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書物修復師8
「こんなものしか無いが、腹は膨れると思う。
遠慮は要らないよ。」
そう言って、惣菜を並べる。
「充分にご馳走だと思うが。」
「常備菜なんだよ。
まとめて作っておけば、日持ちがする。
昨日仕込んだ物だね。
スープは今朝作った物を温めただけ。
パンは買ってから日にちが経ってるからスープに浸して食べて。」
「へえ?
キミは料理するんだね。
立派なもんだ。」
「店屋物だけだと栄養が偏って能力が落ちるからね。」
「能力が落ちる?」
「うん。書物の声が聞きにくくなる。」
「そう、なんだ、、。」
「自分で体験出来ない事は信じられない?
良いよ。
皆、そんなもんだからね。」
「ごめん。
信じられない訳じゃないけど、よく分からないんだ。
書物修復師って職業も今日初めて知った。」
「この国に三人しか存在しない、書物と対話する変り者って?
国に囲われているから自由が少い職業だよ。」
「国に囲われているのか?
それにしては何で王都じゃなくこんな辺境にいるんだ?」
「この街は古代遺跡に近いからね。
発掘された古文書が直ぐ届けられる。
貴重な書物を修復するのが私の義務だから。
役所からくる依頼は雑魚なのよ。」