は入国審査の短さに少し首を傾げていたが、私が話しかけたことで意識を切り替えたように私に向き直る。


「少し進んだ所に私が借りている家があるの。 そこで荷物を整理したら、大通りで一緒に夕食を食べるのはどう? イブちゃんもお腹空いているでしょ?」

レイ先生は私の手を優しく握り奥を指差し言った。


 レイ先生には私のやりたいことはお見通しなようだ。 全く…惚れてまうやろ〜


 握ってくれた手を離さないように気をつけながらレイ先生が指を差した方向にあるレイ先生の家に一緒に行く。 レイ先生は大通りの一角にある、マンション?見たなところの一部屋を借りているらしい。入ってみたところ、広すぎる訳では無いが、一人暮らしをするならば、充分過ぎるスペースを確保してある。 Bランク冒険者は収入が良かったのだろう。


 レイ先生の家で荷物を整理し終えた私達は早速、食べ歩きで有名な大通りの一つに私はレイ先生の手を引き駆け出した。


「イ、イブちゃん! ス、スト〜プ」

レイ先生が何か言っているがよく聞こえない。


 私のお腹は既に美味しい物を求め音を立て始めてしまったのだからー!


『ドンッ!!』


 食べ物の事を考えながら駆け出したものだから、前をよく見ていなく、人混みということもあり前から歩いてくる3人組の1人に衝突してしまった。 

 私はぶつかったくらいの衝撃では微動だにせず立ったままだったが、ぶつかった相手は後方に倒れ尻もちをついていた。  …これは…まずい…よね?


「痛った〜 ちょっと! 何処見て走ってんの!って…子供? …ちょっと貴方! 子供の教育がなってないんじゃないかしら?! って…貴方『レイ』? え?w 貴方レイよね? え?絶対そうじゃん。 何?w騎士団蹴って始めた冒険者も止めて、今はベビーシッター?」

ぶつかってしまった相手さんがそう言うと…


「え?レイ?……は?マジで?W」「あんた、まだ生きてたんだ~最近見ないから死んだのかと思ってたW」

後ろの2人が口々にひどいことを言い出した。


 「はぁ〜 ウザ。何楽しそうに暮らしてんの?私達の推薦枠を潰した挙句、ベビーシッターとか無いわ〜  貴方見たいな『異常者』そのうち首切られるわよw

 良い? お前は異常者なの? 私が今貴方を騎士団に突出してもいいのよ?w 思い出した? 私が上で貴方は下なの。 前みたいに遊んであげよ……」

口を挟む隙を与えず、吹き飛ばした相手は喋り続けた。


「…おい。 貴方が何を言っているか分からないけど、レイ先生を傷つける奴を私は許さないよ。」

愛剣に手をかけ、殺気を出しながらいった。


「イブちゃん… いいの。 これは私の問題だから…。 それに、今問題を起こしたら騎士団の人が駆けつけてくる。 今は我慢して… お願い。」

レイ先生は震える手で、今にも襲いかかりそうな私の手を離さず言った。


「何、あのガキ…」「ベビーシッターなんなら、ち、ちゃんと教育しなさいよ」「もう、行きましょう」

3人組は捨て台詞を吐き逃げていった。


 私は怒りを抑えきれず今にも抜刀しそうだったが、これ以上レイ先生に迷惑をかけたくなかったから、頑張って抑えた。 


「全く… 楽しい雰囲気が台無しだよ! レイ先生、早くご飯食べに行こ! レイ先生…? 大丈夫?」

3人組が見えなくなった頃、レイ先生に話しかけたが、レイ先生はうわの空だった。


 …お母さんが初めて野外の話を出した時、レイ先生の声は沈んでいて、元気が無かったことを思い出した。その理由として、さっきの3人組もあるのだろう。

 しかし、今の私に出来ることと言えば、レイ先生に寄り添って上げられるだけ。 問題を解決しようと動いたら、騎士団のお世話になる方法以外思いつかない。 迷惑をかけたくないけど、野外学習中レイ先生がつらい思いをするのも私は耐えられない。


