第5話
「休みも積み重ねの一つだ。」
「ありがとうございます。」
「ああ、明後日にはまた出勤してください。」
「わかりました。」
そう言われて自転車に乗り自宅に戻る。
「ただいま。」
「あら、今日は遅かったわね。」
「上司の方々から話があった。2日目はどうだって。明日休みなんだ。」
「あらあら、夢人も助けられたのよ。良い上司で恵まれたのね。」
母親は、すでに夕食を済ませられており、テーブルの上に夕飯のおかずがあった。
それを済ませて就寝に就く準備をした。
また、良し悪しな夢を見ることになるだろう。
夢の視界に映る。
現実世界の人間と夢を見る夢人と意識が重なる瞬間の夢をみる。
現実の世界の人間の意識を目視しながら同じ眼球と映し出されている。
ゴールドのレストラン列車に乗って食事を楽しむのであった。
ところが、夢人も少し知っているネットや雑誌等でキハ47号車を大改造された車両である。
信じられない程のゴールデントレイン●●列車を乗る夢を見ていた。
現実世界に全国の線路に走るのも当然んだ。
しかし、九州にしか限定されなかったのだ。
夢人にも叶うことができるのか。
他人の意識の眼球を見ながら食事をしていた。
もちろん、ワインを飲みながら楽しんでいる。
夢人もワインの味すらも知らない。
憧れるのもまた夢だ。
車内に乗ってから食事のコースを提供されたのである。
お通しに前菜が野菜を蒸した冷やし茶わん蒸しのカクテルを提供されたのだ。
次に魚料理に桜鯛と春のリゾットクリームソースで白ワインには打ってつけであった。
さらに、お肉料理が牛ほほ肉のソテーの野菜の盛り付けには赤ワインもとろけるので楽しい気分だ。
そして、デザートがいちごのバニラアイスが飾ってあった。
コースとしては豪華な料理である。だが、他人の視界から追い出され弾き飛ばされる様に・・・・・・
目覚ましは鳴らず<9:00>頃に目を覚ましたのだった。
身体はズキンと痛みだしたのだ。
「痛ってー。」
さらに口内にも違和感があったのだ。
「なんかべたべたする。」
起き上がろうとすると身体もずきずきするのである。
「まじか、こんなに痛いとはな。」
昨日の主任から休むように言われたのである。
日の浅い新人に無理をさせられないからだ。
「なんとかスッキリしたがまた寝よう。」
再びベッドにうつぶせ寝で飛び込んだ。
自然と思考を休ませるように。
夢の視界は真っ暗だ。
時間かけてもそれでも真っ暗だ。
入る夢なのか入らない夢なのかもしれない。
ただ、暗闇にさまようメビウスのようだ。
進んでも戻ってしまう。
目を覚ますと身体が汗だくとなり、<15:00>に回っていた。
これじゃ、身体も気持ちが悪くて眠れやしない。
起き上がってシャワーを浴びることにするのである。
上がって新しい寝間着に着替える。スッキリすることで心地よい。
再び、仰向けで寝直した。
夕飯になる前までにアラームをかける。
丁度<19:00>になり夕飯となる。
母親が夕食の準備をしていてテーブルの周りに夕飯のおかずが並んでいた。
「今日は遊びに行ったりしなかったのね。」
「昨日のバイトで身体がきつかった。腰も痛かった。」
「休めれるうちに休んだ甲斐があったわね。」
「そうだね。」
玄関の扉から開く音がする。
父親が帰ってきた。
「ただいま。いや~腹が減った。」
「あら、あなた仕事が終わったの。」
「ああ、なんとか休みが貰えて戻ってきた。今日のお土産が珍しい饅頭なんだ。」
「あらまあ。食後にお茶にしよう。」
「あと、ビールもあるんだぜ。おまえも飲むか。夢人はなジュースを買ってきたぜ。」
「うん。ありがとう。」
家族団らんで夕食を楽しんでいる。
たまには自宅で休むのも良いだろう。
夢人も思う。
(この親父滅多に帰って来なかった。ドライバーとかで帰らないとはどうだか。)
夕食後、饅頭を開けて緑茶を注ぐ母。すでに父親は和室で就寝していた。
「ほら夢人。お茶だよ。明日に向けて体力を付けなさい。」
「うん。いただきます。」
饅頭を手に取って齧り、緑茶をすする。
「うまいね。ほんとめずらしい饅頭だな。」
「残りはお父さんの分ね。」
それを食べた後に明日のバイトに向けて支度をする。
あとは、眠るだけ。消灯し瞼を閉じる。
夢の視界が映る。
浜辺の海があり、真っ暗な黒い空が映し出されて微かに雲が流れてくる。
