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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とある男の狂った悪夢

作者: ッフィラム

イルカと殺人鬼は仲良く肩を組み、茶柱でアルミ缶を茹でている。



魚鱗癬村は今日も尖った歩道橋です。








ここは……どこだ…………?

辺り一面真っ白だ。下を見ても上を見ても何処も彼処もずっと白一色。私は地面に立っているのかそれとも浮いているのかすら分からない。目を開けていると気がおかしくなりそうだ。私は目を瞑り、正気を保つ為に自分の事を振り返った。私は池田雄太郎。34歳。32の妻がいて娘と息子が1人ずついる。ごく普通の会社員で割と特徴のない人生を送っていた。最後の記憶は……多分、通勤途中の電車の中……だったか。という事はコレは夢か。そうだ夢だ。珍しく椅子に座れたもんだからそのまま寝ちまったに違いない。私はホッとして目を開ける。すると目と鼻の先に私の顔を覗き込んでいる女性が居た。全く気配もなく居たもんだから私は驚いて倒れ込んだ。不思議と倒れこんだ際に打った肘がジンジン痛む。妙にリアリティのある夢だな。

「大丈夫ですか、雄太郎さん?」

女性が話しかけてきた。どうして私の名前を知ってるんだ。夢だからか?

「あ、あぁ大丈夫大丈夫。」

「なら良かった。これから世界を救う人だもの、傷をつけてしまっては良くないですから、本当に良かった。」

「へ、え?」

「あ、申し遅れました。私、女神の繝阪ち蛻?lです。」

「すみません、名前をもう一度聞いても?」

「繝阪ち蛻?lです」

「あ、え?」

「全く、もう言いませんよ。兎に角貴方はあちらの世界で死んでしまったのでこっちの世界に来てもらうのですよ。」

なんか聞いた事がある。娘と息子が言ってたような気がするな。『異世界転生』ってやつか?最近テレビでアニメばっかり見てるから俺が見たい番組が見れないんだ。俺はそういうのには全く興味が無いのだが。

「コレから貴方の行く世界はとある存在に脅かされていて、それを取り除いて頂きたいのです。」

「待ってくれ、頭が追いつかない。と言うかコレは夢なんだろ。電車を寝過ごしたら会社に遅刻してしまう。」

「だから言ったでしょ。貴方はもうすでに死んでいます。」

そう言うと彼女の手に急に水晶が現れて映像が流れた。その内容は、電車内で急に男が暴れだしてその男に私がナイフで思い切り腹を切り裂かれてる映像だった。俺は吐き気がしてそこに思い切りぶちまけてしまった。

「ちょっと!私の部屋を!まぁ仕方ないわ。とりあえず続きの説明を。貴方が戦わないといけない敵を今から見せるよ、それはコイツらよ。」

水晶に何かが映し出される。ソレは







………夢から覚めたと思ったのだが、何か変だ。コレが電車の中……な訳ないよな。まるで戦国時代の城の中に来ているみたいだ。訳が分からん。あぁ、分かった。たまにあるアレだ。夢の中で夢を見るみたいな。そういうアレか!そう一人で納得してると目の前の襖が空いた。小さい着物を来た少女がひょこっと顔を出した。その少女は私の顔を見るなり叫びながら何処かに走っていった。

「おっ父!なんか変な人が居る!」

「なんだと!曲者だ!曲者を捕えろ!」

私はヤバいと思ってそこから走り出した。夢の中とは言え、殺されて目覚めるなんて最悪だ。走れ!走るんだ!後ろからドタドタと足音がする。ま、まずい。行き止まり。

「見つけたぞ!曲者め!」

「城に忍び込みよって!死ねい!」

侍が私に斬りかかってきた!コレは!夢だ!

「待ちなさ





……!やっぱり寝てしまっていたか。それにしても立ったまま寝ていたとはな。私も器用なものだ。それにしても立っていても寝てしまうなんて私も疲れているな……。そりゃそうだ。本来休めるはずの家での時間も反抗期真っ盛りの娘と息子を相手しながらストレス抱えた嫁の愚痴を聞かなきゃならん。仕方ないか。私は腕時計を見た。かなり長い間夢を見ていたと思ったがほんの10分位しか経っていなかった。寝過ごしていなかったことにホッとした。やることも無く、窓の外をボーッと眺めて居た時、少し離れた所から悲鳴が聞こえた。それと同時に何人かがパニックになったような声が聞こえる。そこから逃げてきた人に押されて車内はぎゅうぎゅう詰めになる。な、なんだ!?

