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職業ガチャ②


俺たち四人はノーマルガチャの画面を開いた。あとは画面中央のスタートボタンを押すだけだ。



「それじゃあ、あたしから引くわね」



数秒の沈黙を破って手を挙げたのは真優。さすがはリーダー。けれども、さすがにその表情には緊張の色がうかがえる。



口元を引き締めて右手の人差し指に力を込めた真優は、力強くスタートボタンをタップした。



「何でもいいからとにかく強そうなやつでお願い!」



ガチャの演出は、特段変わったものではなく、どちらかというとかなりシンプルなものだった。



三つの小さなスロットが表れ、高速で回転。徐々にそのスピードが緩まり、最終的な職業名が表示される仕組みだ。



「出たわ……」



真優のその一言で、俺たちも真優のAWPを覗き込む。まだ自分じゃないのに、俺も既に緊張していた。



ーーーーーーーーーーーーーー


・職業候補その1

【転売ヤー】

レア度☆

・会得可能スキル

→『交渉有利』『ぼったくり』『見識眼』等



・職業候補その2

【巫女見習い】

レア度☆☆

・会得可能スキル

→『状態異常回復』『リカバリー』『天の祈り』等



・職業候補その3

【至高の料理人】

レア度☆☆☆

・会得可能スキル

→『目利き』『包丁マスター』『火力アップ』等


ーーーーーーーーーーーーーー



「……これもう実質一択しかなくない?」



「ま、まあ……とりあえず全員が引き終わるまで保留ってことで……」



「つ、次はわたしが引くね!」



誰もが気づいていた。真優の機嫌がすこぶる悪くなっていることに。実質一択と言うのは、恐らく【巫女見習い】だろう。



【転売ヤー】レア度、名前からして論外だし、【至高の料理人】はレア度こそ良いが、戦闘ではほとんど役に立たないような気がする。



真優から湧き立つ不穏な空気を読み取った拓己と三条が慌てて話を進めていく。そして三条はなんの躊躇もなくスロットを回転させた。



――数秒後。



「うぇっ」



という、年頃の女の子が出すには程遠い声を漏らした三条が驚きと戸惑いが混ざったような表情を浮かべていた。



「みんな……これ……」



そう言って三条はAWPの画面を俺たちに向ける。



「えっ、やばっ」



「これは……」



「まじか……」



三つの職業候補。そのうちの一つに、排出率3パーセントの最高レア度が含まれていた。



ーーーーーーーーーーーーーーー


職業候補その1

【バニーガール】

レア度☆☆

・会得可能スキル

→『誘惑』『夜の冠』『聴力アップ』等



職業候補その2

【ネクロマンサー】

レア度☆☆☆☆

・会得可能スキル

→『死霊操術』『常闇の覇者』『全状態異常無効』等



職業候補その3

【白銀の魔術師】

レア度☆☆☆☆☆

・会得可能スキル

→『神の霆』『魔獣召喚』『白帝の魔弾』等



ーーーーーーーーーーーーーーー



……か、完全にぶっ壊れてる。



「ちょっと瑠美! あんたどれだけ運いいのよ!」



真優の機嫌もすっかり元通りだ。それぐらい俺たちに与えたインパクトが大きい。



「確かにこれはびっくりだね。レア度MAXを引いたのもすごいけど、もう一つの方もなかなか……」



普段冷静沈着な拓己でさえ、三条の豪運っぷりにどちらかというとドン引きしている様子だ。



そんな拓己が指摘したのは、2つ目の候補である【ネクロマンサー】。レア度が☆4つで、スキルもむちゃくちゃ強そうだし、これだけでも即決するレベルだ。



だが【白銀の魔術師は】それよりも上だということなのだろう。



「それじゃあ三条さんも一旦置いといて、次は僕が引くね」



興奮冷めやらぬ中、三番手の拓己のガチャが始まる。三条が神引きをしてくれたおかげで、プレッシャーは軽減したはずだが。



「あんたも頼むわよ北川」



真優のたった一言で、ハードルの高さが急上昇してしまった。




ーーーーーーーーーーーーーーー


職業候補その1

【八百屋】

レア度☆

会得可能スキル

→『声音アップ』『早口言葉』『野菜マスター』等



職業候補その2

【忍者】

レア度☆☆

会得可能スキル

→『忍び足』『小道具マスター』『気配探知』等



職業候補その3

【盗掘家】

レア度☆☆

会得可能スキル

→『視力アップ』『腕力上昇』『ハンターの眼』等


ーーーーーーーーーーーーーーー



「……なんかごめん」



気まずい空気が流れる。三条が豪運すぎただけで、確率的にはこれが普通のはずなんだが、当の拓己本人はかなり落胆している様子だった。



「い、異世界にも八百屋さんがあるんだね」



全然フォローになってないぞ三条……。



「……あとは任せたよ悠吏」



拓己に弱々しく肩を叩かれた俺は、いよいよ自分の番が来たのだと覚悟を決める。



と、そこへ……。鋭い眼光を宿したリーダーから一言。



「あんた分かってるでしょうね? このままだとうちは瑠美のワンマンパーティになっちゃうのよ! ちゃんと戦闘系の職業を引いてよね!」



そんな無茶ぶり言われても困る。ガチャなんて所詮は運ゲーだ。



「じゃあせめて良いのが来るよう祈っててくれ」



このままガチャ画面と睨めっこを続けたところで、レア度の高い職業が出る確率が上がるわけでもない。



意を決して、スタートボタンを押した。




ーーーーーーーーーーーーーーー


職業候補その1

【手品師】

レア度☆

会得可能スキル

→『お手玉』『視線誘導』『火吹き』等



職業候補その2

【ベビーシッター】

レア度☆

会得可能スキル

→『高速オムツ替え』『観察眼』『体力アップ』等



職業候補その3

【魔王の弟子】

レア度☆☆☆

会得可能スキル

→『不明』『不明』『不明』等


ーーーーーーーーーーーーーーー



「…………終わった」



俺のその消え入りそうな呟きに、三人は全てを察したようだった。


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