#7
綺羅と雫は考え込んでいて、終里と一勝はイライラしているようで、せわしなく歩いている。花とココア、奏とみおは一緒に話している。麗華は拓哉に日傘を持たせている。そして、隣にいるルナは茫然自失状態だ。何が彼女をそんな風にさせたのは分からないけれど。
「ねえ……」
急にルナは口を開いた。真っすぐどこか遠いところを見つめたままだけど。
「どうしたの?」
「…………何でもない」
そう言って、ルナはどこかに行こうとした。
「あ、待って! どこ行くの?」
僕を見つめてクスッと笑った。
でも、全然瞳は笑っておらず、無理して口角を上げているようにしか見えなかった。
「分からない。でも……一人になりたい」
そのまま真っ暗な道へ行ってしまった。
「何でもない」って言ってる人は「何でもなくない」んだよね。それに、ここに来る前と今じゃ、話し方が少し違うけど、今の方が本来の彼女の口調なのかもしれない。
…………じっとルナが歩いた通路を見つめていた。やっぱり心配だ。よし、ルナを探そう。
生徒手帳をポケットにしまって、歩き始めた。
三分ほど歩いていると、誰かがすすり泣く声が聞こえた。
立ち止まって、耳を澄ましてみると、斜め左の部屋から聞こえてきた。
鍵は開いてるみたいで、そのままドアを開けた。
「……あれ」
部屋をざっと見てみたけど、誰もいなかった。でも、確かに泣き声がここから聞こえる。
息を殺して、必死に声を出さないようにしているような、苦しそうな声。
視線を落とすと、ベッドの上で目が痛くなるくらい光っているスマホを見つけた。
手に取ると、光が増して、僕の目の前が真っ白になった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。