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パーティーメンバーとの再会



***


「――ええっ悠吏⁉ いつの間に……!」



 俺も聞いたことのないような素っ頓狂な声を上げたのは、同じパーティーメンバーにして親友の拓己だった。



「水波くん風邪をひいてお休みって聞いてたけど大丈夫なの……?」



「ふんっ、いきなり遅刻とはいい御身分ね」



 拓己と同じように驚いた表情を見せる三条と、目すら合わせてくれない真優。でも今回に関しては当日に欠席しかけた俺が悪い。



 他のクラスメイト達からも異形を見るような視線を注がれているけど、気にしないでおこう。異形なのは俺じゃなくて背中にくっついている誰かさんだからな。



『誰が異形じゃばかたれ』



(何だお前、心を読めるのか)



『意思疎通をする際に、妾だけの声が聞こえていないというのはおかしいじゃろう。周りから見るとお主が独り言を喋っているように映るから、こうして気を利かせて心の声で会話ができるようにしてやったのじゃ。それなのにお主ときたら妾のことを――』



(はいはいわかったから、どうもありがとうございます)



 これが便利なのかはたまた不便なのかはそのうち分かるとして、まずは無事にみんなと合流することができたことを素直に喜んでおこう。



 ちなみにメルトは留守番だ。空き巣に入られたらとか何とか言ってたけど、誰があんな家畜小屋に押し入るというんだ。



『偉大なる魔王城を家畜小屋とはなんじゃ! あそこは妾の青春が――』



 ……うるせえ。ボイスのオンオフ機能とかついていないのかこの刀。ってこれも本人に届いているのか? 



『うむ』



…………。



(……魔王さんや)



『なんじゃ』



(このままだと俺の精神がもたない。今のペースで喋ってたら道半ばで倒れそうなんだが)



『……仕方ないの。お主に倒れてもらったら妾も困る。必要最低限の話以外は控えるようにするし、お主の心の声に対する突っ込みもなるべく我慢する』



(頼む)



『でもたまには構ってくれないと泣くぞ。今の妾にはお主以外に話し相手がおらぬゆえ……』



(分かった)



口約束だが、一応は契約が成立した。この短いやり取りでさえかなり頭が疲れた。



脳にかかる負荷が思っていたよりも大きいのは、いつか慣れるのだろうか。



もしくはこれも俺が強くなってレベルが上がれば、気にする必要がなくなるかもしれない。


 




「――って聞いてるのあんた!? さっきからぼーっとして!」



「えっ、ごめん何……?」



声が聞こえて振り向けば、さっきよりもさらに眉間に皺を寄せた真優がそこにいた。



ライゼルカとやり取りをしていると、やはりこういうことが起きてしまうのだ。現実の方の耳が全く仕事をしない。



「真優ちゃんは水波くんのことが心配なんだよ。さっきだって学校を飛び出して――むぐぐぐぐ」



「とにかく! 体調不良だかなんだか知らないけど、それを言い訳にして足を引っ張るのは許さないって話よ!」



今不自然に三条の口が塞がれた気がしたけど……。とにかく真優が不機嫌なことだけは変わっていない。



「それにしてもよく転移が間に合ったね、遅刻したら調整がきかないって先生が言ってたけど……」



「なんか他のクラスに混ざったらできちゃった的な……」

 

 

 拓己の言うとおり、この異世界への転移はクラス単位――つまり六回に渡って行われる。



 一組から順番で俺たちは三番目の予定だったのだが、あとの組に紛れたっていう説明をしたらみんな信じてくれた。



 むしろ本当のことを話した方が、頭のおかしい奴だと思われかねないからな……。



 無事に合流もできて一通りの説明も済んだところで、俺は改めて辺りをグルッと見回した。



 俺たちは今、円形のドームのような室内の中にいる。天井は首が痛くなるまで顔を上げても見えないぐらい高いが、横の広がりは体育館の半分程度。



 さっきまであのなんちゃって魔王城にいたせいか、かなり広く感じてしまう。



 ここには俺たち二年三組総勢36人が、もうすぐ始まるであろうチュートリアルの時間を待っていた。当然ながら欠席者はいない。こればかりは本当に魔王に感謝しないといけないな。



『ふっふっふ……その分しっかり働くのじゃぞ』



(分かってるって)



 それぞれ四人一組のパーティーで集まり、各々【AWP】を弄ったり敵と戦闘する際のフォーメーションについて話し合ったりと、心を躍らせているのが見て取れた。



「――よお水波、てっきり逃げたかと思ってたがちゃんと来たようだな」



 出たな村山。


 

 ニヤニヤした笑みを浮かべながらこちらに歩み寄ってきた巨体の男は、俺の背中にへばりついている刀に視線を向ける。



「何でお前そんなもん持って来てんだ? 模造品か何かか?」



「えっ? いやこれは、お守りてきな……」



「ふーん、まあ何でもいいけど。【聖剣使い】であるオレ相手に同じ土俵で勝負しようという心意気だけは褒めてやる」



『【聖剣使い】か……』



(知ってるのか?)



『知らぬ。じゃが妾のパーフェクトボディーを模造品呼ばわりしたのには腹が立つの』



(………)



 だったら最初から意味深に呟くのやめてくれ。こっちでも有名なヤバい職業かと思うじゃないか。実際レア度が☆☆☆☆☆らしいから、とんでもないんだろうけど。



「――じゃあせいぜい途中で野垂れ死にしないようせいぜい頑張るんだな」



「ふんっ」



 気が付けば村山は自分のパーティーへと帰っていき、真優がその背中に向かってメンチを切っているところだった。



 どうやらまたひと悶着があったらしい。村山のやつ、これ以上真優を怒らせるのはやめてほしいな。その発散先がどこに向かうと思っているんだ。



 それに俺も身に覚えのない因縁をつけられているし……。



 茶々を入れにきた村山が去ったあとは、拓己と三条が興味深々といった様子で背中の剣を柄や鞘を触ったり突いたりしていた。



 村山が疑問に思った通り、俺以外に私物を持ち込んでいる人は多分いない。遅刻した上に、痛々しいレプリカの刀をこさえてきたのだ。これじゃあ元の世界に帰った後も変な奴扱い受けるだろうな……。



 だが事情が事情なうえ、いくら同じパーティーメンバーであっても話せないのが少しもどかしかった。



『ど、どこを触っておるのじゃこの! 妾は魔王じゃぞ! ただの人間が――あっつ、ちょ、そこは……!』



 寂しがっていた魔王ライゼルカちゃんも構ってもらえて嬉しそうにしている。



『おいユーリ! なに訳の分からぬ解釈を――』



 ――そこで、魔王の言葉が途切れる。



 正確には、俺に直接呼びかけているはずのライゼルカの声さえ遮断してしまうほどの、アラーム音が鳴り響いたのだ。



 音の出所は【AWP】。36機全てから発せられているのだ。そりゃあうるさいわけだ。



 俺たちは一斉にそれを取り出して、画面を確認した。




〔ただいまより【異世界研修】のチュートリアルを始めます――〕 


〔皆様にはこれから各パーティーごとにモンスターとの戦闘を行っていただき―――〕


〔この戦闘ではたとえ死亡しても――〕



 次々に流れてくる文章を読み終えたのと同時に、周りにいたクラスメイト達が姿を消した。



 いよいよ始まるのだ――

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