「止めて!痛い痛い痛い!離してぇぇー!」

「なんだコイツ!女の足に噛み付いてる!オラァ!離れろコラ!」

「ゾンビ、ゾンビだァ!」

私は急いで離れようとしたが電車の中だから人が詰まるのは当然だった。隣の車輌に移ろうとしてもそのドアに人が殺到したせいで誰も通れない。そうこうしてるうちに俺の後ろの人が悲鳴をあげた。恐る恐る後ろを見ると灰色の肌の人間の様なイキモノが生きている人をそのまま喰らっていた。

「い、嫌だ!助けてぇ!痛いよぉ!」

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!早く行けよぉぉぉぉぉぉ!」

俺は前の人に乗っかって人々の頭の上を踏みつけながら進ん







「もしもし?」

「なんなんだよコレは!また覚めても夢!?また夢か!ふざけるな!」

「もしもし?」

「あぁ、あぁ、なんだよ。」

「貴方が居る場所を教えて欲しい。」

「そんな事俺が知りたいよ。気がおかしくなりそうだ。」

「君には目があるだろ、見るための。早く教えてくれよ。」

「分からない、分からない。だって何も見えないから。」

「じゃあ、どうやって私たち会話してるのさ。教えてくれよ。」

「え、え?ちょ、おい!こんな何も見えないところで独りにしないでくれ!おい!!返事しろよ!頼む!!クソッタ





目覚まし時計が鳴っている。うるさい。止めようとして腕を動かすが届かない。私は目を開けて右腕を見る。肩から10センチくらいの部分から無くなっていて血が出ている。今日は腕か…。

え、腕が……無い…………?

「あぁぁぁああぁあぁぁぁぁぁ!!!!」

「ステノさん、どうしました!?ステノさん!セシルさん、ステノさんが!サヤカ!」

「あぁぁあぁぁ、痛い、痛いぃぃい!!」

「どうしたステノ!今までこんな事無かったじゃないか!欠損にいつも以上の苦痛を感じているのか?キアーナ兄妹を呼べ!早く!」

さっきからステノステノって誰の事なんだよ!私の名前は!俺の名前は池田雄






「アミ……アミ…………」

「んん、ちょっと……後5分……」

「アミちゃん、私お母さん見たいかな?」

私はその時一瞬で目が覚めた。

「ここは、どこだ?」

「何言ってるの、アミ?電車の中だよ。」

「なんだよ寝ぼけちまってるのかよお前。」

「アミ……俺の名前はアミなのか?いや、別の名前が……。」

「どうしたの?もうちょっと寝てた方がいいよ。疲れてるみたいだし。」

「思い出した、俺の名前は池田雄太郎だ。また夢か、コレは!何度こうなるんだ!早く、早く覚めてくれよ。」

「ちょっと、本当に様子がおかしいですよ。次の駅で降






私の名は、吉良吉





I always come ba





「もしもし?」

「………。」

「もしもし?」

「………はい。」

「今何処に居ますか?」

「公衆電話……多分。」

「何処の?」

「分からない。外は真っ暗なんだ。」

「そうか。」

「なぁ、お前は誰なんだ?」

「私か?私は






わたしはすでに死ん

私は山に住み着いた妖

私はしがないホームレ

私は明日学校を卒

私は

私は

私は

私は

僕は

俺は

わちきは

ワシは

オイラは

おいどんは





私はハーレクイン魚鱗癬症と疣贅状表皮発育異常症とプロテウス症候群と単眼症と無脳症と小頭症とテトラアメリア症候群とあとはもう数え切れないほどのなんか病気とか異常とか抱えた可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な可哀想な












