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書物修復師6
異動初日の勤務を終え表に出ると、隣の建物から書物修復師殿が出てきた。
偶然だ。
まあ、就業時間が同じだけなのかも知れないが。
「モリーナ殿、お疲れ様です。」
「うん?見た顔だね。
えっと、ああ、新顔さん。」
何となく隣に並ぶ。
やっぱり小柄だな。
俺の胸程しか身長が無い。
「新顔さんもこれから夕飯かな?」
「ああ、そうですね。
まだ来たばかりで分からないんですが、どこか食事出来る店ありますかね?」
「これから寄るから一緒に行きますか?
ああ!しまった!!
今日は休店日だったぁ!」
店が休みって事か?
「休みですか。
まだ越してきたばかりなので家には食べ物はないな。
困った、買い物できる所無いかな?」
「ああ、じゃ、うちに来ますか?
大したものは出ないけど、腹はふくれる。」
「まだ知り合って間もないのに、図図しいでしょう。」
「まあ、遠慮しないで。
新顔さんの人柄は名札が語ってる。
それ、自分で書いたんでしょう?」
何、名札?
「字が色々と教えてくれるんですよ。
だって、書物修復師ですからね!」
え、色々とって、どういう事だ?