25.や、野外学習?!
投稿日2025/11/9
ご飯を食べ終え、自室に戻った私は午前中の予定であるレイ先生の授業に向けて準備を始めた。
準備と言っても、歯を磨いたり着替えをしたりなど日常的に行うこと…言わばルーティンをこなすだけなのだが、私の足取りは重かった。
「レイ先生の授業は面白く私を飽きさせない工夫がされていて好きだけど…今朝の出来事があってまた顔を合わせるのは〜ね? 色々聞かれてボロが出てしまわないか不安なんだよね…」
そんなことを考えながら、授業に向かった。
「お、おはよございます。 今日の授業は外なんですね。」
ぎこちない挨拶になってしまった。
「おはよございます」って…普段ほとんどでない挨拶が出ちゃったよ。 私から出る挨拶なんて「レイ先生〜おはよ〜」なのに…私も同様が出てしまっているってことだよね。
「フフッ おはようイブちゃん。 今日はイブちゃんに見せたい魔法があるから外の授業にしたよ。
イブちゃんが親戚の集まりに行っている数日、今日の授業の為に練習したのよ。 この魔法は便利…で綺麗なの! イブちゃんとの相性は悪いかもしれないけれど…今見ておいて損はさせないわ!」
今朝…30日間のことには触れず、普段通りの優しい対応… 私、レイ先生好き。
「便利な魔法? なになに!知りたい!」
気まずさを忘れ、レイ先生に言い寄る
「気になる? この魔法はね、癒しの魔法と呼ばれている魔法(光)の応用した魔法(光)[神聖魔法] イブちゃんは私が使った所を何度かは見たことがあると思うけど、今日見せるのはもっと綺麗な魔法。
魔法名は『魔法(光)[神聖魔法・守護の大聖堂]』って言うのよ。
イブちゃんって『大聖堂』って見たことある? 新皇国に行っていたのならチラッとは見たのかな?
この魔法は自身の『魔力』を消費し続けることによって、疑似的に大聖堂を作り出すの。今回見せるのは『守護』の大聖堂と言うことで、発動者を全ての状態異常から守り、受けたダメージを『魔力』が肩代わりしてくれるというものよ。
便利な効果を与えてくれる代償に大量の魔力を消費するから、実践向きの魔法とは言えないけど…
『魔法(光)[神聖魔法・守護の大聖堂]』
私が、今この魔法を通してイブちゃんに伝えたいこと、なんだと思う?
『コストパフォーマンスが悪いから使えなくても大丈夫』って事かな?
『便利だから、いつかは出来るようになった方が良い』って事かな?
…この2つは違うよ。 イブちゃんはこの魔法を見て何を思った?何を感じた?
私はこの魔法を初めて見た時、発動した時『綺麗』だと感じたわ。
私はね…実践的な魔法もいいけれど、時にはロマンも大事にして欲しいと思っているの。
世界にはイブちゃんが知らないような魔法が沢山あるのよ、大きくなって家から出たとき、イブちゃんがまだ知らないような魔法を沢山目にするとおもうの、色々な魔法を見て感じて、その中でイブちゃんが惹かれた魔法をいつかは私に見せて欲しいな。
どうだった私の魔法? イブちゃんの目にも綺麗に映ってたかな?」
屋敷を、森を覆い尽くす程のドーム状に広がった光の聖堂が現れた。
「綺麗」
私は思わず、そう呟いた。
思わず口から出た『綺麗』… この綺麗は、森に広がる大聖堂に対してではない。 レイ先生の魔法技術に対して漏れ出た『綺麗』だった。
勿論、初めて見る大聖堂は綺麗だった…しかし、目を奪われ、思わず綺麗と言ってしまったのは、レイ先生の魔法構築技術に対してだった。
レイ先生の魔法は、私とは違ってスキルやステータスで無理やり使うのではなく、魔法を発動すまでの一連の流れを最適化したような速度と制度で発動されているように思う。
そんな、私がまだできない…私が将来的に追いつきたい技術を目の前で今一度見ると思わず『綺麗』と口からこぼれてしまったことに納得できるはずだ。
「イブちゃんも綺麗だと感じてくれてよかったわ。 ……。 大きな大聖堂の中にいる私達…この魔法を見ていると、私達の存在なんて、ちっぽけに感じない? イブちゃんが何に悩んでいるのかは分からないし、話したくないのなら、私から無理に聞くことはしない。 でも、本当に困ったことがあるのなら、私を頼ってくれると嬉しいな。 今朝のイブちゃん、様子がおかしかったからずっと心配してたのよ?」
スッと私の顔を覗き込みながらレイ先生が言った。
やっぱり心配かけていたよね… でも、私がプレイヤーである以上、ここでずっと過ごすことは出来ない。食事や睡眠、現実での人間関係…人間関係っていうほど頻繁に会う人、私にはいないからか気にしなくてもいいか。 一番重要なのは、『仕事』だ。 今は休みの期間に入っているからログインできているものの、再び仕事が始まれば、1日どころか、1週間、1ヶ月とログイン出来ない日が続くかもしれない。 この休み期間内に、どうするのかしっかりと考えておかないと、きっと後悔することになる…と思った。
