その十二
日本からの通信で、曲が二番のサビに入る。最も盛り上がるポイントだ。
そこで巨大ロボットの砲台が、何かを空中に連続発射した。
そして数秒後、月の空に大輪の花が次々と咲いていく。
「花火だ! そうか、これは花火大会だ!」
その通りだった。日本は達成する。月面初の「巨大ロボット」に続き、月面初の「花火大会」を。
もちろん、地球上で使う普通の花火を、そのまま持っていたとしても、月面では条件が違いすぎる。こうは奇麗に咲かないだろう。
だから、日本はつくっていた。月面専用の花火である。
「・・・・・・悔しいが、美しいと認めざるを得ない」
「たーまーやー♪」
「かーぎーやー♪」
衝撃は続く。
他のとは違う特徴的な花火が、二つ同時に上がった。
バラとヒマワリを模した花火だ。「バラ」はアメリカの国花で、「ヒマワリ」はソ連の国花である。
さらに花火大会は続き、最後の花火が消えると、日本からの曲が止まる。
月面の巨大ロボットが、元のミニチュアへと分解を始めた。まるで映像の逆再生でも見ているような感じ。
やがて月面が静かになった。
通信オペレーターが口を開く。
「日本からのメッセージです」