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身を軽くするために私はまずは靴を脱いで、靴下を脱いで、それから、踊りだすようにして、半ば、駆け上がるようにして、太陽の近くに向かって、大声を出して、特に行き着く先のない言葉を、手に入れることはできないまま、掠れた音しか出てこない喉の不自由さを思って、ただ、両腕を広げて、オーバーアクション。夜空に、重装歩兵の影を見つけて、意味もなく微笑んだ、あの子の手足は、すらりとして長くてそれでいて可愛らしさもあって、私は、それが当然なのだと思って、私があの子ではないのは当然のことと思って、天使みたいだね、とか、そういうのは、ほら、現実の距離感が十分にあって、アイドルとか、そういう人に使う表現だから、私はあの子に当然だって思ってたから、あの子が可愛いのは当然だって思ってたから。何も言わなかった。あたり前のことに対しては口を閉ざしている主義なのだ。軽薄に、あの子に、可愛いねとか、美人だねとか言い寄ってくる輩を、私は心底軽蔑したし、あの子も口ではありがとうって言ってたり嬉しそうな様子は見せていても内心はうんざりしているに違いないとそう確信していた。私だけがあの子の価値を正確に理解しているのだと、それは全くその通り過ぎて、私には疑う余地もなかったのだ。