「…………、…、…、 レ、レイ先…」
プレイヤーの事情なんてレイ先生に話しても理解できるとは思えないし、どう説明すれば良いのかまとまらず、口ごもってしまった時…
「相変わらずレイの魔法は綺麗よね。 それで、今日はどんな授業をしているの?」
お母さんが現れた。
「今日は、イブちゃんにもっといろんな魔法に興味を持って貰いたくて、私の中で一番好きな魔法であるこの、守護の大聖堂を使って見せていました。 昔、私を助けてくれた冒険者の人が使ってくれたのがきっかけで知り、最近練習して出来るようになったんですよ。
私的には、もっと外に出て色々な魔法を見て、感じた方がイブちゃんの視野が広がって良いと思っているんですけど… そう言う分けにもいかないですよね?」
冗談を言うようにレイ先生はお母さんに尋ねた。
「ん〜 そうね…。 イブちゃん! 野外学習と言うことで、森を出た先の国『ノーザンモスト帝国』冒険者になってきなさい。 冒険者カードは、身分証にもなるから早いうちに作っておいても良いでしょう。
そして、レイ! レイはイブの保護者としてイブちゃんをしっかり監視しなさい。
返ってくるまでが野外学習、節度を守って楽しんでいらっしゃい。」
とんでもないことをお母さんが言い出した。
私は一度、お母さんに抱っこされながら新皇国の端の親戚の屋敷に行った以外、この森から出たことがないない。
私が吸血種と言うこともあって、人種の国であるノーザンモスト帝国に行くのは恐いと言う思いもあるのだが、レイ先生が育った国を見てみたいと言う好奇心もある。
結界魔法もあるから日中でも動けるし、レイ先生が保護者なら何とかしてくれるでしょ。
「そういえば、レイを長い間この屋敷に拘束しちゃっていたわね… せっかくだから一度帰って挨拶とかしてきなさいな。 レイは可愛いから心配している人沢山いるんじゃないの?」
心配そうにお母さんが尋ねた。
「…私を心配してくれる人はあの国には…いませんから、大丈夫ですよ。 そんなことより、イブちゃんの安全が最優先です。 私がちゃんと見てますから心配はいりません。」
少し沈んだ声でレイ先生が言った。
「…わかったわ。 ならこうしましょう。今回の野外学習、レイにも課題を出すわ。 ノーザンモスト帝国で最もお世話になった人物に挨拶に行くこと! これを達成するまで、帰ってきてはダメよ。」
レイ先生の歯切れの悪い反応に対して違和感を感じたお母さんはレイ先生にも課題を出した。
こう考えて見たら、レイ先生は1ヶ月半程一緒に過ごしていたんだね。長いようで、短い…まぁ、1ヶ月間私引き籠もっていたらしいので話していたのはもっと短いんだけどね。
…私、この短い期間でレイ先生に沢山迷惑かけたな… もしかして今回の野外学習で国に着いたらレイ先生帰ってこないとかないよね?…え…、心配になってきたんだけど…
「レイ先生…あの…ノーザンモスト帝国に着いたら、この家に戻ってこないとか…ない?よね?」
全力の上目遣いを披露しレイ先生の反応を待つ。
「大丈夫よイブちゃん。 最初はイブちゃんやお母さんが吸血種と聞いて怖かったけれど、ここでの生活はあの国での生活の何倍も楽しいもの。 ここを離れることはしないわ。お母さんそれでも良いですよね?」
笑ってそう返してくれた。
ここでのレイ先生は確かに楽しそうには見えるけれど、『何倍も』と比較できるのだろうか? ここでの生活が楽しいのか…または、あの国での生活が楽しく無かったのか…少し引っかかるが、気にしなくても良いだろう。 レイ先生がこのまま居てくれると言っているのだから。
「勿論大丈夫よ。レイにはいつも助けてもらっているもの。 そうね〜何時もの感謝と言うことで、今から作ろうと思っていた昼食、ちょっと豪華にしちゃおうかしら? イブちゃんとレイも程々で授業を切やめて入ってらっしゃい。」
そう言い、お母さんは屋敷に戻っていった。
「あはは… 私にも課題ができちゃったね。 あの国で最もお世話になった人物に挨拶…ね。 勿論いるけれど、立場上、いつ会えるか分からないんだよね…。 ごめんねイブちゃん、今回の野外学習…もしかしたら長い学習になるかも…」
そう言い、謝ってきた。
「?…それのどこが問題? 寧ろ長くないと色々見て回れないでしょ? 課題もあるけど、色々見て回ることが野外学習をする一番の目的だと私は思っているから、私はレイ先生と一緒に楽しくノーザンモスト帝国巡りしたいな。」
