プロローグ
【お知らせ】
第12回HJ文庫大賞《金賞》受賞作「聖なる騎士の暗黒道」が、2019/3/1に発売しました!
せっかく、世界最強の聖騎士に選ばれたにもかかわらず、わけあって正反対の暗黒騎士を目指し始めるという、馬鹿で中二病な少年の物語です。
アニメイト様、とらのあな様、メロンブックス様では特典SSを配布しています(内容は各店舗で異なります)。なくなり次第配布終了ですのでお早めに!
公式サイト→http://hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/831.html
試し読みも公開されています。
HJ文庫様の他の作品も気になる方は、公式の試し読みを。
本作のイラストが沢山見たい方は、BOOK☆WALKER様の試し読みをどうぞ。
数多くの歓声が聞こえた。
十代前半の青臭い子供たち。まだ使い込まれていない、新品の学生服を身に纏った彼らは、それぞれ思いつく限りの賞賛の言葉を並べ、一人の男子生徒を囲っていた。凄い、格好良い、羨ましい。そんな風に言葉を発しながら、彼らは尊敬と羨望の眼差しを注ぐ。
人垣の中心に立つ少年は、赤い光を浴びていた。
出所は少年の突き出した右腕の先。少年が掌を翳す、人間の頭ほどの大きさである水晶だった。その水晶から放たれる赤色の煌々とした輝きは、人々を瞬く間に魅了した。
「僅か十二歳にして、B級の精霊と契約しただと」
「これは将来に期待できるぞ……」
「神童だ。神童が現れた!」
生徒だけではない。教師ですら、彼に対し感心した様子を見せる。
そして少年もまた、視界一杯に満たされる真紅の燐光を見て、理解した。やはり自分は天才だ。他の誰にもこんなことは出来ない。無意識に口角が吊り上がる。周囲からの賞賛がとても心地良かった。少年は自身の、栄光に満ち溢れた未来を確信した。
――誰もが少年の、英雄の如き活躍を期待した。
――だが、その未来は訪れない。
この後、少年は冷たい現実と直面する。屈辱的な敗北を何度も経験し、周囲からの期待は巨大な重圧へと化け、胸中に抱いた自信はいとも容易く砕け散った。
――俺は、世界最高の魔術師になる!
そう叫んだ少年の行方を、今や知る者はいない。
あの日、彼らが目の当たりにした奇跡は、幻想だったのだ。
天才の皮を被った凡才は、今――。