さらに、少し太陽の光が沈んでいく。
優しい赤い光が落ちて、夜空が暗くなってゆく。
突然、白いワンピースを着ている少女が立っており、潮風を浴びる様に黄昏ている。
完全に太陽が沈んでしまい、雲が晴れると星空が見える。
これは滅多にない青春を感じたのだろう。
夢人も彼女に近づこうとするが視界が遠くなりたどり着けない。
永遠と離れてしまう。
しかし、彼女の姿が薄くなり星屑の様に消えてしまう。
光った星屑は、宙に浮いて夜空に向けて星となる。
夢人もその光景を見てしまった。
ああ、なんて切ない感じを味わうことになるのだろうか。
真夜中の浜辺を歩いて立っている古びた扉を見つけた。
(これって開くわけないだろう。)と思ったのだ。
ドアノブを触れると痺れを感じた。
奥に押すと海辺ではなく緑の野原を映したのだ。
くぐると扉はすぐ閉まり後ろへと倒れて崩壊した。
一度くぐったら後戻りできない。
再び歩いて進むと太陽が昇り、風と共に吹いたのだ。
新しい風が待ち望んだ様に。
そして、夢人の身体に星屑が出てきて宙に舞い・・・・
アラームが鳴り、目を覚ます。
<7:30>に起床したのだ。
いつもの様に朝の準備をして、自宅から出る。
「夢人っていつの間にかバイトを始めたんだな。」
「そうよ。給料はどれくらい出るのかしら。」
母親もいつお金を返してくれるのか不安である。
自転車で通勤し、途中で朝食を買うためにコンビニに寄った。
やっぱ、力仕事となると体力もつかないのだ。
テナントに到着し、朝礼が始まる前に作業着に着替えた。
ロビーに集まり全員が点呼した。
班長の話がはじまる。
「本日も安全な作業を怠らない様に十分注意したまえ。以上。」
ほんと緩やかな仕事内容だった。
(俺もうまくなりたいな。)と心に誓う。
班長から声をかけられたのだ。
「田中君は、佐藤君と一緒に作業してもらうからくれぐれも労災を起すなよ。」
「あっ、はい。」
指示に従って佐藤さんと同行する。
荷物の伝票を確認し、日付通りに場所を移したのである。
夢人も班長の言われた通りに作業をこなしている。
「そっちの荷物は、あのトラックに積み込むから出入口近辺に集めておいて。」
「はい。」
初めてトラックを見る夢人も少し驚いている。
「荷台の中ってこんなに広いんだ。」
「当たり前だよ。たくさんの荷物を積むんだからさ。」
集めた荷物をコンテナに積み込み、次の荷物を積む準備をしていた。
積み終わったトラックは、移動して空のトラックが着いて扉をあける。
次の荷物を運んで積み込み、午前の作業は終わったのだ。
「よし、昼にするか。」
「はい。」
丁度良い時間になり近くのコンビニかファミレスかラーメンの種別を選べるのである。
「今日はさ、ラーメンにするか。」
「はい。そこにします。」
2人はラーメン屋に足を運んで店内に入った。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか。」
「俺たち2名で。」
「こちらの席にどうぞ。」
店の名前が勝龍拳で一杯格安のラーメンである。
夢人の懐も優しくなるだろう。
食べ終わった後、テナントに戻り休憩時間が終わる10分前に到着する。
「俺は、スケジュールを確認するから少しロビーで待ってて。」
「あっ、はい。」
作業が始まるまでにトイレを済ませる。
「待ったか。次の積み込みがあるからこっちに来てくれ。」
「はい。」
倉庫内に入り、ゲート近くに荷物が置いてあった。
佐藤さんは、ゲートの外に出てトラックを止めて後ろの扉を開けたのだ。
ゲートに近づき積み込みを始める。
「佐藤さん、集まっている荷物はこれで全部ですか。」
「ああっ、そうだ。台車に積んでここまで運んできて。」
「はい。」
指示通りに積み込み作業は進んだのだ。
「今日のところは終わったな。」
「はい。なんとか進みました。」
岩谷主任が出てきて夢人に近づく。
「田中君、今日は上がっていいぞ。まだ、わからないことがあるかもしれないが時間ある時に少
しずつ話しておきたいと思う。今日はおつかれさん。明日も出勤だから身体も気を付けたまえ。」
「はい、ありがとうございます。」
仕事も終わり、作業着から私服に着替える。
自転車に乗り、自宅へと帰ったのだ。
「ただいま。」
「おかえり。夕飯出来てるからまずは風呂に入りなさい。」