責任と感じているのか元気がないレイ先生にそう返した。
レイ先生に似合うのはやっぱり笑顔でしょう。 楽しい野外学習になると良いなと思いながら、レイ先生にノーザンモスト帝国について、改めて聞いていると…
「ご飯できたわよ〜」
屋敷からお母さんの声が聞こえた。
「そうだね。 イブちゃんが楽しく学べるのなら…私も勇気を出さなくちゃね。 お母さんが呼んでいるからそろそろ、ご飯にしましょか。」
少し、決意を込めたようにレイ先生が言った。
「レイ先生はそんなに張り切ることじゃない気がするけど…まぁ〜いいか! ご飯行こ〜。」
レイ先生を手を引っ張って屋敷に戻った。
野外学習…面白そう!! お母さんはやっぱり私想いのお母さんだ。
この際だから正直に話そう… このNLDWを初めて、私はこのゲームの醍醐味だと思うRPGの要素に触れていないとずっと思っていた。 基本的に屋敷と庭を散歩するだけ…
そうだな…今までの私の生活をポケモンで例えてみよう。 『ポケ◯ン』で言うとしたら、一番道路でずっとレベリングをしていて、ストーリーを進めていない普通の遊び方から外れた遊び方をしていることになってしまうだろう。
私は頭で「まだ3歳だから1人で遠出は危ないよ〜」などと考えてしまい、森から1人ででる決心ができず、森でクマさん狩りをして楽しんでいたけれど… やっと待望のRPG要素、見たことのない街並み、文化、食べ物…まで見られるかはゲームだからわからないけれど、ようやく私の活動範囲が広く成りそうで、ワクワクが止まらないのだ。
「イブちゃん? 楽しみなのはいいことだけど、無理はダメよ? 私たちは『吸血種』であって、行くところは『人種』の国なのよ。 貴方が問題を起こして、レイにまで疑いをかけられてしまったら、レイは故郷に帰れなくなってしまうのよ? それに、人はアングリーベアーと違って頭を使って戦ってくるわ。だから、決して舐めて対峙しないことよ。約束できる?」
腑抜けた顔でご飯を食べている私に対してお母さんが言った。
「らいりょ〜… ゴックン 大丈夫! レイ先生には迷惑は掛けないようにする!」
口に入ったご飯を飲み込みながらそう返した。
いくら楽しみだからと言っても、付き添いで案内してくれる程優しいレイ先生には迷惑かけられないよ。
「ご馳走様でした。 レイ先生、このあと野外学習の予定決めない? 明日には行きたいから。」
美味し昼食を食べ終え、言った。
「今日はお昼寝しないのね? やっぱ何かあったの?」
とお母さん
「明日の朝から出発したいから、今日は夜に寝るの!」
何だか過保護になり過ぎでは?と思いながら返した。
全く…今の私は別にAIが動かしているわけじゃないって。 1ヶ月間不安にさせたことは申し訳ないと思っているけど… だからか… 嫌、素直に謝ろう。(申し訳ありません。) 心の中で反省しつつ、今回の野外学習では絶対に二人を不安させないと誓った。
「そうね。 明日の朝だとは思っていなかったけど…いいよ。 予定を立てる場所はイブちゃんの部屋でいい?」
ナプキンで口を拭き終わると、レイ先生が聞いてきた。
「勿論!! 観光場所とか美味し食べ物とか、レイ先生が知ってることちゃんと教えてよね! 後で回れなかったとかにはなりたくないから。 先に部屋戻ってるね〜」
そう言い残し、部屋へ戻った。
「イブちゃん、元気戻りましたね。」
「そうね… あのままじゃなくて…本当に良かったわ。」
と2人はイブちゃんには聞こえないくらいの声で言った。
***イブの部屋***
「〜〜〜〜〜と言うことで、あのノーザンモスト帝国には特に観光する名所や、名物は少ないの。 だからイブちゃんが期待しているような国ではないけれど、今言ってた、唯一の観光名所である国のど真ん中にある城よりも高い時計塔からの景色は1回は行ってみてほしな。 それ以外たど…やっぱり冒険者ギルトの建物が試験場と一体化しているから少し大きいぐらいかな? 」
と、ノーザンモスト帝国のことを軽くレイ先生が話してくれた。
話してくれたわけだが… どうやらノーザンモスト帝国には誇れる観光名所は時計塔だけ… つまり、ロンドンにあるビックベンのような物が中心にあるだけで何もない国だという…。
何だか、思っていたのとは違うけど… 一番最初に観光する国の迫力が凄いと、今後訪れるであろう国に行くとき、膨れ上がってしまった期待が空回りするかもしれないからね。 『ポケ◯ン』でも最初の街は簡素だったような? 最初はそんなものとしたほうが良いよね。
「確かに、観光名所は少ないけど… 大通りの1つに寄れば食べ歩きができる大通りもあるから、そこで時間を潰すのはどう?