「…イブちゃん。ごめんね。 せっかくの雰囲気を悪くしちゃったね。 わ、私は大丈夫だからご飯食べに行こ?」

レイ先生の言葉は平然を装うように言っているようにしか聞こえなかった。


「…今日は私が料理する! 今から材料買ってくるから、お金ちょっと頂戴! いい!レイ先生は真っ直ぐ家に向かってね! 周りなんか気にしないでね!」

決心して、レイ先生の方を向き言った。

 何回か言っているかもしれないが、私は料理が得意ではない… でも、傷ついたレイ先生の気持ちを考えずご飯を食べる程食い意地は強く無い!

 私はやれば出来る子供なんだ。料理が上手なお母さんの子供なんだ。 レイ先生を元気づける料理くらい作ってやろうじゃないの!!

 勢いよく駆け出し探す素材は『乳製品』。乳製品は、幸せホルモン『セロトニン』の材料になるトリプトファンを多く含んでいるから、気分を安定させるとか何とか。


 乳製品を使う食べ物で唯一私が作ったことがあるもの…。昔「作ろう!」と思い当たった理由…それは私がその食べ物…デザートが大好きだったから。 そんな私が大好きなデザートを、食べ元気になってもらいたいと言う思いも込めてね。

 材料は『卵』と『牛乳』『グラニュー糖』のみ! グラニュー糖の代用として上白糖や、三温糖など…グラニュー糖が無くても代用出来るものはたくさんある。 卵と牛乳は〜探せばあるでしょう!

 私が何を作ろうとしているか、分かったかな? 

答えは「プリン」! 


 私の動体視力の高さはステータスのおかげで高くなっている。 どこに何が売っていとか分からなくても、走り回るだけで、見落とすことはないのだ。

 騒ぎにならない程度の速度で見て回っていたので、思っていたより時間がかかってしまったが、無事『卵』『牛乳』『グラニュー糖』を調達することができた。

 後はレイ先生の家に行き、料理をするだけ。


「ただいま~ レイ先生はそのまま座っていいからね~」

帰宅した私を見て休んでいたレイ先生は立ち上がろうとしたが、私はそれを制し言った。

 いつもお世話になっている分、今日は私が慰めてあげる番! 慣れない手つきで卵をかき混ぜ、タイミングを見て牛乳と合わせ、容器に移し数分蒸す。

 後は固まるまで、冷蔵庫で冷やすだけなんだけど…この工程が長い…と、いうことでここは魔法の出番ですよね。 二つの容器ぐらいなら、制御しながら冷やすことぐらい私にもできる!と思う!

 


***数十分後***



 固まった…かな? 上に待っている間に作っておいたカラメルソースをかけて完成。 外観は『プリン』そのもの。 後は味だけ…


「レイ先生。 味の保証はできないけど…頑張って作ってみたの。 一緒に食べよ?」

普段食べていた味を再現できているか分からず、自信なくレイ先生を誘う。

 最初の一口はレイ先生に食べて欲しかったので、試食して味を確かめる行為はしていない。


「イブちゃん。 これは『プリン』?」

レイ先生は、少し驚いたように目を丸くしながら、そっとスプーンを手に取った。 時間がたったからか震えていた指先は、落ち着いていた。


「う、うん… 一応そのはず……だよ?」

自信のない私の返事に、レイ先生はふっと優しく笑った気がした。


「じゃあ……いただきます。」

スプーンがプリンの表面をすくい、プルッ、と揺れた。

 その一瞬、私の心臓も同じように揺れた気がした。

レイ先生は、ゆっくりと口に運び入れた。


「…………っ」

口を動かすだけで、何も言わない…


 えっ……まずかった!? やっぱり砂糖の量間違えた!? 牛乳もしかして違う種類だった!? いや、そもそも冷やす時間短すぎだよね… 慰めるつもりが空回りした…?