先に風呂に入り、身体の疲れと汗を流したのだ。
風呂から上がり、夕飯に入る。
「父さんはもう仕事に入った。」
「そうね。夜中に運転して大変だったんだって。」
そりゃそうなるだろうからな。
夕飯を済ませて歯を磨き、スマホを取って撮影したシフトを確認する。
時間になるまで音楽を聴き、消灯して目を閉じ就寝した。
この間の様に再び夢を見ることになるのだろうか。
眠れば夢の世界に映しだすからだ。
夢の視界が映り。
昭和30年の時代にタイムスリップする夢を映し出されたのだ。
自分がいる場所が蒸気機関車の乗客に乗っている。
路線では、横須賀線を走っている。
ポケットの中を確認したら切符が出てきて逗子駅と書かれたのだ。
そこの駅に着けば何かがわかるのかもしれない。
到着し、切符を駅員に渡して改札を出た。
観光をする夢でも見ることになるのだろうか。
そこで、馬を連れている馬車があって目を向けた。
「この馬車はお駄賃無料ですよ。」と掛け声があり、その馬車に乗った。
財布はあるがほんの少ししか入ってなかった。
乗らなかったら距離的に長いだろう。
観光地報国寺に到着し、緑に囲まれる木々や芝生もあり、雰囲気も良いお寺も建っているのである。
館内に入り、ふすまが明いている光に見とれて気持ちの良い庭の前に座った。
「はあ。のどかで平和だ。」
お品書きを見て抹茶を注文した。
「お待たせしました。抹茶と和菓子でございます。」と声をかけられ、着物を着た女性から抹茶を作りだしたのだ。
「どうぞ召し上がってください。」と一言残したのだ。
干菓子をつまみ抹茶をすする。
「なんて平和なんだ。」としみじみに思っていた。
たまには平和が一番だよな。
太陽の光が傾き強くなった・・・・・・
アラームが鳴り、目を覚まして起床する。
自宅から出ていつも様にコンビニに寄って朝食を購入した。
コンビニの外に出て朝食を取る。
玉岩倉庫に到着し、着替えて朝礼が始まる前にロビーで待っていた。
「おはようございます。高田班長。」
「おう。おはよう。今日は岩谷主任の話があるから昼の休憩に呼ばれると思う。それと今日は佐藤君休みだ。別の人と作業するからくれぐれも労災と物損事故を起こさないようにしてくれ。」
「はい。」
全員が集まり朝礼が始まる。
「前回で荷物の物損事故が発生したのでくれぐれも細心の注意をするように以上。」
全員合わせて返事をしていた。
夢人は岩谷主任から呼ばれたのだ。
「今日は太田君と作業させてもらいます。事故がないように。」
「はい。」
「君が田中君かい。」
「はい。」
「今日1日頑張っていこう。」
「はい。」
「この大きなバインダーでスケジュールがある。それを確認して伝票は各班に分けられてるから。あと、伝票は失くさない様注意するように。」
「はい。」
「じゃあ。君たちはこの伝票を渡す。よく確認するように。」
そう言われ作業が始まったのだ。
当日に出荷する荷物を出して、ゲート近くに運びトラックが到着する前に準備をしていた。
あと後日に出荷予定の荷物を別の場所に移した。
「まあ、ここまで進んだのならまだ時間があるな。まだいけるか。」
「はい。」
「よし。他の班に応援に行こう。」
太田さんの携帯に着信が鳴った。
「おつかれさまです。太田です。はい。はい。了解です。」
「なにかありましたか。」
「そうだな。今から休憩に入って12:30位に話があるからその前に昼飯を食っとって。」
「はい。」
そう言われ、コンビニで弁当を購入しロビーで昼食を取る。
その後、ロビーで岩谷主任がやってくる。
「おつかれさん田中君。今日は今後の仕事の内容について話したいことがある。」
「はい。なにかありますか。」
「そう。田中君がまだ新人だったのでぼちぼちみんなの動きをわかるようにしていきたいなと思いますんで、事務所にスケジュールを確認しながらか相談するかで決まるんだ。」
「そうなんですか。」
「それとトラックの運転手になれるかはわからないが今の普通免許で難しいと思える。もし、資金があり次第で準中型の免許を取得しても良いだろうと思える。無理には言わないが。」
「僕も求人広告を見て後悔しました。まだ、母親に借金していて返済できるかはまだわからなくて。」
「そうか。まずは給料を手に入れてから貯めていこう。まず借金を返済してからでもいいので。」