私は食べ飽きてしまった物ばかりだけれど、イブちゃんにとっては興味を惹かれる物もあるんじゃないかな?」
私を気遣ってなのかはわからないけれど、レイ先生が熟考した末に絞り出したように言った。
「何だって…? 食べ歩きができる大通り?があるの?」
思わず食いついてしまった。
簡素な国だと割り切ってしまおうと思っていたけれど、食べ歩きができる通り?があるって? …どんな食べ物にも釣られる私ではないが、ないのだが…その大通りに私期待しちゃうよ? 期待しないってさっき言ったけど、前言を撤回して期待しちゃうよ?
「何があるんだろう〜」 考えただけで、涎が垂れてきそうだ。
好きな物を好きなだけ食べても太らない世界って、最高過ぎ。 嫌、待てよ…このまま好き放題食べてたら現実の体は太らないかも知れないけれど、イブちゃんの体は丸々と太っちゃうのかな…? まぁ、タラレバで制限をかけるのは違うよね。 その時はその時の私にダイエット頑張って貰うことにしよう。
その後、屋敷からのルートの確認や、タイムスケジュールなど細かくレイ先生が考え予定決めは解散となった。レイ先生私の頭の中は美味しい食べ物のことでいっぱいで何も入ってこなかったが、明日はレイ先生も一緒に来てくれるので、私が把握していなくても何も問題はないのだ! レイ先生様々だね。
外はもうすぐ日が沈みそうだけど、今日はクマさん狩りは止めておこう。 親戚の集まりの時みたいに、朝起きられず、次はレイ先生に抱っこされながら移動するようなことになってしまってはダメだからね。
***朝***
「うぅぅ〜…」
窓から差し込む日差しが私の体を穿つ。
今日と言う大切な日で寝坊しない為に事前に開けておいた部屋のカーテン。普段は閉じ切られているカーテンから差し込んだ日差しは決して強いものではないのだが、この体はそんな日差しでも抵抗がある。
「だからこそ、目覚まし代わりに使えるんだけど…結界無しの日光はまだまだ慣れられないね。…これって、いつかは慣れるものなのかな?」
一人で呟きながら、身支度を整える。
「イブちゃん~ ご飯よ~」
お母さんの声が聞こえた。
「は~い」
私は返事を返し、ダイニングへ向かう。
準備は整った。後は朝食を済ませて出発するだけ。
「ノーザンモスト帝国では何か面白いこと起こらないかな~」や「美味しそうなものいっぱいあったら嬉しいな~」などと考えながら朝食を済ませ、屋敷をでる。
「いってらっしゃい。 楽しんできてね」
出かける私の背中からお母さんの声が聞こえた。
出かける時はやっぱ挨拶は必要だよね。
「いってきます!」
お母さんにそう返し、レイ先生の手を引っ張り出発した。
お疲れ様です。 杯の魔女さんです。
寄り道に寄り道、親戚編は完結し、イブちゃんのまた新たな冒険が始まります。 次回は、ノーザンモスト帝国に向けて出発。 イブちゃんの足の速さならすぐに着いてしまいそうだけど…
おっと、ネタバレはここではやめておきましょう。次回をお楽しみに〜
※私が書き始めたもう一つのタイトル「天才令嬢?チートスキル持ち? いいえ!私は普通の女の子です! 本当ですよ?」は少しお休みしようかなと思います。 → なぜって? 余り、言いたくはないのですが… この作品は一つの気の迷いから書き始めたもので、「~New Life Different World~吸血姫として異世界を謳歌します」を書くモチベーションを取り戻すことができたので、お休みするということです。 また、何かしらモチベーションが落ちたときに続きが出るかも?




