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書物修復師3
ふう、と溜め息をつき、蓋を閉めて振り向いた。
「あれ?まだいたんですか。
まだ何か?」
「あ、えっと、今何をしていたのか聞いても?」
「対話です。
お話しして、どうして欲しいのか探っていたんですが?」
何を当たり前の事を聞くのかと言う顔で答える。
それは普通の事なのか?
「お話し?
その書物と?」
「はい。書物修復師ですから。」
当然の事のようにドヤ顔で答える。
これは、知らない俺が悪いのか?
イヤ、あの上官の様子を思えば、やはりこの子がかわいそうな子なのか???
「ああ、そうだ。
以前預かった子、連れてって下さい。
もっと丁寧に扱ってあげて下さいね。
今日の子は三週間程預かりますから。
はい、どうぞ。お疲れ様でした。」
箱に入った書物を渡され、背を押し廊下に出される。
理解が追い付かない内に職場へと帰りついていた。