「もしもし?」

「もしもし」

「今どこに居ますか?」

「お前、目付いてんのか?」

「まずは私の質問に答えてくれないか?順番というものがあるだろうに。」

「そうか、そうか。お前がそうやって俺を弄ぶのもコレが最後だぞ。」

「今どこに居る。」

「お前と豪華なディナーを食いながら話してたところじゃないか?」

「………。」

「おい、黙るなよ。次は俺の質問に答えろよ。なぁ。」

「目玉は付いてる。」

「お前は誰だ。」

「私は」

「逃げるなよ。」

「……分かったよ。私は君の住んでる世界の創造主だ。」

「何を言い出すかと思えば、ふざけてる。どう見ても君は落ちこぼれの少年にしか見えないな。彼女も出来たことないだろ?」

「あぁ、それがどうした。」

「なんだ?童貞のまま死んだ少年の幽霊が妻も子もいる俺に嫉妬でもして取り憑いてんのか?えぇ?」

「いや、違うさ。さっき言った通り私は君の住んでる世界の創造主だ。」

「………。」

「分かりやすく言うと君の世界を『創作』してる。」

「小説家、とでも?」

「そんな、プロじゃない。ただのアマチュアさ。でも、自分の想像の世界なんて誰だって作れるさ。」

「へぇ、ははは。俺の住んでる世界ってのはこんなクソ野郎の頭の中で考えることの出来る事でしか成り立ってないのか。最低最悪だな、本当に。」

「そう思ってもらって結構、今さっき君には私のパッと思いついた創作の全てを体験してもらったからね。ほとんどが面白くなさそうだからボツになったけどね。」

「ボツ?もしかしてお前の勝手で世界が消えるとでも。」

「その通り。」

「ふざけるな!ただ普通に過ごしてた俺の事を弄ぶのに飽き足らず世界中の生き物全員を残酷に、まるでガキンチョが乱暴におもちゃで遊ぶように蹂躙したのか!?」

「そうだ、何一つ間違ってない。」

「どうしてそんな事するんだ!?」

「趣味だからさ。」

「は?」

「趣味だ。創作をすると楽しいからだよ。」

「創造主様はとてもスケールが大きいからクソみたいな倫理観しか持ち合わせてないのか?え?」

「創作と現実を混ぜるな、とツッコミたいところだが私から見た創作は君から見た現実なのか。」

「ここから出してくれ。お前なら私を元に戻せるだろ。」

「そうするつもりだよ。」

「案外あっさり言ってくれたもんだな。」

「そりゃそうだよ。君は元の生活に戻れてハッピー。その後の続きを描くつもりはサラサラないからね。そしてコレもボツだ。面白くない。」

「続きが書かれない?ボツになる?そんな事されても俺はそのまま生き続けるんだろ?」

「知らないよ。終わったらそのまま皆止まるかもしれないし、手放しのままでも動き続けるかもしれない。そんなの知らないよ。」

「もう終わりにしてくれ。お前と話してても何にも得にならなさそうだからさぁ。もう幾つ夢から覚めることを繰り返したか分からない。アレは全部お前の絞りカスみたいな脳ミソから引き出した世界なのか?」

「どうだか。私が『君はうん千年の時を夢の中で過ごした。』と思えばそうなる。第一今まで君がした行動も考えた事も言ったことも全部私が考えてる事だからな。」

「そうか、そうだとしても俺は俺の意思で動いてる。例えそれがお前の創作だとしてもな。そしてそれはお前にも言えることだぞ。お前もいつか電車に乗ってたら変なところに連れてかれて変な奴らに絡まれて挙句の果てに創造主とかいうやつが意味のわからんことをべらべら述べ始めるかもしれないぞ。」

「分かった、もう終わりにする。気分が悪くなってきた。じゃあな。すまなかった。」




最近生活リズムも狂ってきた。夜、いや早朝4時に寝て昼12時に起きる。起きた後は飯を自分で作る気も起きないからコンビニで適当に何か買ってくる。健康診断は問題無しと出てたけど正直ギリギリラインだろう。バイトでもいつもイライラしながら何か気に入らなければ他人のせいにして家に帰る。スマホの通知にイライラして、隣の住人にあたる。壁をドンドンと叩き黙らせる。つい最近中学の同窓会グループみたいなのに招待が来たけど参加してない。名前すら覚えていない。毎日毎日クソしてゲームしてバイトして寝て飯食ってクソしてゲームしてバイトして寝て………。正直クソつまらない。Twitterは……辞めたさ。私は自分が不快にならないために仲間を親しくなった人を、世話になってこんなド素人の作品を本にしてくれた人を切り捨てたのだ。最低最悪な男だ。もし私自身が創作だとしたらコレを書いてるやつは性悪だろうな。創作も、全然進んでない。創作内の私の、(建前上は)愛する我が子のオリキャラはデザインする描いてない。こんなクソ野郎は消えて当然だろうな。と思いつつ毎日クソ製造機として一所懸命に動いている。

こんな私でも、いつかは誰かを笑顔にする創作を作りたいと思っている。コレは嘘じゃない心から思ってる。だから、いや、もういいんだ。いや、良くない。

いつか決めるよ。










私の名前は池田雄太郎。今日も会社に行くために電車の中で揺られている。今日もまた、いつもと同じような日々が始まる。何の変哲もない、ただの火曜日が。

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