 私の頭の中で反省会が始まったその時。


「……おいしい。 イブちゃんありがとう。」

口の中のプリンを食べ終えた後、レイ先生は口にした。


「ありがとうね。 私がしっかりしいけないのに… イブちゃんが作ったプリン食べて元気出たよ。」

レイ先生はそう言って、私が出したプリンを一口、一口嚙みしめ食べ進めた。


 レイ先生の少し落ち着いた姿を見て安心し私もプリンを口に運ぶ。


「…………硬いや。」

一人呟く。

 プリンの出来栄えは完璧とは程遠い味をしていたが、レイ先生を元気づける事は出来たみたいなので良かった。


「レイ先生。 言いたくないなら言わなくても大丈夫なんだけど… さっき絡んできた三人組とはどういう関係? 話を聞くことぐらいしかできないけど…一人で抱え込むよりずっと楽になると思うよ」

2人プリンを食べ終えたタイミングを見て言った。

 思い出すだけで辛いかもしれない…けれど事情が分からないと力になってあげることが出来ない。


「…あの三人に絡まれだしたのは、学校を卒業する丁度1年前ぐらいの時。 登場一番人気の就職先とされていた騎士団への入隊。 学校での成績が一番いい人が騎士団への推薦枠を得られるという理由で、当時学校で一番の成績だった私への嫌がらせが始まったの。 卒業すればその嫌がらせも終わると考え卒場まで我慢していたけれど、私が学校を首席で卒業して騎士団に入隊した日から嫌がらせが悪化し、私は入隊したものの常に邪魔され騎士団に顔を出したことは一度もなく…私は騎士団を止め、時間にルーズな職業である冒険者になることにしたの。 そのおかげか、嫌がらせの頻度は下がったものの、町で出会うたび、私の弱みをちらつかせつつ嫌がらせは続いたの。

 言ってしまえば、嫉妬による嫌がらせ… こんな嫌がらせは時間が解決してくれるから。 イブちゃんが気にするほどのことじゃないの。」

レイ先生は苦笑いしながら締めた言葉。

 その言葉の裏にまだ隠していることがありそうだと直感的におもった。


 嫌がらせのレベルによっては、警察…ここでは騎士団の仕事なのか? どちらにしても、犯罪に当たると思う。 出社妨害は十分罪になり得るだろう、騎士団を頼ることが出来なかったのだろうか?…できなかった要因として、お父さんに迷惑をかけたくないという理由か… さっき言っていた『レイ先生の弱み』って言うのが関係しているのか。

 踏み込んで聞いてみようと思ったが…以前レイ先生が話してくれた過去話の時も『今は言えない』と最後話を濁していたことを思い出し、止めた。


「なら、街を出歩くときは常に一緒に歩くことにしようよ! そうすれば、あの三人組が絡んできたとき、私が前に立って追っ払ってあげる!! だからさ、せっかくの帰国でしょ? 一緒に楽しも?」

レイ先生を励ますよう言った。


「そうね… イブちゃんとの時間、彼女たちに気を使うだけ無駄よね。 イブちゃんありがとう。 話して少し楽になったわ。 

 今日はもう寝ましょう。明日は朝から冒険者協会にでもいきましょ。」

笑ってレイ先生は言った。

 その表情にはもう不安が感じられなかった。


お疲れ様です。 杯の魔女さんですよ。


今回は入国時のお話。

「レイ先生にが可哀想」という思いをしている人…多分何人かいると思います。→恐らく私が一番思っています。 何故って? この話を書く前からレイ先生が救われるシーンを既に書いてあるからだ!! もうちょっと待っていてください。 レイ先生は必ず報われます。 


少し遅くなりましたが、この機会を借りて新年の挨拶をさせていただきます。

「明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。」

以上!


次回もお楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